346 / 1,370
第七章
331 貴族には貴族の……
しおりを挟む
( ドノバン )
────きな臭せぇな……。
そう感じるのは最近のエドワード派閥の動きだ。
現在アーサー派閥のトップ、アーサー王子様が不在であるためエドワード派閥からしたらまさに今こそ絶好のチャンスのはず……なのだが、エドワードは彼を支持する貴族達と親睦は深めど直接的な動きは見せていない。
一体何を企んでやがる……?
この静けさがどうも嵐も前の……的なものに思えて非常に不気味だ。
王都にある仮住まい用の宿屋の窓から外を見ると、自分の気分の様に、沈みかけた空が見えて何とも言えぬ表情で苦笑いをした。
エドワード派閥に属する貴族達は、どうも揃いも揃って過激な奴らが多く、基本その権力を使ってゴリ押しするがポリシーの様な奴らばかり。
平和大好き、適当上等の俺からすればどうにも馬が合わねえ連中であることは間違いない。
そんな奴らとの思い出が頭にバッ!と浮かび上がり、思わず遠い目になってしまった。
第二騎士団に入団する時も団長を退団する時も、嫌というほどしつこい勧誘に脅しに嫌がらせのオンパレード!
そんな、もはやため息しか出てこない行動を見せるこの連中は、今だに極端な主張を壊れたおもちゃの様に繰り返す。
” 第二騎士団は爵位が低い野蛮人の集まり、関わるな ”
” 貴族として生まれたからには高貴なる第一騎士団に入るべき ”
” 貴族に生まれたという事は神に選ばれたという事である。
責任を持って、無能で無知な平民を導いてやるべし。 ”
……だそうだ。
────────が!
俺は上がっていく怒りのボルテージを感じ、それを落ち着かせるため大きく深呼吸をした。
そもそも真面目に貴族をやってる奴からすれば、その ” 神に選ばれた~ ” の前に ” 嫌な役割を押し付ける役として~ ” という言葉が絶対につくだろうと思う。
平民から見れば、貴族はキラキラしているそれはそれは素晴らしい世界に生きている様に見えるだろうが、そんなものは表向きだけの幻の姿だ。
毎日綺羅びやかな衣装に身を包み、ギランギランの装飾品に手工品の数々、贅を尽くした豪華な食事に娯楽────……。
────などなどと引き換えに、小さい頃から遊ぶことも許されずドロンドロンの欲望溢れる社交場に繰り出され、自分のためではなく自身の守るべき領地や国民のためにと全てを犠牲にして生きてゆかねばならない。
自分の行動や言動1つでたくさんの人々の生活、引いては命までも掛かってしまうのだから、そこに個人の自由などはない。
自分を殺して我慢我慢の毎日に、結婚だって国民の生活を守るためメリットのある相手としなければならず、更には領地を存続させるため子孫を残す事も義務となっている。
全ては領地を豊かにするため、引いては領民達の生活と命を守るため!
そのためにモンスターや盗賊の襲撃や戦争の際には、最前線でも戦わなければならない。
己の命を掛けて。
結局は物事はそれが何であれ、それなりにメリット・デメリットというものが存在していて、平民はあくせく働き泥に塗れるのと引き換えに『 自由 』を。
貴族はそれと引き換えに『 権力 』という力を与えられているというわけだ。
そしてそれぞれにはたくさんの代償があって、それを払わずいいとこ取りしようとする奴がいるから世の中は上手くいかねぇってこと。
空を自由に飛び回る鳥をぼんやりと見て、” あ~いいよな~。 ” と呟き、しばしの沈黙。
そして連日のモンスター討伐により凝り固まった肩をぐるぐると回しながら1人ブツブツと呟き続けた。
平民の中には、” 貴族の権力を平民と同等にすべき! ” とか言う奴らも結構いるらしいが、それはそれでちょっとなぁ……と思う。
” はいっ!平等なんだから僕達従いませ~ん、
でも今の生活は守って欲しいから、俺達のために自分の人生を犠牲にしてあくせく働いて下さいね~!
それでモンスターが襲ってきたら命をかけて守って下さ~い。 ”
……いやいや、それ奴隷より酷くね?────みたいな?
鎖に繋がれ、平民にペチペチ鞭で叩かれ働かされる自分を妄想し、ゾゾっ!と鳥肌が立つ。
そのため ” 爵位ありきの平等主義 ” に対しても100%賛同はしかねるわけだ。
しかしエドワード派閥の ” 平民は貴族のためだけに存在する使い捨ての道具である。 ” は、もっと賛同できないからこそ敵対する道を選んで、今の今まで生きてきたってわけだ。
俺は空に向けていた視線を部屋の中にある小さなテーブルへと移すと、その上に置いてある手紙に再度目を通した。
その手紙にはここ最近モンスターの動きが活発になっている事、そしてつい昨日も王都の方へ高ランクモンスターの集団が向かったらしい事が細やかに書いてあった。
手紙の主は俺の妻……いや、元妻の< ジョバンヌ >だ。
────きな臭せぇな……。
そう感じるのは最近のエドワード派閥の動きだ。
現在アーサー派閥のトップ、アーサー王子様が不在であるためエドワード派閥からしたらまさに今こそ絶好のチャンスのはず……なのだが、エドワードは彼を支持する貴族達と親睦は深めど直接的な動きは見せていない。
一体何を企んでやがる……?
この静けさがどうも嵐も前の……的なものに思えて非常に不気味だ。
王都にある仮住まい用の宿屋の窓から外を見ると、自分の気分の様に、沈みかけた空が見えて何とも言えぬ表情で苦笑いをした。
エドワード派閥に属する貴族達は、どうも揃いも揃って過激な奴らが多く、基本その権力を使ってゴリ押しするがポリシーの様な奴らばかり。
平和大好き、適当上等の俺からすればどうにも馬が合わねえ連中であることは間違いない。
そんな奴らとの思い出が頭にバッ!と浮かび上がり、思わず遠い目になってしまった。
第二騎士団に入団する時も団長を退団する時も、嫌というほどしつこい勧誘に脅しに嫌がらせのオンパレード!
そんな、もはやため息しか出てこない行動を見せるこの連中は、今だに極端な主張を壊れたおもちゃの様に繰り返す。
” 第二騎士団は爵位が低い野蛮人の集まり、関わるな ”
” 貴族として生まれたからには高貴なる第一騎士団に入るべき ”
” 貴族に生まれたという事は神に選ばれたという事である。
責任を持って、無能で無知な平民を導いてやるべし。 ”
……だそうだ。
────────が!
俺は上がっていく怒りのボルテージを感じ、それを落ち着かせるため大きく深呼吸をした。
そもそも真面目に貴族をやってる奴からすれば、その ” 神に選ばれた~ ” の前に ” 嫌な役割を押し付ける役として~ ” という言葉が絶対につくだろうと思う。
平民から見れば、貴族はキラキラしているそれはそれは素晴らしい世界に生きている様に見えるだろうが、そんなものは表向きだけの幻の姿だ。
毎日綺羅びやかな衣装に身を包み、ギランギランの装飾品に手工品の数々、贅を尽くした豪華な食事に娯楽────……。
────などなどと引き換えに、小さい頃から遊ぶことも許されずドロンドロンの欲望溢れる社交場に繰り出され、自分のためではなく自身の守るべき領地や国民のためにと全てを犠牲にして生きてゆかねばならない。
自分の行動や言動1つでたくさんの人々の生活、引いては命までも掛かってしまうのだから、そこに個人の自由などはない。
自分を殺して我慢我慢の毎日に、結婚だって国民の生活を守るためメリットのある相手としなければならず、更には領地を存続させるため子孫を残す事も義務となっている。
全ては領地を豊かにするため、引いては領民達の生活と命を守るため!
そのためにモンスターや盗賊の襲撃や戦争の際には、最前線でも戦わなければならない。
己の命を掛けて。
結局は物事はそれが何であれ、それなりにメリット・デメリットというものが存在していて、平民はあくせく働き泥に塗れるのと引き換えに『 自由 』を。
貴族はそれと引き換えに『 権力 』という力を与えられているというわけだ。
そしてそれぞれにはたくさんの代償があって、それを払わずいいとこ取りしようとする奴がいるから世の中は上手くいかねぇってこと。
空を自由に飛び回る鳥をぼんやりと見て、” あ~いいよな~。 ” と呟き、しばしの沈黙。
そして連日のモンスター討伐により凝り固まった肩をぐるぐると回しながら1人ブツブツと呟き続けた。
平民の中には、” 貴族の権力を平民と同等にすべき! ” とか言う奴らも結構いるらしいが、それはそれでちょっとなぁ……と思う。
” はいっ!平等なんだから僕達従いませ~ん、
でも今の生活は守って欲しいから、俺達のために自分の人生を犠牲にしてあくせく働いて下さいね~!
それでモンスターが襲ってきたら命をかけて守って下さ~い。 ”
……いやいや、それ奴隷より酷くね?────みたいな?
鎖に繋がれ、平民にペチペチ鞭で叩かれ働かされる自分を妄想し、ゾゾっ!と鳥肌が立つ。
そのため ” 爵位ありきの平等主義 ” に対しても100%賛同はしかねるわけだ。
しかしエドワード派閥の ” 平民は貴族のためだけに存在する使い捨ての道具である。 ” は、もっと賛同できないからこそ敵対する道を選んで、今の今まで生きてきたってわけだ。
俺は空に向けていた視線を部屋の中にある小さなテーブルへと移すと、その上に置いてある手紙に再度目を通した。
その手紙にはここ最近モンスターの動きが活発になっている事、そしてつい昨日も王都の方へ高ランクモンスターの集団が向かったらしい事が細やかに書いてあった。
手紙の主は俺の妻……いや、元妻の< ジョバンヌ >だ。
52
お気に入りに追加
2,014
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト
しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。
悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。
前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる…
婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。
そんな物語です。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる