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第九章

388 俺達の寮

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( リーフ )


「 あー……レオンなぁ~……

うん、獣人だったら一緒の敷地内は……無理だな! 」


「 ……寝れない……休めない……。 」


ハハハ~と笑って言うレイドと、しみじみ~といった様子で頷くメルちゃん。



「 う~ん、う~ん……レオンはちょっと……ねぇ~? 」


「 申し訳ないですが…… 」


顎に人差し指を付けて考え込む仕草をするサイモンと、申し訳無さそうな表情を見せるリリアちゃん。



「 まぁ、俺達は戦闘系ではないですし、慣れたというのもありますが毎日は……。 」


「 そうっすね~、俺も毎日はちょっと……。

別にたまになら慣れたっすけどね。 」


揃って顎に手を当て、お互い何とも言えぬ顔を見せ合うモルトとニール。



そうして一呼吸置いた後、示し合わせた様に全員揃って────


「「「「「 怖いから無理~!! 」」」」」


……ときっぱり言い捨てた。



なんて清々しい!



更にその後すかさず横からアゼリアちゃんが、「 プラス私は嫌いだから絶対嫌だ。 」とバッサリ、グッサリ言い捨てる。


ソフィアちゃんが汗を掻きながら、アゼリアちゃんのポニーテールの髪をグイッと引っ張って軽く叱咤した後、申し訳無さそうに言った。



「 レオン様には申し訳ないですが、その独特の存在感のせいで感覚が引っ張られてしまい、特に護衛や警備の者達の仕事に支障が出てしまう様です。

私は戦闘職ではないのですが、やはりレオン様の側にいるとそれを感じます。


こうしてお話するのは良いですが、就寝となると……。 」



オロオロとレオンの方を気にしながら話すソフィアちゃんは、どうやらとてもレオンに気を遣ってくれている様だ。


その気遣いが俺はとても嬉しい。

そしてそんな心配してくれているのに、ポケ~と何も反応しないレオンは良くない。


俺はグイッ~とレオンのマントを引っ張り、軽く頭を下げさせた後、心配御無用!と言わんばかりにドン!と胸を叩く。



「 心配してくれてありがと~。

でも大丈夫だよ!俺達ちゃ~んと住む所見つけたから! 」



そう告げると、ソフィアちゃん達はホッとした様子を見せた。

なんだかんだ言って皆ちゃんとレオンの事を心配してくれていたみたいだ。


ジジ~ン……。


染みる感動を噛み締めつつ、レオンの謎オーラには困ったものだなと内心頭を抱えたが、別に出したくて出しているわけじゃないようなのでどうしようもない。


俺は全く感じないが、多分ワキガ的なやつなのだろうな……耐えられない人には耐えられない的なヤツ。

俺は全然平気だから良かったけど。


多分中身が還暦超えの俺の感覚は、若い彼らと違い大分鈍いはずなので、恐らくそれが原因で気にならないのだと思われるが……実はそれはそれで困りもの。


レオンの気配そのものを感じ取れず、逆に結構な頻度でトラブルになることもある。


俺はその困ったトラブルの数々を思い出し、う~ん……と汗を掻いた。



トラブルのダントツ第一位は、ずばりトイレ。


レオンは俺がトイレの時は、オープン型だろうが個室だろうが入ってこようとするわけだが、昼は別にいい。


NO!と言えるから。


でも夜は寝ぼけながらフラフラ~とトイレに行くので、意思表示をしない俺に対し、指示待ち代表選手のレオンはそのまましっかりと中までついてきてしまうのだ。


ここで気配をビンビン出してくれるなら俺も目が覚めるはずなのだが、如何せん空気並の存在感のなさでくっついてくるもんだから全く気づかない。

この間など、はっ!と目を冷ますと、小さな子供のお尻を叩くスタイルで腰から持ち上げられ、お尻を丁寧に拭かれていた俺は大絶叫。


流石にそんな下の世話は寝たきりになってからお願いしたい!


そう心から願い、つらつら必死にそれをレオンに説明したが、いつも通り分かっているのかいないのか……。


「 はい。……?? 」


────と、最後にハテナが絶対ついている!と思わせるような返事しか返ってきていない。


そもそも何で離れて暮らすレオンが夜トイレに?という疑問はさて置き、その時の事を思い出し、はぁ……とため息をついたところで────ピタリと動きを止めた。


そうだ!トイレを俺達の寮に早急に作らないとバケツにしなければならなくなってしまう!!


その事を思い出し顔色を悪くした俺は、直ぐに皆に向かってサッ!と片手を上げる。


「 色々気にかけてくれてありがとう!じゃあ、俺達帰るね!

また明日~。 」


ポカンッとする皆にそれだけ伝え、俺はレオンと共に急いで俺達の寮へと向かった。



第一寮、第二寮、第三寮を突っ切り、演習用の森に入り先程レオンが立ててくれた立て札を発見。

そしておしゃれコテージみたいになっている俺達の寮まで帰ってきた。


なんだか寮というより家だな、これ……。


表札の様に立てられている立て札を見て思ったが、家でも寮でもどっちでもいいから、とにかく今は直ぐに街の方へ行ってトイレに使う洗浄用の魔導具の値段を確認してこないといけない。

そのため俺は、外に出した丸太や切り揃えたベニア板を見ながら考え込んでいるレオンに話しかけた。


「 レオン、俺ちょっと街で見てくるものがあるから今から行ってくるよ!

直ぐに帰ってくるからここで待っていてくれるかい? 」


レオンまで街に行くと、そろそろ遊び終えたあげ玉が確実に街へと降ってくる。


魔導具専門店にはこの間多大な迷惑を掛け正直気まずいなと思っているので、1人でサッと見に行ってこようとそう考えたのだ。


レオンはう~ん……と考え込みながら、俺、丸太、俺、丸太と2度ほど視線を移動させて見た後、「 分かりました。 」と素直に頷いた。



おお~、レオンがお留守番でゴネなかった!


それに感動していると、レオンは「 最終的にどんな家にしたいですか? 」と聞いてきたので、ペラペラと、とりあえずトイレ~あと最終的にはお風呂~だのと、これでもかと要望を出すと、レオンはまた頷く。


「 分かりました。

────あと、アレ、使っていいですか? 」


レオンは多次元バックに入れずにレオンが遊ぶ用に取っておいた瘴核を指差し、そう聞いてきた。


「 いいよ! 」


快く頷いたが、そもそも元は全部レオンのもの。


多分キラキラしたものが好きなレオンはアレを床にでも敷き詰めるつもりか、それかおままごと的な事に使うつもりか……そのどちらかだと思われる。


俺は内装にこだわりなどないので、レオン好みの好きなお部屋にしてもらって構わない。


そのためレオンのその他の質問にも全てOKOK~!と適当に答え、俺は魔導具専門店がある【 商業区域 】へと急いで飛んでいった。
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