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第十章
433 ……スン
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( レオン )
お風呂に入る際の脱衣所に向かった俺たち……いや、ズンズンと迷いなく進むリーフ様と緊張でフラフラとついていくのがやっとな俺は、とうとうそこへと辿り着く。
以前入ったお風呂の脱衣所を完全に模したものを作っただけだったが、リーフ様はそれにも大層喜んでくれた様で本当に良かった。
そしてそこでまたしても迷いなく、恐ろしいスピードで服を脱いでいくリーフ様に、体内温度は高いのに体表は驚くほど冷たいという不思議な状態のまま、俺はその光景を見つめていた。
リーフ様が服を脱ぐ。
あの日見た夢の中同様、スルスルと上着を、ズボンを……下着を……。
俺はその後起きた事を思い出し、モジモジと体を揺らしていると────
「 お先に~。 」
そう言いながら、リーフ様は肩にパパーン!と白いタオルを掛け、そのままお風呂場へと行ってしまった。
俺を置いて。
その瞬間、高揚する様な気持ちは凄い勢いでヒュンッと萎み、俺は慌てて服を脱ぎ、リーフ様の後を追いかけていった。
嬉しそうにはしゃぐ彼を見ながら、ソロ~と背後に立つとその首筋、背中、腰……と視線を上から下へと滑らせていくと……先ほど一度萎んだ気持ちがまた膨らんでいく。
” レオンはレオン。化け物なんて名前じゃない。”
” だから俺に全部見せて大丈夫だよ ”
夢で見たリーフ様の姿が重なり、どんどんその想いは強くしっかりとした形へとなっていったが、クルッとコチラを向いたリーフ様の驚いた様な……いや恐怖を感じているような顔でまたそれはス──……と小さく萎んでいった。
俺は何をやっているのか……。
気持ち悪い妄想をしてリーフ様を驚かしてしまって……。
また失敗してしまったか?とヒヤリとした気持ちが一瞬湧いたが、直ぐにリーフ様に座らされ、背中を洗われた事でホッと安堵の息を吐く。
大丈夫、大丈夫……。
そう安心しながら背中を洗われる気持ちよさにウットリとしていると、やがてそれも終わり、リーフ様が自身の体を洗おうとタオルを俺から遠ざけた、その瞬間────……
────ガシッ!!!
” 今だ! ” と判断した俺は、直ぐにその手を掴み、動きを妨害する。
” 今度は俺が触れますね ”
そんな言葉を伝えたかったが、緊張と不安で口が上手く開かず、ジッ……とリーフ様を見つめるだけという情けない状態に……。
しかし、リーフ様はそんな俺の心情を察してくれたのか、どうぞ?と言うように背中を向けた。
情けなさを感じながらもそうしてくれた事に安堵し、ホッとすると同時に……こういった触れ合いに慣れているという事に、また黒い心は目を覚まし活発に動き出す。
お風呂で触れ合うのは貴族の嗜み……だからリーフ様は幼き頃にそれを教わり、以来ずっとそれをして生きてきたはず。
俺と出会ってからはそのような嗜みは一切している様子はなかったが、要は手頃な相手がいなかっただけだと思われる。
この美しい身体に触れたものがいるのか……。
それは大きな怒りと憎しみを生み出し、一気に外に飛び出しそうになったが、それを必死に抑えた。
仕方がない……仕方がない……これから触らせない様にするしかない。
そう自分に言い聞かせ、俺は震えてしまっている手をゆっくりとその身体に伸ばす。
そして────ペタッとその身体に触れれば、心臓は一瞬で跳ね上がった。
ドッドッドッ……。
まるで全力疾走しているかの様に心臓が鳴り始めたのを感じながら、俺はペタペタと夢中になってその背中を触る。
これで合っているのか?と不安に思いながら、無我夢中で……。
そしてそんな不安は正解。
そのやり方は間違いであったようで、リーフ様から「 もう少し強く擦って~。 」と言われてしまった。
” 触るだけでは駄目、そこに擦る動きも加えなければいけないのか! ”
そう理解した俺は、動揺を通り越してパニックになりそうになりながら、スィ~と上下に動かす動き、撫でる様な動きを取り入れてみた。
すると今度は正解だったようでリーフ様は黙る。
それを確認した俺は夢中で背中を撫で続け、他のところも……と腕や肩も触れば、リーフ様の身体がピクリッと跳ねる。
それに何か……
────キタ……。
説明が難しいのだが、リーフ様が可愛いとか愛しいとか、そんな気持ちが固まって襲ってきた感じというか……?
俺が触れた事でリーフ様は何かしらの刺激を受けている。
いつもは俺の存在がいてもいなくても全く変わらない彼が────
” 俺の存在を感じてくれている ”
多分これがこの不思議な気持ちの発生源。
そんな ” 不思議 ” は、あっという間に心の中を支配し、それが望むまま、俺は夢中になってリーフ様に触れた。
そしてやがてどこまで触って良いのか?と探るような手つきに変えると、そのままリーフ様の太ももの方へ……これはOK。
ドキドキバクバク……。
止まる気配がない心臓の音はうるさいくらいに俺の耳を叩いてくるが、それに構わず今度は胸の方へとゆっくり手を回そうとした、その時────
ブハッ!!!と思い切り吹き出した。
リーフ様が。
そして更に面白くて仕方がないといわんばかりにコロコロと転がり回り、最後は一切恥部を隠すことなくゴロンと仰向けに転がると、ピクピクと痙攣するように笑いの余韻に浸る彼を見て、俺の顔面からは全ての血の気が引いた。
” 下手くそ~。 ”
” 今までで一番酷い触れ合い!もう、笑うしかな~い! ”
俺を指差し大笑いするリーフ様が頭の中に浮かび、心はザクザクッと切られてはボロボロと崩れていく……。
ショックで何も言えず呆然としている俺に、リーフ様はお優しいからそんな俺を気遣う様にオロオロとしながら必死に謝ってきた。
「 ご……ごめん、レオン。
俺、こんな事されたの初めてだったから慣れてないんだ。
これから徐々に慣れていくから……。 」
そんな慰めてくれるリーフ様の言葉達を聞いて────俺は、ヒュッ!!と呼吸を止める。
こんな触れ合いをしたのは初めて?
これから慣れていく???
それって……まさか────!
「 はっ……初めてって……本当ですか!?
こうして触れられるのが……俺が……初めてって……?! 」
「 えっ?えっ??────あ、うんうん。本当、本当。 」
思わずリーフ様の両肩を掴み、そう尋ねるとあっさりと答えてくれた。
俺が初めて……今までリーフ様に触れた者はいない。
その事実が心に与えてくる衝撃は……凄かった。
今後は誰であろうとこうした触れ合いをさせるつもりもない、つまりは────
” リーフ様は一生涯、俺にしか触れられない ”
” 嬉しい ” が軽く感じるほどの喜びを感じながら、俺は叫ぶ。
「 俺も全くの初めてですので!!ゆっくり慣れていきたいです。俺、頑張りますから!! 」
そうこれからの意気込みをリーフ様に宣言すれば、なんとリーフ様は、” 頑張って ” と、今後を期待する言葉を俺に贈ってくださった。
俺は俺の全力を持ってリーフ様に気持ちいいと思われる触れ合いをマスターする。
それは今後、一生涯リーフ様に触れる事を唯一許された俺の果たさなければならない義務である。
俺の新たな目標 ” 触れ合いのテクニックレベルをあげる事 ” が心に追加された瞬間であった。
そうしてほわほわと浮ついた心のままお風呂を出た後は、先程採取したベッド・マッシュの元へ。
そこでコチラを ” 見て ” くる無粋な視線に気づき、それをどうしようかとリーフ様に確認すれば、 ” ( 見られるのは )嫌いではない ” ” 寝る時以外は ” ────という話だったので、眠りについたリーフ様を見守った後、その視線を切ってやった。
そして俺は俺に沢山の幸せと、苦しみ、悲しみ、他にも沢山の物を与えてくれる ” 愛おしい ” リーフ様を抱きしめ共に眠りについた。
明日はどんなものを俺にくれるのか?
……まぁ、もう全て俺のモノになったけど。
口角が自然と上がり心地よい感覚の中、意識はリーフ様の後を追いかけるように遠ざかっていき────心の中の黒いモノはまたいつの間にか何処かへ消えてしまった。
お風呂に入る際の脱衣所に向かった俺たち……いや、ズンズンと迷いなく進むリーフ様と緊張でフラフラとついていくのがやっとな俺は、とうとうそこへと辿り着く。
以前入ったお風呂の脱衣所を完全に模したものを作っただけだったが、リーフ様はそれにも大層喜んでくれた様で本当に良かった。
そしてそこでまたしても迷いなく、恐ろしいスピードで服を脱いでいくリーフ様に、体内温度は高いのに体表は驚くほど冷たいという不思議な状態のまま、俺はその光景を見つめていた。
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俺はその後起きた事を思い出し、モジモジと体を揺らしていると────
「 お先に~。 」
そう言いながら、リーフ様は肩にパパーン!と白いタオルを掛け、そのままお風呂場へと行ってしまった。
俺を置いて。
その瞬間、高揚する様な気持ちは凄い勢いでヒュンッと萎み、俺は慌てて服を脱ぎ、リーフ様の後を追いかけていった。
嬉しそうにはしゃぐ彼を見ながら、ソロ~と背後に立つとその首筋、背中、腰……と視線を上から下へと滑らせていくと……先ほど一度萎んだ気持ちがまた膨らんでいく。
” レオンはレオン。化け物なんて名前じゃない。”
” だから俺に全部見せて大丈夫だよ ”
夢で見たリーフ様の姿が重なり、どんどんその想いは強くしっかりとした形へとなっていったが、クルッとコチラを向いたリーフ様の驚いた様な……いや恐怖を感じているような顔でまたそれはス──……と小さく萎んでいった。
俺は何をやっているのか……。
気持ち悪い妄想をしてリーフ様を驚かしてしまって……。
また失敗してしまったか?とヒヤリとした気持ちが一瞬湧いたが、直ぐにリーフ様に座らされ、背中を洗われた事でホッと安堵の息を吐く。
大丈夫、大丈夫……。
そう安心しながら背中を洗われる気持ちよさにウットリとしていると、やがてそれも終わり、リーフ様が自身の体を洗おうとタオルを俺から遠ざけた、その瞬間────……
────ガシッ!!!
” 今だ! ” と判断した俺は、直ぐにその手を掴み、動きを妨害する。
” 今度は俺が触れますね ”
そんな言葉を伝えたかったが、緊張と不安で口が上手く開かず、ジッ……とリーフ様を見つめるだけという情けない状態に……。
しかし、リーフ様はそんな俺の心情を察してくれたのか、どうぞ?と言うように背中を向けた。
情けなさを感じながらもそうしてくれた事に安堵し、ホッとすると同時に……こういった触れ合いに慣れているという事に、また黒い心は目を覚まし活発に動き出す。
お風呂で触れ合うのは貴族の嗜み……だからリーフ様は幼き頃にそれを教わり、以来ずっとそれをして生きてきたはず。
俺と出会ってからはそのような嗜みは一切している様子はなかったが、要は手頃な相手がいなかっただけだと思われる。
この美しい身体に触れたものがいるのか……。
それは大きな怒りと憎しみを生み出し、一気に外に飛び出しそうになったが、それを必死に抑えた。
仕方がない……仕方がない……これから触らせない様にするしかない。
そう自分に言い聞かせ、俺は震えてしまっている手をゆっくりとその身体に伸ばす。
そして────ペタッとその身体に触れれば、心臓は一瞬で跳ね上がった。
ドッドッドッ……。
まるで全力疾走しているかの様に心臓が鳴り始めたのを感じながら、俺はペタペタと夢中になってその背中を触る。
これで合っているのか?と不安に思いながら、無我夢中で……。
そしてそんな不安は正解。
そのやり方は間違いであったようで、リーフ様から「 もう少し強く擦って~。 」と言われてしまった。
” 触るだけでは駄目、そこに擦る動きも加えなければいけないのか! ”
そう理解した俺は、動揺を通り越してパニックになりそうになりながら、スィ~と上下に動かす動き、撫でる様な動きを取り入れてみた。
すると今度は正解だったようでリーフ様は黙る。
それを確認した俺は夢中で背中を撫で続け、他のところも……と腕や肩も触れば、リーフ様の身体がピクリッと跳ねる。
それに何か……
────キタ……。
説明が難しいのだが、リーフ様が可愛いとか愛しいとか、そんな気持ちが固まって襲ってきた感じというか……?
俺が触れた事でリーフ様は何かしらの刺激を受けている。
いつもは俺の存在がいてもいなくても全く変わらない彼が────
” 俺の存在を感じてくれている ”
多分これがこの不思議な気持ちの発生源。
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ブハッ!!!と思い切り吹き出した。
リーフ様が。
そして更に面白くて仕方がないといわんばかりにコロコロと転がり回り、最後は一切恥部を隠すことなくゴロンと仰向けに転がると、ピクピクと痙攣するように笑いの余韻に浸る彼を見て、俺の顔面からは全ての血の気が引いた。
” 下手くそ~。 ”
” 今までで一番酷い触れ合い!もう、笑うしかな~い! ”
俺を指差し大笑いするリーフ様が頭の中に浮かび、心はザクザクッと切られてはボロボロと崩れていく……。
ショックで何も言えず呆然としている俺に、リーフ様はお優しいからそんな俺を気遣う様にオロオロとしながら必死に謝ってきた。
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こんな触れ合いをしたのは初めて?
これから慣れていく???
それって……まさか────!
「 はっ……初めてって……本当ですか!?
こうして触れられるのが……俺が……初めてって……?! 」
「 えっ?えっ??────あ、うんうん。本当、本当。 」
思わずリーフ様の両肩を掴み、そう尋ねるとあっさりと答えてくれた。
俺が初めて……今までリーフ様に触れた者はいない。
その事実が心に与えてくる衝撃は……凄かった。
今後は誰であろうとこうした触れ合いをさせるつもりもない、つまりは────
” リーフ様は一生涯、俺にしか触れられない ”
” 嬉しい ” が軽く感じるほどの喜びを感じながら、俺は叫ぶ。
「 俺も全くの初めてですので!!ゆっくり慣れていきたいです。俺、頑張りますから!! 」
そうこれからの意気込みをリーフ様に宣言すれば、なんとリーフ様は、” 頑張って ” と、今後を期待する言葉を俺に贈ってくださった。
俺は俺の全力を持ってリーフ様に気持ちいいと思われる触れ合いをマスターする。
それは今後、一生涯リーフ様に触れる事を唯一許された俺の果たさなければならない義務である。
俺の新たな目標 ” 触れ合いのテクニックレベルをあげる事 ” が心に追加された瞬間であった。
そうしてほわほわと浮ついた心のままお風呂を出た後は、先程採取したベッド・マッシュの元へ。
そこでコチラを ” 見て ” くる無粋な視線に気づき、それをどうしようかとリーフ様に確認すれば、 ” ( 見られるのは )嫌いではない ” ” 寝る時以外は ” ────という話だったので、眠りについたリーフ様を見守った後、その視線を切ってやった。
そして俺は俺に沢山の幸せと、苦しみ、悲しみ、他にも沢山の物を与えてくれる ” 愛おしい ” リーフ様を抱きしめ共に眠りについた。
明日はどんなものを俺にくれるのか?
……まぁ、もう全て俺のモノになったけど。
口角が自然と上がり心地よい感覚の中、意識はリーフ様の後を追いかけるように遠ざかっていき────心の中の黒いモノはまたいつの間にか何処かへ消えてしまった。
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