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第七章
344 ぐるぐる
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( バルザーク )
「 やばい、やばい、やばいやばいやばいやばい…………っ!! 」
まるで壊れたおもちゃのようにそう言い続けるルッツに、俺もプラムも何一つ言うことができない。
俺達も心の中で同じことを思っているからだ。
ルーナがやられている隙にとにかく遠くへ────!
それだけを考え、情けなくも震える足を懸命に動かし俺達は森を走っていく。
「 あ……あんな化け物に敵うわけねぇじゃねぇか。
なんであんな奴が大人しく奴隷なんてやってんだよっ!! 」
「 ど……どうしよう……どうしたらいいの……?
いっ……一度戻ってもっと戦力を集めないと……そうしないとあんなのに敵いっこないわ!! 」
はぁはぁと息を乱しながら、ルッツとプラムがそう言うと、俺もそれに大きく頷いた。
・・
「 アレは私達だけでどうにか出来るものではない。
一度戻って報告するぞ。
恐らくは何か特別なスキルを持った戦闘系資質なのだろうが、とにかく情報が全く足りん。
まずはそれからだ。 」
ルッツとプラムは神妙な顔で頷くと、俺達はひたすら最大スピードで森の中を走り続ける。
しかし────……その途中、違和感に気づいた
走っても走っても森の景色が全く変わらない。
二人もそれに気づき怪訝な顔をしたが、恐怖から誰一人その違和感を口に出さず、足を止めることもできず、一体どのくらいの時間が経ったか……。
10分か……もしかしたら30分くらいは経っていたかもしれない。
時間の感覚が分からなくなってきた私達だったが、やっと足を止めた。
────いや……止まるしかなかったとでもいうべきか……。
走り続けてたどり着いた先、そこには────……。
俺達に背を向けボンヤリと立っている化け物と、バラバラになっているルーナ " だった " モノの姿があったからだ。
立ち尽くす俺達の前に広がるありえない光景に絶句した。
確かに俺達は奴に背を向け走り続けていたはずなのに、なぜ前方に奴がいるのか?
────バクンッ……バクンッ……。
大きく鳴り続ける心臓の音だけが聞こえる中、化け物の足元に散らばるルーナ ” だった ” モノ達に目を向けると、復活する兆しが見えない事から< 仮想幻石 >の効果は切れているらしい事が分かった。
つまりルーナは10回死を迎えたと言うこと。
そしてやはり俺達は何らかのスキルによって、森の中をループしていただけであったと完全に理解したのだった。
その事実が突きつけられ、プラムはヘナヘナ……とその場でへたり込み、ルッツは震えながら立ち尽くす。
いつから?
……いや、もしかしたら最初からだったのかもしれない。
そもそもこれだけ派手にスキルを使っているのに、街のどの戦闘系機関も偵察の1つもよこさないのはどう考えてもおかしい。
俺は震える声でヤツの背中に向かい話しかけた。
「 ……なぜ我々はループしているのだ……?
そして何故街の誰一人としてこの騒ぎに気づかない……? 」
そう問いかけた後、化け物はゆっくりとコチラを振り向きその恐ろしい『 空っぽの瞳 』を俺達に向けると、何故分からないのか?と言わんばかりの表情でそれに答える。
「 空間が繋がってないからに決まっているだろう?
騒ぎになればリーフ様は安心してお休みできない。
それを守る事が最優先事項だ。 」
< 英雄の資質 >(???スキル)
< 無限迷子( ??? ) >
どのような場所であろうともどこでも巨大迷路を出現させ空間軸を新しく創り出す空間系EXスキル。
迷路は無限に大きく、更に増やす事ができ、また迷路の世界を自由に創り出す事ができるため一度入ってしまえば元の空間軸には戻れない。
空間が繋がっていない??
その言葉から、どうしてループしているのか、誰一人として騒ぎに気づかないのかがようやく分かった。
ここはヤツのテリトリー。
俺達はヤツの承認なしでココから出ることが出来ない!
呆然と立ち尽くしている私達をよそに、化け物はゆったりとした動きで手に持つ血のついたレイピアに洗浄魔法を掛けている。
へたり込んでしまったプラム、そして震えたまま立ち尽くすルッツからは絕望感が漂う中、俺だけは必死に考えを巡らせていた。
奴が先ほどから言っている言葉を理解することは難しいが、とりあえずその ” リーフ様 ” とやらに絶対的な忠誠心を持っている事は確かな様だ。
しかしこんな出鱈目な力を持っているのに、なぜ公爵家とはいえ排除された存在に従っているのだろうか……?
「 きっ……貴殿は知っているのかな?
リーフ様が……家族であるメルンブルク家に……捨てられた存在だと……いうことを……。 」
化け物の様子を慎重に伺いながらそう言うと、化け物はキョトンとした顔をした後……嬉しそうに、ニヤッ……と笑った。
「 あぁ。知っている。
……本当に良かった。家族が……いなくて。 」
良かった???
なぜ ” 良かった ” なのか一瞬分からなかったが、そこで俺ははっと気づいた。
もしかして化け物は ” リーフ様 ” を本当は心の底では憎んでいて、だから捨てられている現状に胸がすく思いであると、そういう事なのではないだろうか……?
「 やばい、やばい、やばいやばいやばいやばい…………っ!! 」
まるで壊れたおもちゃのようにそう言い続けるルッツに、俺もプラムも何一つ言うことができない。
俺達も心の中で同じことを思っているからだ。
ルーナがやられている隙にとにかく遠くへ────!
それだけを考え、情けなくも震える足を懸命に動かし俺達は森を走っていく。
「 あ……あんな化け物に敵うわけねぇじゃねぇか。
なんであんな奴が大人しく奴隷なんてやってんだよっ!! 」
「 ど……どうしよう……どうしたらいいの……?
いっ……一度戻ってもっと戦力を集めないと……そうしないとあんなのに敵いっこないわ!! 」
はぁはぁと息を乱しながら、ルッツとプラムがそう言うと、俺もそれに大きく頷いた。
・・
「 アレは私達だけでどうにか出来るものではない。
一度戻って報告するぞ。
恐らくは何か特別なスキルを持った戦闘系資質なのだろうが、とにかく情報が全く足りん。
まずはそれからだ。 」
ルッツとプラムは神妙な顔で頷くと、俺達はひたすら最大スピードで森の中を走り続ける。
しかし────……その途中、違和感に気づいた
走っても走っても森の景色が全く変わらない。
二人もそれに気づき怪訝な顔をしたが、恐怖から誰一人その違和感を口に出さず、足を止めることもできず、一体どのくらいの時間が経ったか……。
10分か……もしかしたら30分くらいは経っていたかもしれない。
時間の感覚が分からなくなってきた私達だったが、やっと足を止めた。
────いや……止まるしかなかったとでもいうべきか……。
走り続けてたどり着いた先、そこには────……。
俺達に背を向けボンヤリと立っている化け物と、バラバラになっているルーナ " だった " モノの姿があったからだ。
立ち尽くす俺達の前に広がるありえない光景に絶句した。
確かに俺達は奴に背を向け走り続けていたはずなのに、なぜ前方に奴がいるのか?
────バクンッ……バクンッ……。
大きく鳴り続ける心臓の音だけが聞こえる中、化け物の足元に散らばるルーナ ” だった ” モノ達に目を向けると、復活する兆しが見えない事から< 仮想幻石 >の効果は切れているらしい事が分かった。
つまりルーナは10回死を迎えたと言うこと。
そしてやはり俺達は何らかのスキルによって、森の中をループしていただけであったと完全に理解したのだった。
その事実が突きつけられ、プラムはヘナヘナ……とその場でへたり込み、ルッツは震えながら立ち尽くす。
いつから?
……いや、もしかしたら最初からだったのかもしれない。
そもそもこれだけ派手にスキルを使っているのに、街のどの戦闘系機関も偵察の1つもよこさないのはどう考えてもおかしい。
俺は震える声でヤツの背中に向かい話しかけた。
「 ……なぜ我々はループしているのだ……?
そして何故街の誰一人としてこの騒ぎに気づかない……? 」
そう問いかけた後、化け物はゆっくりとコチラを振り向きその恐ろしい『 空っぽの瞳 』を俺達に向けると、何故分からないのか?と言わんばかりの表情でそれに答える。
「 空間が繋がってないからに決まっているだろう?
騒ぎになればリーフ様は安心してお休みできない。
それを守る事が最優先事項だ。 」
< 英雄の資質 >(???スキル)
< 無限迷子( ??? ) >
どのような場所であろうともどこでも巨大迷路を出現させ空間軸を新しく創り出す空間系EXスキル。
迷路は無限に大きく、更に増やす事ができ、また迷路の世界を自由に創り出す事ができるため一度入ってしまえば元の空間軸には戻れない。
空間が繋がっていない??
その言葉から、どうしてループしているのか、誰一人として騒ぎに気づかないのかがようやく分かった。
ここはヤツのテリトリー。
俺達はヤツの承認なしでココから出ることが出来ない!
呆然と立ち尽くしている私達をよそに、化け物はゆったりとした動きで手に持つ血のついたレイピアに洗浄魔法を掛けている。
へたり込んでしまったプラム、そして震えたまま立ち尽くすルッツからは絕望感が漂う中、俺だけは必死に考えを巡らせていた。
奴が先ほどから言っている言葉を理解することは難しいが、とりあえずその ” リーフ様 ” とやらに絶対的な忠誠心を持っている事は確かな様だ。
しかしこんな出鱈目な力を持っているのに、なぜ公爵家とはいえ排除された存在に従っているのだろうか……?
「 きっ……貴殿は知っているのかな?
リーフ様が……家族であるメルンブルク家に……捨てられた存在だと……いうことを……。 」
化け物の様子を慎重に伺いながらそう言うと、化け物はキョトンとした顔をした後……嬉しそうに、ニヤッ……と笑った。
「 あぁ。知っている。
……本当に良かった。家族が……いなくて。 」
良かった???
なぜ ” 良かった ” なのか一瞬分からなかったが、そこで俺ははっと気づいた。
もしかして化け物は ” リーフ様 ” を本当は心の底では憎んでいて、だから捨てられている現状に胸がすく思いであると、そういう事なのではないだろうか……?
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