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第八章

367 エドワード

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( ??? )

「 二人共、私の愛しィィーー・・・い息子を救ってくれて心から感謝している。

そのお礼として私の方からは、第二騎士団の今年度からの予算倍増と個人資産からは物資や必要施設の改装費を全て出させて頂きたい。


ーーーー・・・・これからも我が息子のことをどうかよろしく頼む。  」


「「 ーーはっ!! 」」


ドノバンとユーリスが頭を下げ意気揚々とそれに答えると、ニコラ王は満足気に微笑みながらカールに続いて口を開く。


「 ふむ。第二騎士団の働きは実に素晴らしいな。

此度の事といい団長が不在の中、王都を襲い来るAランクモンスターの大群も犠牲者なしで撃退出来たのは第二騎士団の働きによるものが大きい。

その働きを称し、今後モンスター討伐ならびに全戦闘下の際の指揮権は第一騎士団から第二騎士団へと移そう。


更に国境付近での防衛の際も同様に第二騎士団に任せる事にする。 」


その決定を宣言した途端ーー

更に周囲のざわめきは大きくなり殆どの貴族たちは物言いたげな視線を王へと送った。

勿論隣に立つカールも目を見開き王へ視線を送る。


王の決定は、身分に絶対的な価値観を置いている第一騎士団にとって戦闘に参加する権利全てを奪うモノであった。


” 自身より下の身分の者たちの烏合の衆 ” 

そう見下している第二騎士団の指示に従うなどそんな事は絶対に出来ない。

しかし、その指示に従わなければ法律に基づき裁きを受ける事になってしまう。


そんなジレンマを抱えながら戦うことなど出来るはずもなく、殆どの騎士たちが戦闘の不参加を選ぶはず。

つまりこれより先の戦場は、第二騎士団の独壇場となる事が今この場で決定したのだった。


しかしーーーーーー



「 お待ち下さい!!! 」



大声でそれに待ったをかけた人物がいた。


輝く様な見事な金色の短髪と透き通った蒼い瞳。

整った顔たちはニコラ王のそれとよく似ているが、王のような穏やかな雰囲気は一切なく、ピリッと相手を萎縮させる攻撃的なオーラが漂う。

圧倒的とも言える存在感に、思わずひれ伏したくなるような雰囲気。

体格はご立派で戦闘職であるといっても違和感はなく、その上凛とした立ち振舞とその堂々たる態度は、まさしく王と言っても違和感はない。


人に恐怖を与えるような鋭い眼光をギラギラと怒りで輝かせながら王を睨みつけている、年は30代前後くらいに見える男性こそーーー


アルバード王国 第一王子


< エドワード・ドン・アルバード >


エドワードの資質は【 指揮者 】


非常に珍しい上級戦闘系資質であり、まさに人の上に立つ才能を持って生まれてきたエドワードは、現在殆どの貴族たちを味方につけ他の派閥を押さえつけながら虎視眈々と王の座を狙っている。


周りが萎縮するほど鋭い眼光を向けられているにも関わらずニコラ王はそれを平然と受け止め、寧ろ真っ向から受けて立つというくらいの勢いでエドワードをギロリと睨み返した。


「 ・・・私の決定に不服があるのか?

第二騎士団の活躍は目覚ましい。

私は王としてそれに見合った褒美を与えねばならん。


それを踏まえた上で申してみよ。 」


ニコラ王が有無を言わさぬ強い眼差しでエドワードにそう伝えると、エドワードはそれに一瞬動揺するも、直ぐにそれに反撃し始める。


「 ・・では、失礼ながら申し上げます。

第二騎士団は、元々実力だけを重視した非常に野蛮で礼儀に欠けた集団でございます。

戦闘時にもそれが遺憾なく発揮され、その傍若無人な態度により国に対する国民達の不信感、ひいては気品に掛ける態度により他国へのイメージも悪くなる恐れが・・・ 」


「 ーーほぅ?

第二騎士団に対する称賛はあれど不満など少なくとも私の耳には入ってきたことなどないがな。

寧ろ国民達からは、その高い実力と迅速な対応はまるで ” 英雄 ” の様であると称える者達もいるくらいだ。

他国からの評価も高く他種族との共同戦線も問題なく行われている。


ーーエドワードよ、お前の目には何が写っているのだ?

王族ならば広い視野をもって物事を見渡せなければ、そんなものただのお飾りの地位でしかないぞ。 」


「 ・・・っなっ!!! 」


プライドを傷つけられる様な強い言い方に、エドワードは顔を歪ませ王を睨みつける。


ピリピリと痛いくらいの空気の中、それを破ったのはパチパチという小さな拍手の音であった。


「 なるほど!さすがは偉大なるニコラ王!

野蛮なモンスター相手には野蛮な第二騎士団をと、そういうご配慮なのですね!

確かにそんな汚れ仕事は第二騎士団にお任せして、崇高なる第一騎士団は引き続き高貴な王族や貴族達のために栄誉あるお仕事をして頂きましょう! 」


美しい顔に完璧な笑みを浮かべ、拍手をしながらそう発言するのはカールであった。

その内容にエドワードは、プッ・・と小さく吹き出し、周りにいたエドワード派閥に加担する者達も同様にクスクスと忍び笑いを漏らす。


そんな嘲笑に晒されながらその中心にいるドノバンは、平然とした様子でニヤニヤ~と笑うと、スッと周りに対しお辞儀をした。


「 その通りでございますぅ~!

皆様どうぞ最新鋭の魔導飛行艇にでも乗ったつもりでお任せ下さい~。

何と言っても第二騎士団の売りは『 震えて戦えぬ弱者をどの様な身分でも助ける 』!!ことですから~。

安全な後方で我々の活躍をどうかどうか~震えながら見ていて下さいませ~。 」


「「 ・・・・!!!! 」」


ニコリとした笑顔はまたしても一瞬剥がれ憎々しげな目を向けるカールと、隠そうともしない憎悪を向けて睨みつけてくるエドワードや他の高位貴族達。

その視線を受けながら、ドノバンは「 お~怖ぁ~! 」とからかうようにブルブルと体を震わせるパフォーマンスを見せる。


それに対し、またピリッとした空気が漂ったが、今度はニコラ王のゴホンっという咳払いの音で中断させられた。


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