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第七章

338 戦いの幕開け……?

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☆ ここからラストまで少々グロ表現が唐突に出てきますのでご注意下さいm(_ _)m



( バルザーク )

周囲に飛び散った原型を全く留めていない "   ルッツだったもの  "   を眺めながら、俺、プラム、ルーナの三人は、しばしの間呆然としていた。


確かにルッツはスキルを発動し、完璧とも言える最高速度のスピード、タイミングであの化け物に攻撃を仕掛けたはず……。



しかし────……?


結果、ルッツは飛び散り、あの化け物は平然と立っている。


はっ!と我に返った俺は、慌てて化け物の方へ視線を合わせると、奴は恐らくルッツを攻撃したと思われる右手をしげしげと眺め、何かを考え込んでいる様子であった。


一体何が起きた??


全員が沈黙しながらそう必死に考えている間に────パリィーーン……という何かが砕ける音が聞こえ、化け物の前に元通りに戻ったルッツが姿を現す。

< 仮想幻石 >が発動したのだ。


「 ……はっ??……えっ?……???? 」


ルッツはそう呟きながら、自身の体をペタペタと触った後、目の前にいる化け物の存在に気づき慌てて俺達の方へと飛んで戻ってきた。

何が起きたのかは分からないが、とりあえず未知の能力により攻撃を受けた事ははっきりしていて、そのせいでルッツは一度死んだ。


その衝撃的な出来事に誰もが口を閉ざし、俺は両手にダガーを、プラムは魔導の杖を、ルーナは聖杖を、そして一度殺されたルッツは青ざめた顔で拳を構え、化け物に対し完全な攻撃態勢をとる。


「 一体何が起きた……?? 」


ルッツがボソボソと青ざめながらそう聞いてきたが、それに答えられるものは誰もいない。

動揺を隠せない俺達とは対称的に、化け物はこちらの様子を一切気に掛ける素振りすら見せず、依然自身の拳を見つめながら何かを考えている様子だった。


「 もう少しか……。 」


更に理解不能な言葉まで呟いている。


少し……??

一体何が ” 少し ” なのか?


頭をよぎるのはそんな疑問で、そのまま思考を巡らせた。


” 何故ターゲットと共にいたはずの化け物がここに? ”

” 宿を見張っていた仲間達からは一切の連絡がなかったのに? ” 


ぐるぐる……。

ぐるぐる……。


今まで起きた事を全て整理していくと、突然────先ほどプラムが言っていた言葉が思い浮かんだ。



”  ……?おかしいわね。応答がないわ。 ”



「 ……ひとつ聞かせてもらいたいのだが────……。

……街にいるはずの俺達の仲間の事を知らないかね?


結構な人数がいたはずなのだが……。 」


まさかな……?


嫌な予感を抱きながら化け物にそう尋ねると、奴は自身の拳から視線を逸らすことなく   "   あぁ……  "  と何か思い当たるフシがあるかのような反応を返した。


60人ほどの仲間達が街中に広がって配置についていたはずなので、恐らくターゲットに張り付いていた十数人の仲間たちについて心当たりがあったのだろう。


ならば、何が起こったのかを目撃もしくは把握している仲間たちもいるはず。


街に配置していた仲間の中には遠視系スキルや解析スキルを持った者たちもいたため、遠くからでもその情報を解析する事はできるからだ。


その誰かと連絡がとれれば、この未知の能力についての情報が得られる!


そう考えプラムへ視線を送ると、彼女も既に俺と同じ考えに至っているようで、直ぐに通信様魔道具に魔力を流し連絡を取ろうとした、その瞬間────化け物が突如、人差し指で斜め上の空を指し示した。

するとちょうど化け物と俺達との間、その真上に魔法陣が出現したため緊張が走る。


新たな攻撃かっ!?


警戒する俺達をよそに、何か重量のある物体がボトボトと落ちてきただけの様だったので、視線は自然とその落ちた物の方へ。


そして "   それ "  の正体を知った俺達は……同時に息を飲んだ。

・・                   
それはついさっきまで仲間だった "   モノ  "  であり、総勢60名のAランク傭兵達だったからだ。

しかもその全員が誰一人息をしていないことは明らかな状態で、見るも無惨な状態で転がっている。


凄まじい力で握りつぶされたモノ。

頭や腕や全ての部位がねじ切られているモノ。

穴だらけのモノ……。


一体何をしたらこんな無惨な姿に?と問いたくなるようなひどい有様に俺達の顔は引きつった。


「 そ……そんな……

だって……Aランク傭兵ですよ……?

こんな短時間で……全員が……??

あ、有りえませんよ……こんなことって……! 」


ルーナが動揺を隠せずそう言えば、ルッツとプラムの顔色は更に悪くなる。

今回同行したのは全て確かな実力を持ったAランク傭兵達で、しかも揃いも揃ってその中でもトップクラスの実力者揃いであった。

流石の俺とて一度に60名相手にするのは不可能。

少なくとも満身創痍にはなるであろう相手にこんな短時間で、しかもマントで隠れていて詳しくは不明だがピンピンしていることから怪我などはしていない様だ。


────ありえない。


ゾッとしながらその化け物を上から下まで探る様に睨みつける。

そして血の匂いなど微塵も感じない事を確認し、やはり何か特殊なスキルを持っていると考えた。

しかし、それはなんなのか?が一切不明。

俺はプラムの方へと視線を向け、指を軽く横に振って指示を出す。


先ほどのルッツがやられた状況から察するに、あの化け物の攻撃手段は恐らく前衛型。

しかも拳で殴られ弾け飛んだ事から、腰にさすレイピアではなく拳で戦うタイプの戦闘職である可能性が高い。


ならまずは遠距離系攻撃である魔法を使い様子を見る。


現状の少ない情報からそう判断し、それを目でプラムに合図した。

その指示を伝えられたプラムは青白い顔のままコクリと頷き、前方に火属性の魔法陣を展開してそれと同時にルーナが仲間全員に対魔法シールドを張った。


プラムの魔法は威力、範囲共に非常に大きく流石に完全回避は難しいため、体制が崩れた一瞬を逃さず狙う。


そう考えながら、俺達は化け物から目線は逸らさずその隙きを伺った。

すると奴はスッと右足をゆっくりと地面から浮かし、そのまま一歩前に進むと────……次の瞬間、プラムの目の前にいた。


「 …………えっ……??? 」


プラムのポカンとする顔と間抜けな呟きが聞こえたが、化け物は全く気にすることなくプラムと自身の目の前に展開している魔法陣に指を近づけ、デコピンするようにピンッと軽く指で弾いた。


その瞬間────……。


ビシビシビシッ────!!!


一瞬で亀裂が四方八方に走り、魔法陣は粉々に崩れ去ってしまった。

それをただ呆然と見下ろしているプラムを、奴は無感情にみおろす。



「 景色が台無しになってしまう。

森林破壊……


────そんな事をしては駄目だろう? 」



そんな訳の分からぬ事を呟き、奴は立ち尽くすプラムの腕をソッと掴むと────まるで柔らかい粘土の様に腕をグチャリと潰して簡単に引きちぎってしまった。

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