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第八章

358 欲張っていこう

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( リーフ )


これは100%昨日の性的イタズラ事件のせい


疑惑が確信へと変わりあまりの衝撃に動けずにいると、レオンはいそいそとご機嫌な様子で両手を俺の腰に回しぬいぐるみ抱っこをしてくる。


その姿はまるで雷を怖がる女児の様で・・なんとも言えぬ気持ちになった俺が体をひねってレオンをギュッと抱きしめれば、酷く幸せそうな笑みを浮かべレオンは俺を見つめた。



新たな力の代償が、変質者からの性的な強制行為

しかもこんなに沢山のスキルを一晩で覚えたとなれば相当な精神的負荷を負ったと思われる。



俺はレオンの真っ黒な瞳を見つめながら、さわさわと左目を触った。

レオンの心の状態は凄くまずいことになっているに違いないが、とにかく今は左目が無事な事を喜ぼう。


それだけが唯一の救いと思いながらそのまま左目を撫で続けていると、レオンが急にその手を掴み少しだけ悲しそうな表情を見せる。


「 ・・俺の目、どう思いますか? 」


いつもの様に突然の謎の質問に一瞬ハテナが飛んだが、恐らくはこの世界ではレオンしかもっていない ” 黒い瞳 ” について質問しているようだと気づき ” ほほぉ~? ” と感心するかの様な声を出した。


若い時は周りとの差異を気にしがち~正常、正常~。

レオン少年も漏れなくそれに該当している様だ。


「 そうだね~。おやすみの色じゃないかな?

レオンの目を見ると眠くなるしね。 」


黒くてまん丸、キラキラパッチリ~なレオンの目は、覗き込むと90%くらいの確率で眠くなる。

多分5円玉に糸をつけて揺らす動きを真似してくれれば、更にそれが100%になるな~と実は常々思っていた。


こんな感じぃ~?


その場でユラユラと自分の顔を横に揺らしていると、レオンは更に続けて言った。



「 ・・夜の色って事ですよね?皆きっと夜は嫌いです。

世界中の人々はずっと光が差す世界を望んでいるでしょう? 」


「 えぇ?そうなのかい?


ーーーう~ん……でもさ、俺、一日中明るいと熟睡できないよ。

皆明るくてもぐっすり眠れるのかな? 」



頭の中では俺が枕を持って「 レオン、眠れな~い。ちょっと光、消して~ 」と、まるで電気を消してと頼むノリでお願いしている姿が浮かびあがる。

更に更に~光がなくなったことで体内時計が狂って朝起きれず、カルパスに怒られる自分の姿。

光が差さない洞窟に生きる生き物の様に全身真っ白けっけになってしまった自分の姿を続けて妄想してプププーーーッと笑っていると、レオンが握っていた俺の手を引っ張ってきたため、特に抵抗せずレオンの腕の中に囲い込まれてしまった。


「 リーフ様は、夜も・・必要って言ってくれるんですね。 」


そんな異次元会話も慣れたもの、俺は大きく頷いて言った。


「 うむ!当たり前だよ、レオン君。

それこそ ” 貰えるものは貰っておこう! ” 精神だよ。


朝だけ、昼だけ、夜だけ・・・そんなもったいない事を望むようではダメだね。


全部あるのが一番、あったほうが楽しい!


俺はお肉も魚も野菜も大好き!人生は欲張っていくべきだよ。 」



するとレオンの真っ黒な目はキラキラと輝き、嬉しそうに「 そうですね。 」ととても良い返事を返してきた。



そうそう、子供の内は欲張っていこう!

どうせ年をとったら何も手に入らなくなってくるからさ。身体的に!



調子にのって沢山肉を食べた次の日の胃もたれを思い出しながら、しんみりした気持ちになっていると、

早熟気味のモルトとニールが、” はいはい、分かった分かった。 ” とまるで聞き流すように頷いた。


素直なレオンに比べ、どうも二人はちょっと人生諦めガチ・・


それに嘆かわしさを感じヤレヤレとため息をついているとレオンがまたギュギュ~と強く抱きしめてきて、更に頭に顔をつけスリスリまでしてきたので少々驚いたがーーーー

次の瞬間もしかして・・と俺はある可能性に気づいた。


昨日の恐ろしい事件は ” 夜 ” 真っ暗な森の中で行われた。


その状況を考えると、つまりレオンのこの奇妙奇天烈な質問はーーー


” 夜 = 変質者達 ”


” だから皆夜が嫌い = 変質者嫌いでしょ? ”



ーーーーと、そういう意味だったかっ!!!



とんだとばっちりでレオンに嫌われてしまった "   夜   "  に対し憐憫の気持ちが湧かない事もないが、それどころではない巨大な怒りがボボボっ!!と体中から溢れ出した。


うちの子にいたずらした変態集団、絶対に許すまじ!!

子供にそんな事をする者達に生きる価値なし!この雷ジジィがチン切り極刑にしてくれるわ!!!



激おこを通り越して大噴火の俺はレオンの腕の中からスッ・・と抜け出し立ち上がると、しっかり腰ベルトに2本の中剣を装備。

そしてフンフンッ!!とエア素振りを数回繰り出し自身のコンディションを確認。


「 さぁ!!守備隊本部に行こう!!

戦いになるかもしれないから気合を入れていこう! 」


準備を終えていたモルト、ニール、何故か凄いご機嫌なレオンに向かってそう言いながら、勢いよく扉を開けた。



するとーーーー


ドゴンッ!!!!


物凄い大きな音を立てて何かとぶつかってしまった。



「 ????あ、あれ??? 」



何だ何だ???!!と驚き、直ぐにぶつかった何かに視線を向けると、そこには顔を両手で押さえながらその場にうずくまる紫のモジャモジャが。


「 ドノバンじゃないか!!

久しぶりだね~。ーーーじゃなかった!!ごめん、大丈夫かい? 」


オロオロしながら俺は腰ポーチから回復効果のある薬草を取り出すと、うずくまるドノバンの頭にそれをちょこんと乗せる。


するとドノバンはスッと立ち上がり、その薬草を手にとってそのまま顔にそれを揉み込んだ。


「 いってぇ~・・、お前何で、そんなに急いで出てくんだ。全くよぉ~・・


ーーおー久しぶりだな。

ちょっと近くに用事があってな、ついでに愛弟子達の様子を見に来たんだ。 」


ドノバンのお心使いに、そうなのか~と嬉しくて心がほっこり。


そしてモルトとニールがドノバンに挨拶するのを見ていると、ふっとドノバンの後ろに見たことのない20代前半くらいの爽やかイケメンさんがいる事に気づく。


するとその視線に気づいたのか、ドノバンは俺達にその青年の紹介をし始めた。



「 こいつは元部下の< ユーリス >

今は第二騎士団の副団長を務めている。


ちょ~っと生意気だが実力は確かな奴だから困った時は頼りにしていいぞ~。 」



「 俺はキチンと尊敬できる先輩にしか敬意を持って接しませんので。

おはようございます、リーフ様、そしてご友人の皆様。


第二騎士団副団長、< ユーリス >と申します。


以後お見知りおきを。 」



現役騎士様!しかも現第二騎士団副団長という物凄い人が目の前に!


その事実に俺とモルトとニールのテンションはマックス。


おおおおーーー!!!と感動しながら「「「 よろしくお願いしまーす! 」」」と返せば、ユーリスさんはニッコリ、レオンはむっつり。


挨拶、挨拶~とレオンの頭を無理やり下げようと頭に手を伸ばそうとした瞬間、守備隊に向かおうとしていた理由を思い出し、はっ!!とする。


第二騎士団、元団長と現副団長!これほど報告するべき相手はいない!!



「 ドノバン!ユーリスさん!!急いで報告したいことがあるんだ!

ちょっと聞いてくれるかい? 」



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