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第八章

368 国を見守る人々

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( ??? )





「 それでは、第二騎士団についてはこれで終わりにするが、此度のことについてそなた達からも話を聞きたい。


何か申すことはあるか?


【 傭兵ギルド総長 】の< オリビア >、


そして【 諜報ギルド総長 】の< エルビス >よ。  」



王の言葉に跪き下げていた頭を最初に上げたのは、傭兵ギルド総長の< オリビア >だ。




年は40前半~後半、スッと切れ長の目と黄金色に輝く瞳はまるでドラゴンを想像させる女性。

長い灰色のサラサラの髪を下で1つに結び、スレンダーな体格に女性にしては高い身長から、『 麗人 』といった表現が思い浮かぶが鼻を横切る痛々しい傷によりそのイメージは吹き飛ぶ。


彼女は一片の隙もないキリッとした目を王に向け発言した。



「 はっ!

我々傭兵ギルドでは現在調査中ではありますが、そのような報告も依頼も上がっておりません。


しかしその事件に関与したAランク傭兵はいずれも看過できない犯罪行為を繰り返しており、粛清対象になっていた者達でした。



更にSランク傭兵 ” 神の戯れ ” に対しても以前より見過ごせぬ行動が多く最重要観察対象でありましたが、実力が高すぎて追いきれない事

・・・そして彼らを庇い立てする者達が複数いると思われる故、野放しになっていた連中でした。 」




オリビアはギロリと恐ろしいまでの殺気を滲ませ周囲を見回し、最後はカールを睨みつけたが、

青ざめて目を逸らす周囲とは正反対にカールはニコニコと笑みを浮かべながらそれを平然と受け止めている。


ニコラ王はその周囲の反応にサッと目を走らせた後、まだ頭を下げたままのオリビアの隣にいる男へと声を掛ける。



「 ・・・だそうだが、諜報ギルド総長である< エルビス >はこの件をどうみる?

何か情報は入ってきているか? 」




「 はっ・・はヒィィーー~!!! 」



ニコラ王の言葉にビクビクッ!!!と体全体を震わせ、緊張のせいか言葉を噛んでしまったエルビスに馬鹿にしたような嘲笑が広がった。



年は40~50くらい、茶色いボサボサのざっくばらんに切られた髪に緑色の瞳、

一度見たくらいでは覚えられぬような薄~いぼやけた印象を相手に抱かせる男性。


唯一のトレードマークはメガネで、やたら印象に残る太い縁で囲まれた大きなメガネを掛けているため、彼という人間の印象はそのメガネによって奪われてしまっている。



エルビスは汗をダラダラと流しながら、早口で王に向かって話し始める。



「 オリビアさんの言う通り、その依頼自体が傭兵ギルドを通しておりませんでした!


恐らくは傭兵ギルドの派生< 暗殺ギルド >へ直接持ち込まれた依頼であると思われます~。

そうなると明らかな違反行為ですので、お話を聞きに直ぐに< 暗殺ギルド >の方へと向かったのですが・・・既にものけの殻でした。


そして、現在暗殺ギルド総長の< ルノマンド >と、

元諜報員であった< レイナ >が共に姿を消しております。


この両名が何かを知っているのは間違いないかと・・・ 」



傭兵ギルドの派生< 暗殺ギルド >は秘密が多い組織ではあるが、いくつか守らなければならない法律が存在していて、その1つが、


『 依頼を受ける際は傭兵ギルドを通す事 』である。




それが守られていない時点で罪に問う事が出来るため、それを受けたであろう< ルノマンド >はこれより犯罪者として追われる立場となった。



エルビスの報告によりまたざわめき出した周囲を、ニコラ王は片手を上げて制し再度周りを見渡した後、静かに告げる。



「 そうか。

それでは各機関、今後も引き続きの調査ならびに ” 元 ” 暗殺ギルド総長の< ルノマンド >を見かけ次第、その身柄の拘束を命じる。


更に何か情報を握っていると思われる元諜報員の< レイナ >も同様に捕らえよ。


何と言ってもこの国の公爵家の子息の命を狙ったのだ。

絶対に逃がすわけにはいかぬ。


・・・なぁ?カールよ。 」



スッと向けられた底冷えするようなニコラ王の視線を受けたカールは、ニコッと天使の様な笑みを浮かべ

「 その通りでございます!! 」と力強く答えたが、笑っているのは目だけ。

明らかに口元は引きつっている様子であった。



そして王がその場を後にすると、それに引き続き笑みを貼り付けたままのカールが、

そしてドノバンとユーリスを殺す勢いで睨みつけるエドワードが退場すると、残った貴族達は途端に口元を隠しながら口々に囁き合う。


” カール様のご子息リーフ様とは?誰かご存知? "


” いいえ、確か3人お子がいたはずですがその中にその様な名はなかったはず・・

毎夜開かれるパーティーでも見たことないですわね ”


” 確かお体が弱くて静養中のご子息がいるという噂は聞きましたが・・

なぜそんなご子息を暗殺するのでしょうね? ”


” これはこれは・・。少し調べてみたら面白いモノが出てくるかもしれませんね。 ”




ヒソヒソと話しながら貴族たちはその場を去って行き、残されたのはドノバンとユーリス、そしてその囁かれる話に入らなかった一部の者達であった。


ユーリスは肩を震わせ視線を下に向けたまま立ち上がると、勢いよく顔を上げ、あっはっはっー!と大きく笑い始めた。


「 あのカール様とエドワード様の顔見ました?

いや~、痛快でしたね!


これで今後は仕事が随分と楽になりますよ。


後ろであーだこーだと頓珍漢な指示を飛ばし、それが上手く行かないと戦闘中でも怒鳴りだす。

更に上層部へ嘘の報告、ウキウキとミスを指摘したがる上層部に呼ばれて・・・という無駄でクソみたいな時間の消費を防げますね。


予算も増えるし、物資も全額カール様持ちで購入できるなんて、隊員たちには特別ボーナスも出せるし給料UP・・・

それにーーーー 」


ブツブツとつぶやきながら、今後の第二騎士団の運営について次々と計画していくユーリスに、「 お~良かったな~ 」と言いながら大あくびするドノバン。


そしてそんなドノバンの背中をバシッと強めに叩いたのは傭兵ギルド総長の< オリビア >だ。



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