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第十一章

440 たまには凹む

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( リーフ )




” 知らない方が幸せ ”

そんな幸せもあるということを、一応は一度人生を終えた者として知ってはいる。


俺は生まれて直ぐに捨てられてしまったため、親の愛情やその他、 ” 親 ” というものに直接絡む感情の全てを知らない。


そのため前世で孤児院仲間の1人が、亡くなってしまった親御さんを思い出し泣いていた時、

” 大樹は幸せだよな、親が最初からいないからこの ” 悲しい ” を知らずに済んで ”


そう言われて、当時は結構悩んだ。



確かに元々それを知らない俺にはその辛さは一生分からない。




それが幸せか幸せでないかは・・多分人による。




過去の自分の葛藤を思い出し、う~ん・・と考えこんだ。



レオンはどう思うんだろうか?

どう在る事が幸せだと思うのかな??



それを心の中で問いかけたところで答えは当然帰ってこない。


だが、とりあえず漠然と分かっている事は、” 俺が幸せだと感じる事はそのままレオンの幸せじゃない ” という事。



今まで過ごしたレオンとの思い出を振り返り、レオンという人間と自分との沢山の ” 違い ” を思い出すと、そうなんだよな~と嫌でも納得させられる。



俺は何も知らないまま、

” 自分たちにとっては大事なものだから命を掛けて救うのが当然だ ” 

ーーと強いられていたレオンハルトが凄く悲しかった。



沢山の人の命が掛かっているのだからその言い分は仕方ないとは分かっていても、俺はレオンハルトが大好きだからそんな扱いをされるのは凄く嫌だったのだ。



俺はレオンハルトの気持ちもその仕方ないであろう言い分に含まれていて欲しかった。

だから壊れていない心で ” 見て ” 沢山の選択肢から答えを選んで欲しいと願った。

例え最後に選ぶ答えが同じだとしても。




でもそれって結局はーーー






俺の ” 幸せ ” ・・なんだよ。






グルグル回る思考に悩みながら、ああぁぁ~・・とうめき声を上げて体の力は抜けていった。



自分が誰かに対してする事は、受け取る側がどう思うかによって ” 悪 ” にも ” 善 ” にも姿を変えてしまうものだから・・

俺と正反対のレオンにとって俺が渡そうとするモノって   "  善 "  になる事・・あるのかな・・?



うめき声を上げた俺を、もしかして気分が悪い?と勘違いしたレオンが優しく背中を擦ってくれるが、ズンズンと心は沈んでいく。



狂った神をも越えてしまったレオンの事を考えると・・少なくとも現在は、俺のやってきた事や考え方は物凄い大外れだった感がすごくある!



寧ろなんか別のヤバい脇道に進んじゃった気もするし~・・



行ったことのない深さまでズズズーーンと到達する心。


試行錯誤に次ぐ試行錯誤。

考えて考えて、失敗したり喜んだり、凹んだり、嬉しかったり・・それを思い出しながら思考はぐるぐるぐるぐる・・・


結局のところ、そもそも俺とレオンは価値観、気質、その全てが正反対。


つまりは相性が極悪級に悪いのだから、俺がされて嬉しい事をしたら全て不正解であると今後は思って行動したほうがいいかもしれない。



そう答えが出てしまえば、俺の心はとうとうズドン!と奈落の底まで落ちていった。



精神的なショックと色々考え過ぎて頭がパンッした事で白目を向いて震える俺を、レオンは不思議そうな顔をしたままユラユラ~と俺の身体を寝かしつけるように揺すってくるが、俺は眠らない様にカッ!と目を見開く。


いや、今、それに気づけて良かった!

レオンの事をもっと知ろう!何を望むのか、今から考えればいい!


奈落の底でフンフンッ!と準備体操した後、一寸先も闇!の中、必死にそそり立つ壁を登り始めた。




「 あ。あのさ、あのさ、もしもの話しなんだけど・・・

急に神様に会わなきゃいけなくなって旅に出ろって言われたら、レオンはどう思う? 」



現在ブロックをほぼ取り尽くしたジェンガのような精神状態のレオンに、恐る恐る質問してみた。


するとレオンは上機嫌ではあるが、多少怪訝そうな表情を見せてそれに答える。




「 ・・・神に??別に用事はないですが・・会いに行きますか? 」



「 ???・・いや、俺も別に用事ないし、会いたいってわけじゃないんだけど・・・


その・・なんていうか・・

会わないと駄目って命じられて、行かないと困る状況になったらっていうか・・ 」




” 神様 ” に会いにと言っているのに、ちょっと近くの森まで~的な軽いノリに若干戸惑ったが、どうにかこうにか英雄に課せられたお役目をぼやかしながら伝えてみる。



するとレオンは、ううん?と必死にその状況について考え始めた様で、徐々に上機嫌オーラが不機嫌オーラへと変わっていく。



「 ・・それは、リーフ様と一緒に・・・ですよね? 」



「 えっ?いや、俺は行かないけど・・ 」



フルボッコにした満身創痍の悪役を普通はパーティーには入れない。

多分俺はその間、病院に通いながら平民になっていると思う。


素直にNOと答えると、ブワッ!とレオンから不機嫌オーラが滲み出しトゲトゲした雰囲気に進化したままレオンは口を開く。



「 では、行きません。絶対に。



そもそもなぜ俺がそんな奴に会いに行かないといけないんですか?


誰が困るんですか?


リーフ様が困ると・・?




ーーーーーーなぜ俺が離れないと困る状況になるんですか? 」




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