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第十一章

454 最後まで

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( リーフ )


「 それだけはぜってえないな!

人族の匂いって獣人と全然違うし、濃厚でかなり遠くまで離れても漂ってくるからな。

その上、その場所にもその匂いは長いことこびり付くから、入国したら絶対分かるぜ。

しかも当時人族に接点がなかった獣人だったら、”   何か凄いの来た!!  “   って大騒ぎになってたはずだ。 」


な?とメルちゃんに目線を送るレイドに、メルちゃんはウンウンと大きく頷いた。


濃厚……匂い……と呟き、自身の腕あたりをクンクンと匂いを嗅いで神妙な表情で黙ってしまったアゼリアちゃんと、意味なく俺のお腹の匂いを嗅ぎ続けるレオン……色々忙しない。


そんな中、ソフィアちゃんは下を向きプルプルと震えだしたので、心配したが、バッ!と上がった顔はキラキラと輝いていたので気鬱だった様だ。

そのまま酷く興奮した様子でワー!と話しだした。


「 凄い凄い凄い!!

リリアさんの鋭い視点に、レイドさんのお話は初めてお聞きしたお話でした!

他種族の方にそういったお話をお聞きできるチャンスが今までなかったものですから、私は、今、凄く感動しています!

もう居ても立ってもいられないので、今直ぐ!【 神学研究部 】に行ってみたいと思います! 」


ソフィアちゃんは、目をキラッキラと輝かせたまま、あっという間に去っていき、それをアゼリアちゃんが慌てて追いかけていった。


「 じゃっ!俺達も見学に行ってみるか~! 」


残された他の面々はグーッと伸びをした後、レイドの言葉を合図に全員手を振りあって解散していく。

俺もそんな皆を手を振りながら見守った後、シーンとしてしまったその場で一人、先ほどの話を思い出していた。



『 ゼロの歴史 』


それに関する記載は物語の中にはなく、俺がその存在を知ったのは転生してから。


そのため何があったのかは勿論知らないが、俺が転生してから得た知識と、転生する前から持っている知識を照らし合わせると……女王コレットに対し一つおかしな点があることに気づいてしまった。


女王コレットは、英雄< レオンハルト >が6つの柱を回る旅をしている最中、エルフの国【 レイティア王国 】で初めて登場する。

そして初めて会ったレオンハルトに対し、ある言葉を送った。



” 英雄レオンハルト様、あなた様がどの様な選択を選ぼうとも、我々はあなた様と共に…… ”



この言葉はあり得ないのだ。



イシュル神が全世界の人々に向け授けた神託の言葉は─────


” レオンハルトが、神の愛し子の ” 英雄 ” であること ”


” 英雄が18歳を迎えた時、世界に出現した6つの光の柱を訪れた後、< イシュルの聖大樹 >にてその役目を果たさなけらば、世界は永遠の闇に閉ざされること ”


 ” 黒と半身の呪われし姿は、邪神となった者がかけた非常に強力な呪いであること ”



この3つのみ。



そのお役目というのが ” 世界を裁定する事 ” だったわけだが、その時にそれを知っているのは、神託を授けたイシュル神のみのはずだ。


俺がその事実を知ったのだって、うんと偉い神様である< レーニャ >ちゃんに教えてもらったからで、物語を読んでいた時はその事実を知らなかった。


だからコレット様が言った言葉は ” エルフ族の最上級の敬愛の言葉 ” だと思っていたが、真実を知った今は、はっきりと違うと言える。




コレット女王は恐らく知っていたんだ。


英雄の役目を。




しかし、なぜ知っているのか……?


それを知りたくても、コレット女王様が何も語らないなら、その謎は解ける事はきっとない。


俺は寝ちゃった?と思うくらい目を瞑って、大人しく横たわるレオンの頭を労るように撫でながら、その "  時  "  の事を考え、そして……


” レオンがどんな選択をしたとしても、俺も最後まで心は一緒に……。 ”




……な~んちゃって!


らしくもない事を考えてしまい恥ずかしくて、ハハッと笑うと、寝ちゃいそうなレオンの身体を揺すった。



「 レオ~ン!じゃあ、始めは< 基礎運動場 >の方から行ってみようよ。

それで、端から順番に見て行って、何かピンッとくるものがあったら入ろう!

それでどうかな~? 」


そう言った瞬間、レオンはカッ!!と目を勢いよく開いたので、俺はそれにびっくりして固まってしまう。


しかしそんな俺をよそに、レオンは俺の腰にギュッと抱きつくと、その後はゆっくりと立ち上がり腰に装着しているレイピアの入念なチェックを始めた。


「 ……行きましょう。 」


チェックを終了したらしいレオンの目は、今まで見たことがない程ギラギラしていて、随分と気合満々の様子だ。


「 う、うん。 」


その尋常ではない気合いの入りっぷりに驚きながらも、俺も立ち上がる。


そして混雑のため迷子になる可能性があるかもと、しっかり俺のシャツの裾を持って離さないよう念入りに説明し、更に迷子になった時の心得をつらつらと教えた。


迷子になった際は、ちゃんと迷子放送してくれる?


はしゃいで迷子になるかもしれないレオンを心配しながら、基礎運動場へと乗り込んでいったのだが……そんな心配は一切無用であった。


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