458 / 1,370
第十一章
443 溜め込むタイプ
しおりを挟む
( リーフ )
アホみたいに広い学院内、そこを大きな身体のレオンを担ぎながら目的地に行くのは大変だったが、次第にレオンは落ち着きを取り戻していった。
「 俺が間違ってました。 」
「 そんなあっさり手に入るものではない事は分かってたのに……。 」
「 何も問題はありません。引き続き俺は頑張ります。
全てをかけて。 」
そんな、またしても王道少年漫画の主人公みたいな最強ポジティブ発言を、俺に担がれたまましてくる。
「 その意気だ!! 」
とりあえず俺はエールを送りつつ、歩き続けてやっと目的地についたが時間はギリギリになってしまった。
説明会を行う会場は入学院式をやった< 大ホール >で、中を覗くと既に全員が着席している。
おっと、不味い不味い!
遅刻、遅刻~!
焦りながら、俺は直ぐに空いている席を探す────…………暇も無いほど、入ってきた入り口近くからサァーと干潮のような引き際で、席についていた生徒たちが離れて行った。
「 …………。 」
その中を堂々と通りながら、俺は担いでいたレオンを空いている席の一つにポポンっと落とすと、その隣に俺も座る。
そしてその後直ぐにソロ~と入ってきた教員達が、やはり俺たちが座る席を大きく避けて、『 ないない君 』騒動時に壊れて新たに立て直したらしいスピーチ台の前に立つと、そのまま授業についての説明会を始めた。
俺とレオンの周りだけが、レガーノレベルの人口密度で、見えない畑や森が周囲との間に見えるほど。
しかし視線だけは誰よりも集めているという謎の現象付き。
特に説明をしてくれている先生からの視線が熱く、1~2秒に一回は必ず目が合うくらいの釘付けっぷりだ。
とりあえずニコニコ笑顔で反応をかえすが、なにせ見つめてくる表情が好きとかの類とは真逆にいそうな恐怖に引きつっている顔なもんだから、とにかく気まずい。
それを払拭しようとレオンに笑みを浮かべてもらおうにも、タイミングが悪い事に、レオンの機嫌がちょー悪い。
説明会が終わりに向かうにつれてドンドン悪くなっていくので、空気もそれと比例して悪くなっていった。
レオンは怒りを溜め込むタイプのため、恐らく先ほどの俺のキツイ反撃に激おこしている様だ。
失敗したな~……。
タイミングが良くなかった。
大いに反省し、俺は目を覆う。
あそこは釘を刺さずに「 その通り!全てレオンのもの~。 」と言っておけばよかった……。
そう後悔しながら、説明をきっちり最後まで聞き終えた。
◇◇◇◇
「 ではこの後は各自興味のある部活へ見学に行く時間とする。────解散! 」
説明が終わり解散を言い渡した教員は、俺とレオンの場所を大きく避けてホールから出ていった。
俺の手には最後に配られた【 専門教養 】の受講申請書と【 部活動 】入部届けという2枚の用紙がある。
さらに今後の教材と制服が、いつの間にかホールのサイドに控えていた業者さんらしき人達から配られ始め、各自自身の寮へ届けてくれる配達員さん達にそれを順番に渡している。
勿論俺とレオンは2人きりの寮なのでそんな人はいない。
プルプル震えてコチラに視線を向ける業者さんに気づいた俺は、一向に配られない制服と教材一式を自ら取りに向かう。
そして、ズシッとくる二人分の荷物の重さにこのまま部活にいくのは疲れそうだなと考えた。
「 う~ん……一度寮へ持って帰った方がよさそうだね。 」
そう提案したのだが、突然レオンがスッ……と太くて長い黒いヒモ?のようなものを取り出し、直ぐに俺と自分の分の荷物を結んで肩に担いだ。
どうやらこのまま見学に行く気満々らしい。
そ、そんなに早く部活見学に行きたいのか!
レオンのかつて無いやる気っぷりに目を見張りながら、随分としっかりしてそうな黒いヒモにちょっとだけ興味が移る。
「 その黒い丈夫そうなヒモなんだい? 」
何気なく質問してみると、レオンは「 黒いトカゲのもどきの髭です。 」と訳の分からぬ答えを返してきた。
グリモアの森にいたトカゲかなんかかな??
髭の長さから体長はかなり大きいのでは?と予想されるものだったので、やはり俺たちが住んでいる寮は治安的にヤバいと思った。
まぁ、ほぼ森の中だし……。
モンスターに突然襲来される可能性に戦々恐々としていると────。
「「 リ~フ様~。 」」
突然遠くからモルトとニールの声が聞こえたため、そちらに視線を向ける。
すると視線の先にはモルト、ニール、更にその後ろには獣人のレイドとメルちゃんもいて、全員コチラに向かって手を振ってきた。
「 おはよー、皆。 」
「「 おっはようございま~す! 」」
「 お~す!はよ~! 」
「 ……おはよー……。 」
手を振りながら朝の挨拶をすると、四人はニコニコーと笑いながら挨拶し返してくれる。
しかし、俺の後ろにいる大きな荷物を背負った不機嫌全開レオンに気づき、ス~……と大きく回り道をして俺の前へ来て────そのままコソコソと話しかけてきた。
「 なんかレオン機嫌悪いっすね。どうしたんですか? 」
「 まぁ、レオンは少人数派タイプだからな。沢山人がいてびっくりしたんじゃないか? 」
ニールの質問、そして的確なモルトの考察であったが……今回はそうではなかった為、俺はフルフルと首を横に振る。
「 じゃー腹ペコなんじゃね?俺たち良いの持ってるから食うか? 」
すると、すかさずレイドがメルちゃんと二人で、ポケットから『 カユジ虫の煮干し 』を取り出した。
< カユジ虫の煮干し >
Gランクモンスターカユジ虫を天干しにし乾燥させた平民のおやつの一つ。
アホみたいに広い学院内、そこを大きな身体のレオンを担ぎながら目的地に行くのは大変だったが、次第にレオンは落ち着きを取り戻していった。
「 俺が間違ってました。 」
「 そんなあっさり手に入るものではない事は分かってたのに……。 」
「 何も問題はありません。引き続き俺は頑張ります。
全てをかけて。 」
そんな、またしても王道少年漫画の主人公みたいな最強ポジティブ発言を、俺に担がれたまましてくる。
「 その意気だ!! 」
とりあえず俺はエールを送りつつ、歩き続けてやっと目的地についたが時間はギリギリになってしまった。
説明会を行う会場は入学院式をやった< 大ホール >で、中を覗くと既に全員が着席している。
おっと、不味い不味い!
遅刻、遅刻~!
焦りながら、俺は直ぐに空いている席を探す────…………暇も無いほど、入ってきた入り口近くからサァーと干潮のような引き際で、席についていた生徒たちが離れて行った。
「 …………。 」
その中を堂々と通りながら、俺は担いでいたレオンを空いている席の一つにポポンっと落とすと、その隣に俺も座る。
そしてその後直ぐにソロ~と入ってきた教員達が、やはり俺たちが座る席を大きく避けて、『 ないない君 』騒動時に壊れて新たに立て直したらしいスピーチ台の前に立つと、そのまま授業についての説明会を始めた。
俺とレオンの周りだけが、レガーノレベルの人口密度で、見えない畑や森が周囲との間に見えるほど。
しかし視線だけは誰よりも集めているという謎の現象付き。
特に説明をしてくれている先生からの視線が熱く、1~2秒に一回は必ず目が合うくらいの釘付けっぷりだ。
とりあえずニコニコ笑顔で反応をかえすが、なにせ見つめてくる表情が好きとかの類とは真逆にいそうな恐怖に引きつっている顔なもんだから、とにかく気まずい。
それを払拭しようとレオンに笑みを浮かべてもらおうにも、タイミングが悪い事に、レオンの機嫌がちょー悪い。
説明会が終わりに向かうにつれてドンドン悪くなっていくので、空気もそれと比例して悪くなっていった。
レオンは怒りを溜め込むタイプのため、恐らく先ほどの俺のキツイ反撃に激おこしている様だ。
失敗したな~……。
タイミングが良くなかった。
大いに反省し、俺は目を覆う。
あそこは釘を刺さずに「 その通り!全てレオンのもの~。 」と言っておけばよかった……。
そう後悔しながら、説明をきっちり最後まで聞き終えた。
◇◇◇◇
「 ではこの後は各自興味のある部活へ見学に行く時間とする。────解散! 」
説明が終わり解散を言い渡した教員は、俺とレオンの場所を大きく避けてホールから出ていった。
俺の手には最後に配られた【 専門教養 】の受講申請書と【 部活動 】入部届けという2枚の用紙がある。
さらに今後の教材と制服が、いつの間にかホールのサイドに控えていた業者さんらしき人達から配られ始め、各自自身の寮へ届けてくれる配達員さん達にそれを順番に渡している。
勿論俺とレオンは2人きりの寮なのでそんな人はいない。
プルプル震えてコチラに視線を向ける業者さんに気づいた俺は、一向に配られない制服と教材一式を自ら取りに向かう。
そして、ズシッとくる二人分の荷物の重さにこのまま部活にいくのは疲れそうだなと考えた。
「 う~ん……一度寮へ持って帰った方がよさそうだね。 」
そう提案したのだが、突然レオンがスッ……と太くて長い黒いヒモ?のようなものを取り出し、直ぐに俺と自分の分の荷物を結んで肩に担いだ。
どうやらこのまま見学に行く気満々らしい。
そ、そんなに早く部活見学に行きたいのか!
レオンのかつて無いやる気っぷりに目を見張りながら、随分としっかりしてそうな黒いヒモにちょっとだけ興味が移る。
「 その黒い丈夫そうなヒモなんだい? 」
何気なく質問してみると、レオンは「 黒いトカゲのもどきの髭です。 」と訳の分からぬ答えを返してきた。
グリモアの森にいたトカゲかなんかかな??
髭の長さから体長はかなり大きいのでは?と予想されるものだったので、やはり俺たちが住んでいる寮は治安的にヤバいと思った。
まぁ、ほぼ森の中だし……。
モンスターに突然襲来される可能性に戦々恐々としていると────。
「「 リ~フ様~。 」」
突然遠くからモルトとニールの声が聞こえたため、そちらに視線を向ける。
すると視線の先にはモルト、ニール、更にその後ろには獣人のレイドとメルちゃんもいて、全員コチラに向かって手を振ってきた。
「 おはよー、皆。 」
「「 おっはようございま~す! 」」
「 お~す!はよ~! 」
「 ……おはよー……。 」
手を振りながら朝の挨拶をすると、四人はニコニコーと笑いながら挨拶し返してくれる。
しかし、俺の後ろにいる大きな荷物を背負った不機嫌全開レオンに気づき、ス~……と大きく回り道をして俺の前へ来て────そのままコソコソと話しかけてきた。
「 なんかレオン機嫌悪いっすね。どうしたんですか? 」
「 まぁ、レオンは少人数派タイプだからな。沢山人がいてびっくりしたんじゃないか? 」
ニールの質問、そして的確なモルトの考察であったが……今回はそうではなかった為、俺はフルフルと首を横に振る。
「 じゃー腹ペコなんじゃね?俺たち良いの持ってるから食うか? 」
すると、すかさずレイドがメルちゃんと二人で、ポケットから『 カユジ虫の煮干し 』を取り出した。
< カユジ虫の煮干し >
Gランクモンスターカユジ虫を天干しにし乾燥させた平民のおやつの一つ。
42
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる