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第九章

407 黒く染まった・・

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( ??? )

「 ……おい、レーニャ、何笑って…… 」


「 ズバリ!!答えを完全に ” 取られない ” のはきっと大樹さんのお陰なのです!!

なんたって大樹さんは私の ” 神様 ” ですから!! 」


ノールの呆れたようなため息などなんのその……

レーニャはドヤッ!!とした顔でそれを堂々と言い切り胸をコレでもかと突き出す。


それにリイトとアースは顔を見合わせた後、続けてどういうことだと説明を求めてノールに目線を送るので、それを一心に受けたノールが渋々とその< 大樹 >の説明をした。


そこでやっと二人はレーニャが以前からあーだこーだと顔を合わす度に語っていた一人の ” 人 ” について思い出す。


「 あ~……レーニャがよく言っていた、あの特にこれといった特徴がないおじさんね。

神幹部になるのを断ったって聞いたから、てっきりまたどっかの輪廻の輪に入り込んだのかと思ってたけど……まさか ” 無 ” になる予定の世界に転生させてたなんて。


もうっ、なんて可哀想な事するのよ~。 」


「 ……決められた【 理 】のシナリオからは逃げられない。

その大樹さんも……その世界とともに消えちゃうよ?


レーニャはそれでいいの? 」


ノールから事情を聞いたリイトとアースは交互にそうレーニャに尋ねたが、レーニャは全く動じる事なく、きっぱりバッサリと言い切った。


「 大丈夫!!絶対大樹さんがハッピーエンドにしてくれるから! 」


それにノール、リイト、アースは同時にため息をつき、3人はそんなレーニャを放って置いて、3人で集まり輪を作るとボソボソと話し始める。


「 ……で、一体何がどうなって大樹さんはその世界に転生しちゃったわけ? 」


「 レーニャが無理やり……?……いや、でも…… 」


またしても黒い人型人形をガスッガスッと殴り始めたレーニャをリイトとアースはチラッと見てから、それはないなと静かに首を振る。


生ぬるい目でレーニャを見ていたノールは、両手を前に出しサッカーボールくらいのしょぼん玉のようなものをポンッと出すと、リイトとアースに向けて突き出した。


すると、そこに写っているのはレーニャと大樹の姿で、転生するまでの経緯が全て映画の様に流れていき3人はそれを最後までジッと見た後、難しい表情を見せる。


「 なるほどね。

なんか少し……いえ、かなり変わった人ねぇ、大樹さんって。

決まりきった運命を変えたいとか抗いたいとか言うわけじゃなく、終わりを理解した上で ” 選択肢 ” を増やしたいなんて……

結果が変わらない事にこんなに必死になったって仕方ないのに。 」


「 自分の存在が消えても構わないなんて……そんなの信じられないよ。

こう言っちゃ悪いけど……何か裏でもあるんじゃないの? 」


いまいち信じられないといった様子でノールに目線を移すリイトとアース。


「 まぁ、続きを見たら全部分かるよ。 」


ノールは二人の話に大きく頷きながら、自身の手の平の上に浮かぶシャボン玉の様な球体に視線を送ったため、2人も視線をそこに戻した。


するとそこに写ったのは大樹さんが転生するまでの周りの環境と生まれてからレオンハルトを見つけるまでの映像。

続いてそれからの過ごしてきた日々が一瞬で流され、その全ての情報はリイトとアースの中へ。

2人の顔からは一切の表情が消え去り、またしてもノールはそんな2人をみて分かります!と大きく頷いた。


「 本当に裏は一切ないのね。

……なんだか酷く孤独な世界を生きる人よね、” そこ ” には誰もいないのに。


でも、だからこそなのかしら??

なんだかんだで上手くいっちゃってるのよね……。


…………でも、何でコレで一緒にいられるの??

会話になってなくない?9割くらい……。 」



「 う~ん……確かに全然通じてないよね。

全く噛み合ってないからだろうね、何もかもが。


でもさ、ホントにすごいや。

自分と自分の大事だけをとって他の世界を犠牲にしようとはしないんだ?

ま、無駄な事だから賢明だとは思うけどね。

なんだか不思議。



────でも……それよりも僕が気になるのはこのレオンハルトの方だよ。

情報が……ボクには一切見えない……


今までの魂の記憶、人生の軌跡、これから向かう未来の姿、そして感情のひとつさえも……


2人は見える? 」


アースが険しい顔でそう言うと、ノールは直ぐに表情を引き締めた。


「 そう、一番のおかしいところはそこなんだ。


レオンハルトの情報がある時期から急に真っ黒になって見えなくなってしまった。


……ちょうど大樹……いや、今はリーフさんか。

リーフさんと出会って直ぐからだ。


今見えているこの映像も、俺から見たらレオンハルトの姿を映すことが出来ない。 」


「 は?一体何を言っているのよ?

だって現に今写っているじゃない? 」


リイトがそう尋ねると、ノールは汗をツゥ……と垂らしながらボソリと呟く。


「 それは俺からの ” 目 ” で写してないからだよ。

この映像は……リーフさんを介して写している映像なんだ。

彼を介さないとレオンハルトを ” 認識する ” ことすら出来ない。


……そんな事ありえると思うか? 」


ゴクリと喉を鳴らしたアースと対称的にリイトはプッと吹き出した後笑いながら言った。


「 一体何の冗談よ~。

世界の管理者である< 神幹部 >が ” 見えない ” なんて事あるわけ無いじゃない。

私達には【 理 】を見るための ” 目 ” があるんだから。

────いいわ。私が全部見てあげようじゃない。


レオンハルトの全ての情報を ” 見れば ” 少しでも何か手がかりがつかめるでしょう? 」


リイトはそう言った後、パチンッと指を弾いた。


すると、辺り一面に四角い小さなディスプレイのようなものが大量に出現し、現在のレオンハルトの姿があらゆる角度から写される。


どうやらこれから就寝の時間であったらしく巨大なベッドの上に乗り、直ぐ近くには大樹さんの姿も見えた。

それにギャーギャー文句を言い出したレーニャは放って置いて、リイトはレオンハルトに向けて ” 目 ” を向けた、その時────



プツッ……


突然沢山浮かんでいるディスプレイ、その1つに映っている映像が消えた。


完全に電気が切れたように真っ黒になった画面に驚き、全員がそちらに注目すると────


プツッ……パッ!……プツッ……



連続してドンドンと映像は消えて言ってしまい、最後に残るのは正面に映っている1つのみとなってしまった。


何……?


青ざめながら、全員がそのその残った画面を見つめていると、後ろ姿のレオンハルトがゆっくりとコチラを振り向き────





目が合った。




「 ヒッ!! 」とそんな短い悲鳴がリイトから聞こえたのと同時に、そのたった1つの画面もプツッと消えてしまい────


後に残るのは真っ黒に染まり何も写さない沢山のディスプレイ達と呆然と立ち尽くす〈 神幹部 〉達だけであった。

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