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第八章
366 王と報告
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( ??? )
【 謁見の間 】
それはアルバート王国現国王と直接お目通りできる場所である。
そのため国に関する大事や緊急の報告などがある場合、大抵はここで各所関係者や有権者達を集めその報告や決定を下すことになっている。
そして今まさにその謁見の間にそれぞれの関係者達や各有権者達が一斉に集まっていた。
大勢の者達がズラリと並んでいる中ーーー王座に座っている1人の人物が集まった者達へ視線を走らせた後、静かに話し出す。
「 皆の者、ご苦労であった。
此度はある重大な事件が発生したため急遽皆に集まってもらった。
元第二騎士団団長であるドノバン、そして現第二騎士団副団長ユーリスよ。
先の報告に間違いはないか? 」
輝くような金色の長い髪、透き通った蒼瞳に整った顔立ち。
威厳が漂っているにも関わらず柔らかく穏やかな雰囲気を醸し出す、実年齢の50を超えるようには見えぬ男性。
アルバード王国 現国王
< ニコラ・ゼン・アルバード >
彼の資質は【 博愛者 】
争いを好まず平和を愛する彼はそれに相応しい政策を行い、更にはそれを害する ” 悪 ”に対しては徹底した断罪を行う事で有名な人物であった。
そんな彼により、四カ国同盟は今日の今日までなんの問題もなく持続している。
ニコラ王の前に跪いているドノバンとユーリス。
二人はニコラ王の問いかけに対しスッと顔を上げると、一斉に自分たちに対し様々な思いを持って見つめる沢山の目の存在を感じながら、しっかりとした口調で報告をした。
「 はい。間違いございません。
私とドノバン殿は、元諜報員であったカルパス殿からその情報を伝電鳥を通じて受け取りました。
『 公爵家メルンブルク家の次男であるリーフ様を暗殺しようとする者達がグリモアへ向かった 』ーーーと。 」
ユーリスがそう告げた瞬間、ざわっと周りがざわつき出す。
そして同時に嬉しそうに口元を歪め二人を見つめるのは、王の隣に控える眼を見張るほどの美しい男性
< カール・アドケイド・メルンブルク >
歓喜とも言えるその笑みに気づいたのは一部の者達だけ。
カールは直ぐにそれを完璧に自身の悲しげな顔の下に隠すと、さも嘆かわしい!と言わんばかりに腕を大きく広げ、まるで劇場で演技をする役者の様なパフォーマンスを見せながらドノバンとユーリスに言った。
「 あぁ!!なんということだ!
我が愛しの息子がそんな恐ろしい目に合っただなんて!
ではーーー息子は・・・・もう・・
ーーーーくっ!!なんて非道な事を!
こんな事・・断じて許されるべきではない!!! 」
白々しい演技がかったその動きにドノバンはこみ上げる笑いを必死に隠す為視線を下に、そしてユーリスは笑顔を貼り付けながらそのまま報告を続ける。
「 ・・報告を受けた我々は、王都に襲いかかるAランクモンスター< グレイド・ワイバーン >を討伐した後、至急ドノバン殿とグリモアへと向かいました。
そしてその道中にてSランク傭兵パーティ ” 神の戯れ ” と他Aランク傭兵約60名に遭遇。
そのまま戦闘になりました。 」
Sランク傭兵パーティ ” 神の戯れ ”
その名に周りの貴族たちはどよめき、動揺を隠しきれない様子を見せる。
Sランク傭兵はその高い実力から、特に薄暗い事情を持つ貴族にとっては関わりが非常に深い存在・・
しかもその中でもトップクラスのパーティー ” 神の戯れ ” と言えば大抵の高位貴族たちは関わりを持っていた。
そのため、その薄暗い何かが露見されるのでは?と心の中で汗を掻いている者達も多くこの場にいる様子が見てとれる。
「 そうか・・。それはどこぞの者が依頼者であったのだろうな?
それほどの戦力を雇うとなると相当な財力が必要だろう。
ーーーそうは思わないか?カール。 」
ニコラ王は隣に立つカールへ、スッ・・と冷たい視線を投げかけると、カールは片手で顔を覆い全身で悲しみを表現しながら、はぁ・・と息を吐く。
「 えぇ!その通りです!本当に一体誰がそのような残酷な事を!!
ーーーーしかし御安心を。
実は以前より我がメルンブルク家に恨みを持つ、十分な資金を持った怪しい貴族の家がございますので、その家をこれから徹底的に調べ上げましょう。
必ずや証拠を見つけ出し、我が愛しの息子に手をかけた憎き犯人共は一族極刑に・・・・ 」
「 そして激戦の末、そのSランク傭兵 ” 神の戯れ ” ならびにAランク傭兵達60名は全員始末いたしました。
勿論カール様のご子息、リーフ様は無事でございます。 」
「 ーーーーーーーーーはっ・・・? 」
一瞬仮面が崩れそうになったカールであったが慌ててそれを被り直し、穏やかな笑みを浮かべたままゆっくりとその報告をしたユーリスに話しかけた。
「 ・・・・・神の戯れとAランク傭兵を全員・・?
・・
・・・アレは無事なの・・か? 」
「 はい~。無事でございますぅ~。
今頃はレガーノの家に帰ってゆった~りとお茶でもしているのではないでしょうか~? 」
辛抱たまらん!と言わんばかりに体を細かく震わせ、更に三日月の様に目を細めたドノバンがそう答えると、ニコラ王はフッと笑みを溢す。
「 そうか!それは大義であったな!ドノバン!ユーリスよ!
カール、お前の息子は無事であったらしい。
良かったではないか。両名にお前の方からも報奨を与えんとな。 」
王の提案にニッコリ笑顔を貼り付けたカールは、そのままゆっくりと視線をドノバンとユーリスに向けた。
こめかみはピクリピクリと蠢いている。
【 謁見の間 】
それはアルバート王国現国王と直接お目通りできる場所である。
そのため国に関する大事や緊急の報告などがある場合、大抵はここで各所関係者や有権者達を集めその報告や決定を下すことになっている。
そして今まさにその謁見の間にそれぞれの関係者達や各有権者達が一斉に集まっていた。
大勢の者達がズラリと並んでいる中ーーー王座に座っている1人の人物が集まった者達へ視線を走らせた後、静かに話し出す。
「 皆の者、ご苦労であった。
此度はある重大な事件が発生したため急遽皆に集まってもらった。
元第二騎士団団長であるドノバン、そして現第二騎士団副団長ユーリスよ。
先の報告に間違いはないか? 」
輝くような金色の長い髪、透き通った蒼瞳に整った顔立ち。
威厳が漂っているにも関わらず柔らかく穏やかな雰囲気を醸し出す、実年齢の50を超えるようには見えぬ男性。
アルバード王国 現国王
< ニコラ・ゼン・アルバード >
彼の資質は【 博愛者 】
争いを好まず平和を愛する彼はそれに相応しい政策を行い、更にはそれを害する ” 悪 ”に対しては徹底した断罪を行う事で有名な人物であった。
そんな彼により、四カ国同盟は今日の今日までなんの問題もなく持続している。
ニコラ王の前に跪いているドノバンとユーリス。
二人はニコラ王の問いかけに対しスッと顔を上げると、一斉に自分たちに対し様々な思いを持って見つめる沢山の目の存在を感じながら、しっかりとした口調で報告をした。
「 はい。間違いございません。
私とドノバン殿は、元諜報員であったカルパス殿からその情報を伝電鳥を通じて受け取りました。
『 公爵家メルンブルク家の次男であるリーフ様を暗殺しようとする者達がグリモアへ向かった 』ーーーと。 」
ユーリスがそう告げた瞬間、ざわっと周りがざわつき出す。
そして同時に嬉しそうに口元を歪め二人を見つめるのは、王の隣に控える眼を見張るほどの美しい男性
< カール・アドケイド・メルンブルク >
歓喜とも言えるその笑みに気づいたのは一部の者達だけ。
カールは直ぐにそれを完璧に自身の悲しげな顔の下に隠すと、さも嘆かわしい!と言わんばかりに腕を大きく広げ、まるで劇場で演技をする役者の様なパフォーマンスを見せながらドノバンとユーリスに言った。
「 あぁ!!なんということだ!
我が愛しの息子がそんな恐ろしい目に合っただなんて!
ではーーー息子は・・・・もう・・
ーーーーくっ!!なんて非道な事を!
こんな事・・断じて許されるべきではない!!! 」
白々しい演技がかったその動きにドノバンはこみ上げる笑いを必死に隠す為視線を下に、そしてユーリスは笑顔を貼り付けながらそのまま報告を続ける。
「 ・・報告を受けた我々は、王都に襲いかかるAランクモンスター< グレイド・ワイバーン >を討伐した後、至急ドノバン殿とグリモアへと向かいました。
そしてその道中にてSランク傭兵パーティ ” 神の戯れ ” と他Aランク傭兵約60名に遭遇。
そのまま戦闘になりました。 」
Sランク傭兵パーティ ” 神の戯れ ”
その名に周りの貴族たちはどよめき、動揺を隠しきれない様子を見せる。
Sランク傭兵はその高い実力から、特に薄暗い事情を持つ貴族にとっては関わりが非常に深い存在・・
しかもその中でもトップクラスのパーティー ” 神の戯れ ” と言えば大抵の高位貴族たちは関わりを持っていた。
そのため、その薄暗い何かが露見されるのでは?と心の中で汗を掻いている者達も多くこの場にいる様子が見てとれる。
「 そうか・・。それはどこぞの者が依頼者であったのだろうな?
それほどの戦力を雇うとなると相当な財力が必要だろう。
ーーーそうは思わないか?カール。 」
ニコラ王は隣に立つカールへ、スッ・・と冷たい視線を投げかけると、カールは片手で顔を覆い全身で悲しみを表現しながら、はぁ・・と息を吐く。
「 えぇ!その通りです!本当に一体誰がそのような残酷な事を!!
ーーーーしかし御安心を。
実は以前より我がメルンブルク家に恨みを持つ、十分な資金を持った怪しい貴族の家がございますので、その家をこれから徹底的に調べ上げましょう。
必ずや証拠を見つけ出し、我が愛しの息子に手をかけた憎き犯人共は一族極刑に・・・・ 」
「 そして激戦の末、そのSランク傭兵 ” 神の戯れ ” ならびにAランク傭兵達60名は全員始末いたしました。
勿論カール様のご子息、リーフ様は無事でございます。 」
「 ーーーーーーーーーはっ・・・? 」
一瞬仮面が崩れそうになったカールであったが慌ててそれを被り直し、穏やかな笑みを浮かべたままゆっくりとその報告をしたユーリスに話しかけた。
「 ・・・・・神の戯れとAランク傭兵を全員・・?
・・
・・・アレは無事なの・・か? 」
「 はい~。無事でございますぅ~。
今頃はレガーノの家に帰ってゆった~りとお茶でもしているのではないでしょうか~? 」
辛抱たまらん!と言わんばかりに体を細かく震わせ、更に三日月の様に目を細めたドノバンがそう答えると、ニコラ王はフッと笑みを溢す。
「 そうか!それは大義であったな!ドノバン!ユーリスよ!
カール、お前の息子は無事であったらしい。
良かったではないか。両名にお前の方からも報奨を与えんとな。 」
王の提案にニッコリ笑顔を貼り付けたカールは、そのままゆっくりと視線をドノバンとユーリスに向けた。
こめかみはピクリピクリと蠢いている。
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