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第十一章

452 使う者次第

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( リーフ )




リリアちゃんは、それを見ながらふぅ・・と呆れたようなため息をついた後、更に話を続けた。


「 コレット様は何も語りませんのでその心情はわかりませんが、私は別の事実に以前から引っかかりを覚えているのです。

よろしければそれを聞いていただけませんか? 」



「 是非!聞かせて下さい! 」


これほど食いつくソフィアちゃんを見たのは初めてで多少びっくりしてしまったが、以前試験後に見せていた悲しそうにも見える笑みを思い出し、楽しそうで良かった~とオジさんのお胸はホッコリモード。


子どもたちの無邪気な語らいをホタホタ~と和やかに見守っていると、リリアちゃんも嬉しそうに話を続けた。



「 『 ゼロの歴史 』の直後、つまり人型種の歴史の始まりの日に我が国の全ての権力は女王へと帰還されたと言われています。


それ以後は、現在までレイティア王国の権力は女王に集権化され、国民は全員 ” 平民 ” という身分です。


このことから、『 ゼロの歴史 』の期間は、その分散されていた権力を持った< 貴族 >・・もしくはそれに準ずる権力階級の様なものがあったのではないか?と考えられます。


・・・・私はどうもそれが凄く引っかかるんです。 」



「 なるほど・・。

確かにそれに準じた身分制度があったのでは?とレイティア王国の歴史からは推測されますよね。

他の国には王政自体がない状態のスタートでしたが、コレット様は既に女王として国を治めていましたから。

でも、何かひっかかるのですか? 」



ソフィアちゃんが口元に手を当て、う~ん・・と考え込むと、リリアちゃんは一旦間を置いてからゆっくりと話しだす。



「 権力を持った者達が全員 ” それ ” を手放すという選択肢を選んだということです。


我が国でもそうですが ” 権力 ” という力を正しく使える人は少ない・・


大きな力には大きな義務と責任がついて回りますが、そのデメリットを払わずメリットのみを手にしようとする方々が、残念ながら一定数はいます。


はたしてそんな人たちがその力を簡単に手放そうとするでしょうか・・?

私には全員が全員、その選択を足並み揃えて取るとは思えません。


『 ゼロの歴史 』に何があったのかと解く鍵は、そこに重要なヒントがある様な・・そんな気がするんです。 」



リリアちゃんの意見には全員が全員、確かに~と納得顔を見せた。



ここアルバードでも権力を持つ< 貴族 >達を思い浮かべれば、まさにその通り!と言わざるを得ない人たちが結構な人数いて、

とてもじゃないが素直に王様に権力を変換、後、平民に・・とはならないはず。



貴族の平民に対する選民意識は根深く、至るところで線を引こうとするのは実際に何度も経験してきたので、考える間もなくその答えは出てしまう。


まさにアルバード王国の抱える "  悪 "  !


ーーーと言いたいところだが、ところがどっこい純粋に全てが  "    悪 "  であるとは言えぬ事情がこの世界にはある。


至る所でトラブルも満載の< 貴族 >と< 平民 >という上下関係。


それ自体を ” 悪 ” であるとは言えないのは、現在の平和とは言い難い世界の治安情勢のせいで、

突然のモンスターや盗賊などの襲撃時に混戦となってしまった時、身分という分かりやすい上下関係があると、迅速に指示を出す方、出される方が決まり己の立ち位置がしっかりと決まる。



更に< 貴族 >は幼き頃よりありとあらゆる英才教育を受けてきた戦いのエキスパート。


血筋にこだわり子孫を残してきた彼らの資質は平民よりも飛び向けて強いため、実際戦いの場に最前線で立てば大抵の敵は撃退することができるはずだ。



お互いがお互いの立場のメリットデメリットを受け入れ動くならそれほどあれこれダメダメ~にはならないが、

このデメリットなしでメリットを得ようとする人が出てきてしまうと、それがなんであれ物事は ” 悪 ” になってしまう。




戦場での問題最多は< 貴族 >による< 平民 >への無茶な命令や切り捨て。


そして次に多いのはその場に< 貴族 >がいない場合のトラブル


貴族がいない場合は強さを基準にした上下関係にて対応するのだが、

” 強いのだから先陣を切るべき ” だの、

” 被害を少なくするために強いやつが一番動くべきだ ” などと、

優秀な者達だけがあくせく働かされ、強烈な身分制度が無いが故か下にはダレてくる人たちが現れてしまう。



ならば力ある人々に権力を~となると、それこそ世紀末的な輩が現れ始めてしまえば、身分制度を推している今より状況は悪化する可能性があるのは力が全ての< ドロティア帝国 >を見れば頷くしかない。



結局どんなにいい制度、完璧な制度を作ってもそれを盾に上手いこと利益を得ようとする輩が現れるから上手くいかないんだよな~と、人の世の難しさにおじさんはしみじみ~。


とうとうコテンッと俺のお腹に顔を埋めて横になって丸まってしまったレオンに、でも正しく生きようと努力しているいい人も沢山いるんだよ~と語りかけておく。


子守唄の様にボソボソ~とそれを言い聞かせていると、ソフィアちゃんが今のリリアちゃんの話についてかなり興味を引かれた様子で、俺同様ブツブツと呟きはじめた。



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