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第十章

413 太陽

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( レオン )



出ない答えなど考えていても仕方がない

そう結論を出し、俺はこのむっちんむっちんの胸を使って積極的にアピールし続け、その結果俺とリーフ様の距離はだいぶ進んだ様に思う。



しかし中学院という学び舎のテストを受ける際、あれよあれよと群がるのは、リーフ様という大輪に咲く美しい花に集る小バエの様な奴らでそれが俺は嫌で嫌で仕方がなかった。


今までは俺が全部独占出来ていたのに・・・


どうも人族ではない他種族は他者を認識する際の感覚系が人族とは違うようで、人族のような人に対する慎重さはなく直感でリーフ様の素晴らしさを見抜いてはチョコチョコ構いにくる様だ。


それにモヤモヤとした気持ちが湧き上がり、全員消してやりたかったが、それをやればリーフ様が悲しむから出来ない・・



更に街で聞いた会話の中でそれをすると嫌われてしまうという話しも聞いたことがあったため俺は必死にそれに耐えた。


” 彼が好きなら彼を大事に思っている人ごと大事にしないと悲しませてしまうでしょ? ”


好きで好きで相手の男に群がる全ての者達を邪魔に感じてしまうと言っていた女に対し、また別の女が吐いた言葉だ。


きっとこれはリーフ様にも当てはまる事だと今まで彼と過ごしてきた日々を思い出しそう考え、

” リーフ様に好意的な者に対し俺は手を下さない ” 

これも世界のルールに加えておいた。



本当はリーフ様の目に映る人間は俺だけがいいし、近づく人間も俺だけが良い。


だがそれをすればリーフ様は ” 悲しい ”。



なら我慢するのは俺であるべき



俺は ” 悲しい ” ” 苦しい ” ・・・

でもやっぱり楽しそうなリーフ様を見るのが ” 嬉しい ” からこれは仕方がない事だと判断する。



そしてまた複雑な自分の気持ちに心の中は "   不思議   "   で溢れ出す。



そんなぐちゃぐちゃな心のまま中学院の試験は続いていき、ちょうど剣体術の試験が終わったあたりの事。

次の試験までの間の時間、リーフ様と二人きり・・嬉しいなと上機嫌な俺にリーフ様は不思議な事を言った。



”  俺も未来が見えるよ!

ずばり!レオンは今、俺の腰を鷲掴み、お膝に乗せようとしている! ”



ちょうどそれをしようとしていたのでギクリと体の動きを止める。

更に続く言葉も俺がその後しようとしていた事だったのでまたしても驚き、リーフ様が未来視をした事に対し驚いた事を口にしたのだが・・・


” 違う違う。これは未来を見たわけじゃなくてレオンとの思い出から予想したんだよ。”


ーーーと、全く理解できない言葉を返され、頭から盛大なハテナマークが飛び出した。



思い出から???



意味が分からないそれに困惑したが、


” 思い出により未来視が可能になる ”

” 更にそれが沢山あれば好きな未来を選べる ”

” 未来は見るより作るもの ”


ーーと、リーフ様は次々と衝撃的な内容の話をペラペラと話しだす。



それを聞いた瞬間、

俺の心には一筋の光りが差し込み  "  もしかして・・  "  という期待で心臓が高鳴った。



思い出が沢山あれば、いつか ” 二人だけの世界 ” にたどり着く夢のような未来を選ぶことも可能なのだろうか・・?


期待を込めてそう尋ねれば、” 選べる、だがまだ早い ” とそんな答えがあっさりと返ってきた。


それを選ぶには時を操る魔法を使っても駄目らしいので、どうやら地道にやっていくしか方法はないらしい。



ーーーだが、” いつかは叶う ” 


そんな希望で満ち溢れた言葉を聞いてそれまでモヤモヤしていた気持ちは吹き飛ぶ。

そしてその ” いつかくる幸せな未来 ” を想像し俺は嬉しくて堪らない気持ちになった。




「 ” 思い出 ” これから沢山沢山作りましょうね。



いつか二人だけの、永遠に離れることのない世界に行くために。 」




歌うようにそう言う俺にリーフ様は、


「 うん、いいよ~・・ 」


そうはっきりと答えてくれたのだった。





このまま思い出を沢山作れば俺は理想の楽園の様なところへ行く事が出来る!



こんな簡単な事で良かったのかと歓喜した俺はーーーー





この後直ぐに地獄へと叩き落される。





甘い匂いのする不思議な白い木を咲かせたリーフ様は、なんのためらいもなくそのふわふわした葉をその場の全員に配った。


周りの人間達はそれを貰い笑顔に。

そして幸せな一杯の空気が辺りに充満する中、俺はそれを見て思い知らされた。



リーフ様が与える ” 幸せ ” は俺にだけ与えられるものではなく、平等に全世界の人がそれを貰う事が可能だということ。


更にリーフ様はそれが出来てしまう神様なのだという事を・・



俺との思い出はその他の者達との思い出と同様、リーフ様の思い出の1つ。


太陽に俺だけを照らせと言っても常識的に考えれば無理な話、これは俺の認識が甘かったと認めざるを得ないだろう。




「 俺は全てを理解しました。


そうです。太陽を手にするには多少手を伸ばしたくらいでは届きませんから。


俺の認識が甘かった。

俺が間違っていました。



・・でも、いいんです、俺はそれでもついていくって決めてるので。 」




それでも俺はそれを諦めることなど断じてするつもりなどない。


太陽に届かないというならばーーー




照らされる大地全てを覆い隠せばいいだけだ。俺という存在で。





思い出の中のダントツ一番を取り続ければ太陽は俺のもの。


そんな簡単な話だと俺は張り切りながら ” 種 ” の構造を全て変え、

” リーフ様が好きな色、全ての色・・ ”

” リーフ様の好きなキラキラしたモノ ”

を混ぜ込んだ< 花爆弾 >を打ち上げた。




これで俺が一番。


だからずっとず~っと俺と一緒



そう確信していったのだがーーーーー・・




「 一番はこの俺!リーフ・フォン・メルンブルク~!!


全てにおいて俺が一番、レオンは二番。 」



突きつけられた事実に膝から崩れ去りそうになり、情けなくもリーフ様に支えられてしまう。



これでは最初から俺は一番になどなれない。


そう理解した瞬間、手が届きそうだった楽園ははるか彼方へと飛んでいってしまった・・・



フルフルと小さく震える体で踏ん張ることも出来ず意気消沈していると、


「 絶対いつかは好きな何かで一番になれるから頑張ろう!


それまで俺がずっと傍で見張っててあげるからさ。 」


そうリーフ様は言ってくれた。



頑張ればいつかは取れる?

リーフ様が一番は変わらないのに本当だろうかと思ったが、その後続く言葉により体に力がぐんぐんと戻ってくる。


” 2番でいる限りリーフ様は側にいてくれる ”


じゃあ、結局は俺の側にリーフ様はいてくれる、そういう事ではないか?

それに気づいた俺は、自分でもどうかと思うくらい喜び「 はい。 」と返事を返した。




リーフ様の ” 側にいる ” が俺だけではない事を漠然と感じながらも・・・


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