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第七章

342 交渉

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( バルザーク )


プラムのスキルに続きルッツのスキルまで……!!?


シーンと静まり返った森の中、常識などとっくになくなっている現状を前にルーナは「 …………ひっ!!! 」と引きつった声を上げる。

そしてその直後、直ぐにタタっと化け物に近づくと、その場で跪づいた。


「 あっ、あのっ!!

私は回復担当でして……戦闘員ではないんですよ!

だからご子息様を害そうなんてしてませんし、今回の事は一切関係ありませんので!


……だから私は良いですよね?


────あ、必要とあれば、いつでも回復魔法を掛けに参りますので、なんなりと申し付け下さい。

どこでも駆けつけて、無料で怪我でも状態異常でも何でも直しますよ~。


────ね?だからどうかお願いしますぅ~……。 」


ルーナは涙で目を潤ませながら猫なで声で懇願したが、< 仮想幻石 >で、またしても生き返ったプラムが、目尻を上げて噛み付いた。


「 はぁっ!!?あんた何ふざけたこと言ってんの?!

この大噓つきのド淫乱女がっ!!

聖職者のくせに一番 ” 遊び ” を楽しんでいたのはあんたでしょ?!

腐らせた肉の匂いに発情する変態のくせに!

知ってんだからね?イケメンの男を散々嬲って拷問しながらヤりまくってんの。


────ね、ねぇっ!!私だってこんな任務、本当は反対だったのよ~。

だから見逃してくれないかしら?

私の体好きにしていいから……ね?

それに沢山奉仕もしてあげる!すっごく気持ちいい事た~くさんしてあげるから!


…………ねぇ?いいでしょ? 」


プラムは化け物にそう提案を持ちかけながら、上に羽織っているストールをはだけさせ、見せつける様に胸部を晒す。

それを横で見ていたルーナは、プラムをギロリと睨みつけ対抗するように自身の上半身の服のボタンを全て外した。


「 ほら~、そんなケバいだけの女より私の方が可愛くないですか?

その女、相手の男とセックスしている最中に殺さないとイケないんですよ~?

そんな変態女より絶対私の方が満足できますから!

ねぇ、どうですか? 」


「 なっ!!あんたに変態なんて言われたくないわよ!

色気の欠片もないブスのくせに!! 

ね?私の方が美人でしょ~? 」


「 ────はっ?

あなたはただ高い化粧品や、装飾品なんかで着飾っているだけでしょう!?

下地はただのドブスのくせに!!

露出の高い服ばかり着て下品ですし、美しさの欠片もないじゃないですか~。

ねぇねぇ、私の方が可愛いですよね~? 」


二人の醜い言い争いは続くが、案外女を宛がう事で満足するかもしれんと多少の期待を込めて化け物の出方を見る。


あんな呪い付きでは相手をしてくれる者など皆無のはず……。

ましてや奴隷の立場なら、今後も女を抱けるチャンスなどありはしないのだから、欲に負けてしまう事も……?


しかし、そんな思惑は見事に外れ、化け物はキョトンとした表情で心底不思議そうな様子で言い放った。


「 ????

世界で一番 ” 可愛い ” のはリーフ様だ。

そんな事は当たり前だろう?

外見も中身もその存在全てがお美しい。 」


まるで神々しい何かを見つめるかのような……しかし、それだけにしては粘着質なドロっとした何かが空っぽの瞳に宿り、その目を輝かせる。


それが誰もが知る真実であるかのように、スラスラと話す化け物がただただ恐ろしい。


この任務の前にターゲットであるその ” リーフ様 ” とやらを姿絵で見たが、どう見ても何処にでもいる平凡なガキにしか見えなかった。


少なくとも可愛いとは言い難い凡庸な容姿であったため、もしかしたら ” 公爵家ご子息のリーフ様 ” ではない ” 絶世の美しさを持った別のリーフ様 ” でもいるのだろうか……??


そんな疑問を浮かべながら、化け物を睨みつけると、その ” リーフ様 ” とやらを思い出したのか、酷く幸せそうに笑う。


まるでこの世で一番の幸せを手にした様に……。


「 でも……私の方が……っ!! 」


ルーナはカッと顔を赤く染めながら尚も言い縋ろうとしたが、化け物は幸せそうに微笑みながら、指をクイッと下に向けて動かした。


すると────。


「 ────ぎゃっ!!!! 」


ルーナが悲鳴を上げながら、突然見えない何かに押しつぶされるようにうつ伏せで倒れた。

そしてそのまま、ぐぐぐぐっ……と上からの重力にゆっくりと潰されていく。


「 た……たす……け…………。 」


ルーナは目を見開き、涙をポロポロと流しながら懇願したが────化け物はまた元の無表情、無感情へと戻っていて、空っぽの瞳を向けるだけ。


そしてルーナはそのまま……。




 ” ぷちゅッ ” 




────トマトか何かが潰れるような音と共に潰れてしまった。


「 きゃあぁぁぁ────────!!!!! 」


それを隣で見ていたプラムはルーナの血を全身に浴び、叫びながら後ろへと下がる。

その場で目を見開き、ガタガタと震えるプラムを見ても、化け物はまるでその姿が見えていないかの様に自身の指をしげしげと見つめた。


「 なるほど、このくらいで体は潰れるのか……。 」


それだけ呟き、ゆっくりと俺とプラムの方へと視線を向ける。


────ギクリッ!!


全身が震えたが、化け物はそんな俺達の事などお構いなし。


「 もう一度試してみるか……。 」


そう言って、人差し指を俺達の方へ差そうとした、その瞬間────────化け物の背後から何者かの影が飛び出してきた。


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