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第十章

420 運がいいな

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( レオン )




「 美しすぎるのも困ったものだ。


次から次へと邪魔でうっとおしいお前らみたいな奴らが群がってきては、俺からリーフ様を取り上げようとする。 」




グチャッ・・



静かに下ろした足の下で汚らしいモノが潰れた音がすると最後の腕を失くしてしまった男は、まるで動物があげるような悲鳴を上げた。


その後はピクピクと震えながら涙を流し懇願するような目を俺に向ける。



「 ご・・ごめん・・な・・さい・・ 」


「 たす・・けて・・も、もう悪い事・・二度と・・しない・・から・・ 」



全ての手足を失くしイモムシのようになってしまった男は、謝罪する言葉を口にし、今までしてきた事の思い出?をまるで神に懺悔するように言い始めたがーーー

こいつの思い出など俺にとって何の意味もない。



俺が欲しい思い出はリーフ様との思い出だけ。


一番は永遠に取れないが・・



俺はうっとおしいだけの話をする男の口元を片手で掴み、そのまま上に持ち上げると、やっと男は話をやめて恐怖に歪んだ表情をしたまま大人しくなった。



「 愛しい愛しいリーフ様。


二人だけの世界にいつかいけるといいな?




世界中の生き物が消えてしまえば誰にも取られないのに・・



でもリーフ様は悲しむからできない。



俺の苦しみはきっとずっと続く。 」



無表情で淡々とそう語った後、んん~ーーッ!!!と悲鳴をあげようとした男の顔面を、そのままグチャリと潰してやった。



やっと完全に静かになった男・・・だったものを見つめ、ゼロから潰れた時の耐久値を頭にしっかりと刻み込みながら、後方にいる男たちの方へ壊れて動かなくなった "  それ  "  をポーンと投げ捨てる。



すると固まったまま動かなかった残りの男たちは、ゴロゴロと転がっていった ” モノ ” に一瞬視線を向けた後、一様に青白い顔をしながら一瞬で戦闘態勢をとりそれぞれの配置についた。



「 こっ・・こいつ何なんだ?!

なんかおかしいーーー!油断するなよ!!  」



「 言われなくても分かってんよ!!

おいっ!!化け物!!一体何をしやがった!!??



仲間に何をしやがったんだ!?ーーああっ!!!??? 」



男達は警戒しジリジリと距離をとっていたが、次第に数の優勢を思い出したらしく多少はショック状態から持ち直した様子を見せた。


そして冷静に各々スキルの様なモノや身体強化を全身にかけボソッとお互い話し合う。



「 いつも通り、前衛班でまずは突っ込むぞ。 」



「 分かった、じゃあ俺が先行で・・・・










ーーーーーーあぁ、駄目だ、出来ない・・・・


俺は終わりだ。 」




急に弱気なことを言い始めた男に周りにいる男たちは怒鳴りつける。



「 何言ってんだよ!!

今ヤらねえと逆にこっちがヤられんぞ!!


さっさと攻撃スキルを発動しろっ!!! 」





「 無理だ、無理だ、本当に無理なんだ・・・


だって・・・・・・










俺の手、一本もないんだ。 」




は??と全員がゆっくりその男の方へ視線を移せば、そいつは震えながら恐怖で引きつった顔をしていた。


更に顔は青ざめ尋常ではない汗を掻きながら、前に突き出した自身の両手がある筈の部分を目を見開きながら凝視していたので、

残りの男達はそのまま下へ下へとと視線を移していき、やがて手がある箇所まで視線を滑らせていくとーーー

男の両手がない事に気づく。



ザッ!!


その場にいる男達全員の血の気が一気に引いた。



さっきまで確かにそこにあったはずの両腕が、まるで最初からなかったかの様に消えている。


全員がその事で言葉すら出ずにただ震えていると、腕がない男は血の一滴も出ていないその手を呆然と見下ろしながら、フーフーッと呼吸を荒くしていきーーー




「 がっ!!???ああああぁぁぁぁーーー!!!?? 」



遅れてきたらしい痛みに顔をぐちゃぐちゃに歪めながら膝をつき、絶叫を上げた。



直ぐに腕から吹き出した血しぶきを浴びても一切動かない、いや、動けない様子の周囲の男達。


俺はその横をなんでも無いかのようにすり抜けていき、うるさく叫ぶ ” ソレ ” の後ろに静かに立つと・・



その首をレイピアで静かに切ってやった。




するとやはりかなり遅れて俺がうるさい男の背後にいる事に気づいた周囲の男たちは、ヒィッ!!と悲鳴を上げ俺から距離をとったが、

首を切った男は動かずぐちゃぐちゃの顔のまま首の違和感に気づく。





「 ・・・あ・・あれ・・???首が・・?






・・・・?





・・視界が落ちる・・??








ーーー回る・・回る・・・ 」




下に落下しボールの様にコロコロと転がった男の頭はそんな事を口にしながら、残りの男達の方へと転がっていった。


そして男達の目の前で止まった後、固まっている仲間たちを見上げながら、絕望と苦痛に顔を更に歪めやがて動かなくなった。




頭を失った体が力なくドサッと倒れこむ音だけが響く中、それを見ていた一人の男は、

「 う・・うわぁあーーーー!!! 」と叫びながら逃げ出してしまったが、一体何処に行こうとしているのか?


逃げる道など創ってないのに。



順番に使っていくか・・と思い、まずは逃げずに残っている2人程の男たちの方へ目を向けると、奴らはビクッ!と肩を揺らし慌てた様子で俺に話しかけてきた。



「 おっお前・・あ、いや・・貴方様はお強いんですね~。



本当にすみません。謹慎中の現場だったからつい調子に乗ってしまいました!


俺はリーフ様は素晴らしいお方だと思っているので、さっきも一切何も言ってませんから!


だから、その・・み、見逃してくれませんかね? 」



「 お、俺も~・・・

俺もリーフ様は素晴らしく・・その・・美しいお方だという事は知っているので・・


だから俺は帰して貰えませんか・・?


今後は二度と悪い事は辞めて真っ当に生きますから・・ 」



体中に沢山の血の匂いと沢山の ” 誰か ” の負の感情が絡みつき真っ黒に染まっている男達は、口々にそう言いながらヘラヘラと笑う。


俺はそいつらの言葉を嬉しく思い、フッ・・とピリピリしている周囲の空気を和らげてやると、男たちは嬉しそうな表情を見せたが・・次に続く俺の言葉に対しその表情はストンッと消えてしまった。


理由は分からない。




「 じゃあ今からお前たちに ” 幸せ ” を与えてやろう。


リーフ様のために役に立つという世界で一番の ” 幸せ ” を。



ほとんどが無駄に終わる ” 生 ” に特別な意味を与えて貰えるなど、お前たちはーーー最高に運がいい。 」



そしてそのまま近くの1人をレイピアでゆっくり・・ゆっくり・・と刻んでやれば、もう一人が顔を酷く歪めまるで恐怖でも感じているような表情を浮かべたが・・・やはりその理由はよく分からなかった。




こんなに ” 幸せ ” なのに




何も ” 怖い ” はないのに






ねぇ、そうですよね?リーフ様





そう問えば、頭の中には沢山のリーフ様の姿が思い浮かぶ。



沢山のリーフ様との思い出が、そしてその時の言動と行動の数々が、俺にリーフ様が答えるであろう言葉を贈ってくれた。




” その通り!レオンは凄いね。 ”



そうか、未来を ” 創る ” とはこういう事か。





また一つ世界を知れて俺は嬉しい。

その感情に引っ張られて俺の口角は自然と上へ上へと上がっていった。



まぁ、まだ二人の世界にする未来は浮かばないけど・・

焦ることはない。




いつかたどり着けるならそれでいい。





そのまま俺は上機嫌のまま他に逃げた奴もきっちりと使い込み、” ゴミ ” は全て多次元ボックスへ入れて片付けた。




そしてその後、俺は空間の外の世界へ。





” ルールを守って世界を生きる ” 



ルールを守れば守る程、俺はリーフ様の望む俺に近づいている。


それが出来るたびにリーフ様と1つになれたような・・そんな喜びを感じて嬉しかった。




こんな ” 幸せ ” もあるのか・・


そんな小さな幸せにフッと笑みを浮かべる。


そしてだいぶ力加減も出来るようになったと満足しながら、街の中の奴らは全てきっちり使い終え、最後に街の外にいる最後の4人の元に飛んでいった。


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