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第九章

398 しなくてもいいよ

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( リーフ )
< お化けさやえんどう >

通常の10倍~50倍の大きさのさやえんどう。

魔素の影響により大きくなったもので、ポッポ鳥の大好物。



< ポップン花 >

もこもこの綿のような高級花。

加工すれば布や糸にすることもできる。


< 干しマッシュ >

旨味がギュッと詰まったカラカラのきのこ。

スープに入れて出しをとれば濃厚な旨味スープができる。



< バター芋 >

焼くとバターのような旨味成分がドロリと出てくるじゃがいも。



「 おおおお~!! 」


結構な量のそれらをドサッと出して、あげ玉はドヤ顔し、俺は目をキラキラ輝かせながらレオンの上から降りた。


「 凄いや!見たことないヤツも沢山あるね。

あげ玉ありがと~。 」


ふわふわのポップン花を持ち上げ、ポンポンと上に投げて遊ぶ。


そして赤ちゃんくらいの大きさのお化けさやえんどうを抱き上げ繁々と眺めた後、レオンの方へそれをグイッと近づけた。


「 これなら美味しいの沢山食べれるね。 」


ご機嫌で言えば、レオンはフム……と頷きながら、それを受け取りペリッと皮を剥きだす。


今食べるのかな~?


そう思いながら見守っていると、レオンは中からサッカーボールより少し小さいくらいの豆を取り出し、そのまま畑にサッサッと植えていった。

更にその隣のスペースにポップン花、そのまた隣にバター芋も同様に植えていく。


おお~!


その手際の良さに、あげ玉と二人でパチパチ拍手していると、今度はベニア板を持ってきて木のテントの様なものをあっという間に作ってしまったので、また二人で拍手を送った。


でも何だろう?このテントみたいなの。


とりあえず興味津々でそれに近づくと、そのテントにはバカッと開くタイプの扉がついていて、中はそれなりに広い空間になっている。

そんな秘密基地的な小屋?の中に、レオンはスタスタと入っていき、手に持っていた干しマッシュを等間隔にサッサッと埋め始めた。


どうやらこれは、キノコ部屋として使うつもりらしい。


英雄、大工、農夫…………。


優秀なレオンの、将来選べる職業の幅がどんどんと広がっていく~。


ウヒョヒョ~イ!と喜んでいると、急にぐぐぅ~と俺の腹が鳴った。


「 …………。 」


空腹を訴えるお腹を摩りながら、俺はレオンとあげ玉に声をかける。


「 二人とも色々ありがとう。

せっかくだから、レオンが作ってくれた縁側でご飯を食べてみようよ。 」


ワクワクしながら、縁側を指差すと、レオンとあげ玉はコクリとうなづいてくれた。


レオンは即座に俺の後ろにピタリとくっつき、いつもの定位置へ。

あげ玉は残りのお化けさやえんどうを、つぃ……とくちばしで摘み、縁側に向かう俺達の後についてくる。


そしてそのまま俺とレオンは、テーブルに置いた食べ物を持って縁側に並んで座り、あげ玉は近くの畑側の場所にゴロンッと転がり器用に皮を剥き豆を食べ始めた。


縁側にゆったりと座り、フッと森の方へ視線を向けると、空はもう真っ暗だ。


陽が沈んできた事で本来の暗さが家を囲むが、畑にいるキラリ・マッシュのお陰で淡い光がそこら中で光り、全く暗さを感じない。


「 うわぁ~……。 」


人工的ではないその明るさがとても綺麗かつ幻想的で……思わず声を漏らした後、肉巻きパンを手にとりパクリと齧った。



< 肉巻きパン >

中に入っている肉がミルフィーユ状に巻かれているお肉たっぷりのパン。

ボリューム満点のそのパンは肉体労働のお仕事の者達に大人気。



肉のしっかりとした噛みごたえと、口の中で飛び出す肉汁。

そしてレモンのような果汁ソースが控えめにかかっているお肉は、爽やかな酸味と絡んで肉汁と混ざり合い、美味しい!という感想しか頭に浮かばない。


う、う、うま~!


そのまま夢中になって食べていると、隣に座るレオンが ” 自分も食べたい! ” と言わんばかりに、ジッと俺を見つめている事に気づいた。


あ~いつものね!

はいはい、残飯、残飯~。


流れる様な動きで自分の食べているパンをレオンの口に捩じ込もうとして────ピタリと動きを止める。


すっかり癖になっている ” 椅子 ” や ” 残飯処理 ” などのレオンのお仕事。


最高の虐めパフォーマンスであるこの行為は、最近ちょっと当たり前になりすぎていて、無意識にやってしまっている。


────もしかして、これは良くないのでは?


冒険者のジンさん達やソフィアちゃん達など、レガーノの街以外の人達に会って、強くそう思うようになった。


別に2人きりの時はする必要はないか、パフォーマンスだし……。


そう考えた俺はレオンに近づけていた食べかけパンを引っ込め、まだ包を開けていない肉巻きパンへ手を伸ばそうとしたのだが────……?




────パシッ!!



食べかけのパンを持った手を、急にレオンに掴まれ結構な力で引っ張られてしまい、結果、俺の顔は硬い硬いレオンのお胸に正面衝突してしまった!


「 ────うぷっ……! 」


低い鼻のお陰でダメージは少ないが、その代わり鼻と口がレオンのお胸により塞がれ、息が詰まる。

直ぐにそこから顔を上げ離れようとしたが、逃さんとばかりにすかさずレオンは俺の腰を掴み自身のお膝の上に腹話術人形スタイルで俺を抱きかかえてしまった。


俺、腹話術人形!


いつも通りシーンと押し黙り、大人しく体の力を抜きかけて────ハッ!と我に帰る。


いけないけない。

新品の肉巻きパンを早くあげないと。


そう考えてモソモソと腕から脱出し、新たなパンを取ろうとしたが……何とレオンに手を掴まれ更に腰に腕を回されてしまったため、脱出は100%無理になってしまった。


途中下車禁止的な??


ぎっちり締められてしまいほぼ動けないが、それでも諦めず唯一自由に動かせる口で説得を試みる事に。


「 レオン、今日から2人きりの時は食べかけじゃない新品をあげるよ。

それに ” 椅子 ” もしなくてもいいよ。


だから自由に食べて──── 」



「 リーフ様は────……。 」



急に俺の話を遮って、話を始めたレオン。


おや?どうやらレオンが積極的に話そうとしているぞ??


思わぬ変化……いや、進化?を遂げようとするレオンのため、俺はピタリと動きを止め、しっかりお口チェックしてその続きを待った。

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