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第九章

377 あ、そっちか〜

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( リーフ )


「 おはようございます、リーフ様。

お初にお目にかかります。大司教グレスターの娘、ジェニファーと申します。

以後お見知りおきを・・・。


・・・失礼を承知でお願いしたい事がございますが1つよろしいでしょうか・・? 」


余程言いにくい事なのか、扇子を持つ手はブルブルと震えている。

これはただ事ではないぞ!


「 いいよ! 」


俺は直ぐに背筋を伸ばしキリッと真剣な表情で答えると、ジェニファーちゃんはキッ!と睨みつけてきた。



俺の後ろにいるレオンを。


         ・・
「 う・・うしろのそれを・・

・・・レオン様をこの寮に入れないで頂きたいのです・・!!

私は・・ーーいえ、私達はそのような恐ろしい存在と共に暮らす事など出来ません。

特に護衛や警護の者達は、レオン様のその気に当てられて仕事もままならなくなるでしょう。


ですので、どうか・・・どうかよろしくお願いいたします・・。 」


息も絶え絶えにそう言い切った後、ジェニファーちゃんは頭を下げた。

そしてそれに合わせて周りにズラリといる生徒達や護衛さん達、そしてその寮で雇われているであろうスタッフさん達が全員同じ様に頭を下げてしまい、俺はオロオロと焦る。


「 頭上げて~。 」と必死に頼みながら同時に肩もガックリ~。


あ、そっち?そっちか~・・・


つい最近レガーノで認知され始めたレオンのモテモテっぷりに油断して忘れていたが、やはり戦闘職や様々な知識を持っている貴族の子達にとってレオンという存在はまだまだ脅威的なご様子。

普通の友達~の様に受け入れてもらうには時間が必要なようだ。

まぁ、こればっかりは仕方がないかと、納得しながら肩をすくめる。


公園の鳩だって最初お豆を見せても近づいて来ないし、時間をかけてレオンというお豆に慣れて頂くしかない。


可愛い鳩さんが沢山クックル~と鳴いている中、黒豆レオンをこれでもかと毎日見せつける。

すると最初は怯えていた鳩さんも、あれよあれよと黒豆レオンを求めて一斉に飛んできてーー・・。


餌に飛びついてくる公園のモフモフ鳩さん達を思い出して気分はホッコリ。

とりあえず俺は相手の気持ちも考えず結果を急ぎすぎたことを反省した。

そしてチラッとジェニファーの全身に視線を走らせると、気丈に振る舞ってはいるが、カタカタと小さく震え続けている。


ジェニファーちゃんは教会の大司教様の娘さん・・つまりイシュル神の禁忌色である ” 黒 ” に対する恐怖は人並み以上に違いない。

それなのに、こうして真っ向から頼み込んでくるところはとても誠実であると、俺は感動した。


ジーンと胸を振るわせながら、続けて試験の時の教員達同様手足をガクガクさせている護衛さん達を見て、試験直後アントンに言われた事を思い出す。


” こいつぁは~凄いでさぁ。

レオンの雰囲気がちょっとビリビリになってるといいますか・・

もしかして戦闘職の中には近づくだけでもきついなって奴も沢山いるかもしれませんね。 ”



ーーー日々ゴネすぎたから?


ゴネ!

ゴネ!

ゴネ!

ゴネ~っ!


ーーーとするレオンを思い出し、思わず疑いの目をレオンに向けてしまったが、純粋少年レオンとのキラキラした思い出もほぼ同時に振り返り、首を横に振る。


いやいや、変態集団に無理やり一皮どころか十皮くらい剥かれちゃったからじゃない??

だとすればやはり心の傷が関係しているのかもしれないぞ!


再燃しそうになった怒りを必死に抑え、レオンの物理的な変化について考える。


どうやら試験後あたりから発生し始めた静電気的な謎オーラ。

そのせいで戦闘職のイザベルも最初、オエッ!!ってえづいていたくらいなので、大丈夫かな~って思っていたが……大丈夫ではないらしい事が今目の前で証明されてしまった。


ちなみに俺も戦闘職だけど全く変わった感じに見えないし、何も感じない。


むしろそんな静電気みたいなものがあるなら是非、凝り固まった肩に流していただきたいと思ってる。


不思議~と首を傾げながら、顔を上げ俺の返事を待っている皆に対し口を開こうとすると、ソフィアちゃんが俺の前に進み出て申し訳無さそうに言った。


「 リーフ様おはようございます。

騒ぎになってしまい申し訳有りませんでした。

実はレオン様が主席としてこの寮へ入寮されることについて、かなり早い時間から関係者達がここに集まり・・・その・・色々と問題が起きてしまいまして・・。 」


青ざめながらソフィアちゃんはチラッと俺の後ろで完全オフモードのレオンに視線を向ける。

更に周囲にいる沢山の人達も同様の視線をレオンに送り、とても気を使ってくれていることが分かった。


そんなにレオンの事を気遣ってくれるなんておじさん感動~。

しか~し!心配御無用!レオンは大丈夫。


本当に一切聞いてないから!


ね~?と確認するようにボンヤリと立つレオンにチラッと視線を向ければ、レオンは ” あ、終わりました? ” と確認するようにツィ・・と軽く顔を傾ける。


ほらね、興味なし!


俺はそんなレオンにニッコリと微笑みかけた後、オドオドと気遣うような視線でレオンを見つめる皆様に対し頷きながら答えた。


「 うん!分かったよ!

じゃあレオンは別のところに暮らしてもらうね。

気を使ってくれてどうもありがとう。 」


そしてペコ~と頭を下げると、ジェニファーちゃんも他の人達も安心した様子でホッと息を吐く。


人間関係とは短期決戦ではなく長期戦・・かつ終わりの見えない耐久戦でもある。


今はまだ勝負の時ではない!


今後のレオンの将来を見据え、ゴオォォォーー!!と1人燃えているとソフィアちゃんが酷く申し訳無さそうに「 お力になれず・・ 」と謝ってきたので、「 こちらこそ色々ありがと~。 」と返す。


状況的にソフィアちゃんはレオンの入寮を推してくれてたんだろうと思われる。


それにおじさんは更に感謝感激。


きっと自分も怖いだろうに、なんとも勇ましいお嬢さんだとお互いペコペコとしていたところに、ススっ・・と近づいてきたのはアゼリアちゃんだ。

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