上 下
459 / 1,315
第十一章

444 黒いカルガモ

しおりを挟む
( リーフ )

それを有り難く一つもらってボリボリと食べながら、俺はそれも不正解であるとフルフルと首を振る。

それを見た皆は、それぞれカユジ虫の煮干しをボリボリ食べながら、"   では、何事?  "  と言わんばかりに首を傾げた。


「 ちょっと俺が朝、酷い物言いをして傷つけちゃって……。

それに部活に興味があってヤバいみたいだよ。 」


「「「「 ほほぉ~? 」」」」


理由を話した俺に、4人は納得した様子を見せた後、” じゃあ大丈夫だろう! ” と判断したらしいレイドがあっさりと話題を変える。


「 そういや~皆【 専門教養 】どうするんだ?

俺とメルは2コマとも< 戦闘術学 >一本にする予定だぜ。 」


「 へぇ~。二人は物理特化型の授業内容にするんだね。

俺はその< 戦闘術学 >と、もう一コマは< 魔法学 >にするつもりだよ。 」


そう答えると、おぉっ!とレイドとメルちゃんは興味津々とばかりに目が光る。


「 ってことは、試験の時も思っていたが、リーフは剣も魔法も得意な資質か! 」


「 うん。俺の資質は【 魔術騎士 】なんだ。

だから一応セオリー通りに剣と魔法両方の授業をとるよ。 」


すると、おおー!!と歓声を上げた2人は拍手までして「 上級資質すげぇ~! 」と言ってキラキラ目を輝かす。


実は上級資質は、本来一学年に1人いるかいないかくらいの割合しかいないくらい希少な存在である。

しかし今年はそれが豊富で、分かっているだけでも俺、ジェニファーちゃん、更にその上の特級資質のソフィアちゃんまでいるし、更にその数は増えるかもしれない。


それに……


俺は後ろで不機嫌全開でコチラを睨みつけてくるレオンをチラッと見てから、直ぐに視線を前に戻す。


レオンの【 英雄 】も特級資質だ。

ただし、鑑定をしてないので、未分類扱いになっているが……。


その後も、ワイワイと話しは続き、モルトとニールは、< 魔法学 >と< 農工学 >の2コマにしたらしく、俺と同じ授業は< 魔法学 >だけ。


いつも一緒の幼馴染~ズとしては少し寂しいが、二人は試験を受ける前からレベルが高いとされるライトノア学院のこの< 農工学 >の授業を楽しみにしていて、新たな新商品を作るぞ!と意気込んでいたのを知っているので仕方がない。

だから本当に頑張って欲しいとアイドルを応援するファンの様に心からエールを送っておく。


そして、ここで問題はレオン。


俺はもう一度ソロ~とレオンに視線を送ると、先ほどよりは少しだけ機嫌が良くなったレオンが、何何~?と言わんばかりに不思議そうな顔をしている。

今なら……と、俺はレオンの様子を伺いながら尋ねてみた。


「 レオンは【 専門教養 】どれを取りたい? 」


するとレオンはピクッと一瞬肩を小さく揺らし、また更に機嫌はズズンッと急落下してしまう。


「 < 戦闘術学 >と< 魔法学 >です。リーフ様と一緒にいます。 」


予想通りの解答を聞いてしまい、額から汗が一滴流れ落ちていった。


レオンは黒いカルガモの赤ちゃんの様に俺の後をくっついてくるだけで、それに対し興味もなければやる気もゼロ。

果たしてこのまま進んで良いモノか……?


先ほどの悩みがまたニョキニョキと前に出てきそうになり、頭を酷く悩ませる。


多分多少は興味のあるものが見つかってるとは思うんだよ。

部活も楽しみとか言っているから。


言葉の端々に出てくるレオンの個性を感じる言葉や行動を思い出し、小さく頷いた。


しかし、レオンは俺が興味がなさそうなら、あっさりと自分の気持ちを捨てて、ちょこちょこ俺の後ろに着いてきてしまう。


やっぱりそれって良くないよなぁ……。


しみじみそう思ったが、授業に関してはまだあまりピンッとくるものがない様子だったので、とりあえずレオンが慣れるまでは、今まで通り同じものを取らせておいて後々変えさせるしかないかと考えた。


「 OKOK~。じゃあレオンは俺と同じ授業を取ろうね~。 」


ズズズ────ン!とまた更に機嫌が悪くなってしまったレオンを刺激しない様に、笑顔でレオンの分の受講申請書を改めて見返すと……そこには震えながら書かれた様な字で、『 全受講免除可能です……。 』と書かれていた。


えっ?必須じゃないの?【 専門教養 】

もしかして【 一般教養 】も免除OKって事??


俺の分には書かれていなかったのでどうやらレオンのみの様だ。


ハテナが頭上に飛んだが、多分首席は皆この待遇なのかもと思い、とりあえず納得した。

” 全受講免除可能 ” の部分に二重線をピッと引いて、< 戦闘術学 >と< 魔法学 >と書き、ついでに俺もと同じ内容で書き終えた、その時────


「 やったぁ~!これで< 戦闘術学 >はリーフ様と一緒♡

これからよろしくお願いしま~す♡ 」


背後から聞き覚えのある声が聞こえたのでと言いながら振り向けば、ルンルンと上機嫌のサイモンの姿とその後ろにはリリアちゃんの姿が。

更にはその後ろからは、ソフィアちゃんと、渋~い顔でレオンを警戒しながら歩いてくるアゼリアちゃんも見えた。


「 サイモンおはよ~。

それにリリアちゃんにソフィアちゃん、アゼリアちゃんもおはよう。 」


俺が手を振りながら挨拶すると、レイドとメルちゃんは近づいてきたエルフ族のサイモンに対し、” ゲゲッ! ” と嫌そうに顔を歪めるが、多少は試験時の際慣れたのか、以前よりは小さなバチバチで留まっているようだ。


とりあえずは全員でおはようを言い合った後、詳しい自己紹介をしていなかったことに気づき、改めて自己紹介をしようということになった。

言い出しっぺの俺が、ゴホンッと咳払いをしてからまず自己紹介を始める。


「 俺の名前はリーフ・フォン・メルンブルク。

資質は【 魔術騎士 】

授業は< 戦闘術学 >と< 魔法学 >をとるつもりだから一緒になったらよろしくね。 」


「 モルト・ラルグ・フィンドル 。

資質は【 造花師 】で授業は< 魔法学 >と< 農工学 >をとる予定だ。

リーフ様とは同郷で、8歳の頃より一番の側近としてお側に仕えている。 」


「 ニール・ポイル・ホールドっす~。

資質は【 獣蓄師 】で授業は同じく< 魔法学 >と< 農工学 >を取る予定っすね。


ちなみにリーフ様と出会ってから今までずっと一番の側近を努めてきたのは俺っすから。

小魚系顔男の言うことは信じちゃ駄目っすよ。 」


俺の続きモルト、ニールと自己紹介していったが、お互い言っている事が気に食わなかったようで、直ぐにポカスカポカスカと猫の手パンチ付きの喧嘩を始めてしまった。


猫のじゃれ合いの様なモノな事は知っているので、俺はにっこり笑いながら見守り、そのまま自己紹介の続きを他の皆に即す。


すると先に獣人組が自己紹介を始めた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...