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第九章

406 神様達のお話

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「 どういうことだ……? 」


何一つない真っ白な空間の中、深い海のような髪と瞳、まだ10代前半くらいのあどけない顔をした白いシャツに黒いズボンというラフな格好した少年────


神幹部が1人< ノール >


────は、険しい表情をしてその後黙りこくる。



自身の担当する領域内の仕事を一通り終え、さぁ、次の仕事へ……と準備をしていた時、フッと以前レーニャと話していた話を気まぐれに思い出したのが始まり。


 ” 無 ” の世界になることが【 理 】によって決定している世界について改めて考え、知識を総動員させて調べたが……やはり解明することがどうしても出来なかった。



” 無 ” の世界はどうやって作られたのか?



絶対に変えることは出来ない【 理 】は、いわば全ての世界を支えるたった一本の支柱で、それこそが全てのモノの中心になっているもの。


” 無 ” にするとはそれに穴を開けるという事であり、この数という概念が無いほど無数に存在する世界の中の、たった1人の ” 人 ” に出来るようなことでは断じてない。

それこそ、その小さな世界を管理している ” 小神 ” にだって当然無理だし、神幹部であるノールにだって出来るどころかそのやり方すら分からない。

しかもそれが正規の流れとして【 理 】に組み込まれているなど、やはりどう考えてもおかしい。


「 ……これは思ったより大変な事かもしれないぞ。

とんでもない所に大樹さんを放り込んでしまったな、レーニャ。 」


いつの間にかノールの少し離れた所に1人の少女らしき人物がぺたりと座っていた。


10代半ばに届くかどうかくらいの年齢、真っ白なワンピースを着た金色のやや長めのショートカットに同色の瞳を持つ少女。


神幹部が1人< レーニャ >


レーニャは自身の背丈と同じくらいの ” レオン ” と書かれた黒い人型の人形を持っていて、それをガスッガスッと無言で殴りつけていた。


その様子を汗を一筋垂らしながら見守りつつ、ノールはもう一度「 ……おい、レーニャ。 」と呼びかけると、ブスッとしながら頬を2倍くらいに膨らましたレーニャの顔がコチラを向く。


「 大樹さんが毎日酷いセクハラ……いえ、痴漢にあってるんです!!

あいつ何なんですか!!

大樹さんは……大樹さんは……眺めるだけ!!

お触り禁止の尊き存在なのに!!


断じて許すまじ!レオンハルト!!!

レーニャは元祖大樹さんファンとして、新参者のあいつに神様の天罰を食らわしてやろうと力を溜め込んでいる最中なの!


邪魔しないで下さい!! 」


物凄い剣幕でまくしたてるレーニャにノールはタジタジと後ろに仰け反り一旦口を閉じた。

しかし言おうとしていた事を思い出し、雑巾の様に黒い人形を絞っているレーニャに対して再度口を開く。


「 いや、その問題は置いておいて……やっぱりどう考えてもおかしい。


一体どうやって ” 無 ” の世界は作られたのか皆目検討もつかない。

あそこの世界は確か< イシュル >という小神が治める世界だったよな? 」


「 そうです。

そのイシュルが作った自身の世界のルールに従って、レオンハルトは世界を ” 無 ” にすることを望み、最後はイシュルもそれとともに跡形もなく消え去ったみたいですね。 」


「 ……それがそもそもおかしい。

なぜその小神が決めた ” 自分の世界だけ ” でしか適応しないはずのルールが【 理 】に影響するほどの力を持っているんだ?

そのせいで周辺の……いや、他の全ての世界もそのせいで全ての運命が変わってしまっている。

それが正規の運命になっているなんてありえない事だぞ? 」


ノールが言い終わった後、2人は揃ってう~ん……と考え込む。

しかしどう考えてもそれに対する答えは出ずお手上げといった白旗を振ろうとしたその時────

2人以外いなかったはずの白い空間の中に、いつの間にか20代に届かないくらいの細身の女性が立っていた。

マグマの様な深い赤色の髪と瞳。

白いシャツに黒いタイトなズボンというラフな格好をしている美しい女性。


彼女は神幹部が1人。


< リイト >


リイトは切り揃えたサラサラの髪をスッと後ろに流しながら、レーニャとノール同様、う~ん……と考え込むような表情を見せながら口を開く。


「 確かにおかしな話よね。

そんな事少なくとも私が神幹部になってから一度だって起きた事ないし、そのせいで周辺の世界は全部全滅じゃない。


【 理 】の流れだってもしかしたら変わってしまうかも……。

そんな一大事になぜ今まで気づかなかったのかしら……? 

ねぇ、確かイシュルの世界はあなたの管轄でしょ?


何か分かる?< アース > 」


リイトはフッと横に視線を送ると、そこには小さな10歳にも満たないふわふわパーマの黄緑色の髪色と瞳を持つ少年がいた。

その少年はブカブカの抹茶色のトレーナーの袖をイジイジと弄りながら、恐る恐る口を開く。


「 うん。だからボク、イシュルに会ってきたんだけど…… ” 多分取られてしまってた ” って言ってたよ。

あれでは情報は何も残ってないね。

……多分僕たちの疑問に感じる感情も ” 取られていた ”


今も気を抜けばあっと今に消えてしまいそうなのに……完全に取られないのは何か原因があるはず。


一体何が起きているんだろう? 」


シン……と静まり帰った白い空間内、その中で一番最初に響いた音、それはレーニャのフッフッフッ~という不敵に笑う笑い声であった。


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