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第七章

331 貴族には貴族の……

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( ドノバン )


────きな臭せぇな……。


そう感じるのは最近のエドワード派閥の動きだ。


現在アーサー派閥のトップ、アーサー王子様が不在であるためエドワード派閥からしたらまさに今こそ絶好のチャンスのはず……なのだが、エドワードは彼を支持する貴族達と親睦は深めど直接的な動きは見せていない。


一体何を企んでやがる……?

この静けさがどうも嵐も前の……的なものに思えて非常に不気味だ。


王都にある仮住まい用の宿屋の窓から外を見ると、自分の気分の様に、沈みかけた空が見えて何とも言えぬ表情で苦笑いをした。


エドワード派閥に属する貴族達は、どうも揃いも揃って過激な奴らが多く、基本その権力を使ってゴリ押しするがポリシーの様な奴らばかり。

平和大好き、適当上等の俺からすればどうにも馬が合わねえ連中であることは間違いない。


そんな奴らとの思い出が頭にバッ!と浮かび上がり、思わず遠い目になってしまった。


第二騎士団に入団する時も団長を退団する時も、嫌というほどしつこい勧誘に脅しに嫌がらせのオンパレード!

そんな、もはやため息しか出てこない行動を見せるこの連中は、今だに極端な主張を壊れたおもちゃの様に繰り返す。


” 第二騎士団は爵位が低い野蛮人の集まり、関わるな ”  


” 貴族として生まれたからには高貴なる第一騎士団に入るべき ” 


” 貴族に生まれたという事は神に選ばれたという事である。

責任を持って、無能で無知な平民を導いてやるべし。 ” 


……だそうだ。


────────が!


俺は上がっていく怒りのボルテージを感じ、それを落ち着かせるため大きく深呼吸をした。


そもそも真面目に貴族をやってる奴からすれば、その ” 神に選ばれた~ ” の前に ” 嫌な役割を押し付ける役として~ ” という言葉が絶対につくだろうと思う。

平民から見れば、貴族はキラキラしているそれはそれは素晴らしい世界に生きている様に見えるだろうが、そんなものは表向きだけの幻の姿だ。


毎日綺羅びやかな衣装に身を包み、ギランギランの装飾品に手工品の数々、贅を尽くした豪華な食事に娯楽────……。

────などなどと引き換えに、小さい頃から遊ぶことも許されずドロンドロンの欲望溢れる社交場に繰り出され、自分のためではなく自身の守るべき領地や国民のためにと全てを犠牲にして生きてゆかねばならない。


自分の行動や言動1つでたくさんの人々の生活、引いては命までも掛かってしまうのだから、そこに個人の自由などはない。

自分を殺して我慢我慢の毎日に、結婚だって国民の生活を守るためメリットのある相手としなければならず、更には領地を存続させるため子孫を残す事も義務となっている。


全ては領地を豊かにするため、引いては領民達の生活と命を守るため!


そのためにモンスターや盗賊の襲撃や戦争の際には、最前線でも戦わなければならない。


己の命を掛けて。


結局は物事はそれが何であれ、それなりにメリット・デメリットというものが存在していて、平民はあくせく働き泥に塗れるのと引き換えに『 自由 』を。

貴族はそれと引き換えに『 権力 』という力を与えられているというわけだ。

そしてそれぞれにはたくさんの代償があって、それを払わずいいとこ取りしようとする奴がいるから世の中は上手くいかねぇってこと。


空を自由に飛び回る鳥をぼんやりと見て、” あ~いいよな~。 ” と呟き、しばしの沈黙。


そして連日のモンスター討伐により凝り固まった肩をぐるぐると回しながら1人ブツブツと呟き続けた。


平民の中には、” 貴族の権力を平民と同等にすべき! ” とか言う奴らも結構いるらしいが、それはそれでちょっとなぁ……と思う。


” はいっ!平等なんだから僕達従いませ~ん、

でも今の生活は守って欲しいから、俺達のために自分の人生を犠牲にしてあくせく働いて下さいね~!

それでモンスターが襲ってきたら命をかけて守って下さ~い。 ” 


……いやいや、それ奴隷より酷くね?────みたいな?


鎖に繋がれ、平民にペチペチ鞭で叩かれ働かされる自分を妄想し、ゾゾっ!と鳥肌が立つ。


そのため ” 爵位ありきの平等主義 ” に対しても100%賛同はしかねるわけだ。


しかしエドワード派閥の ” 平民は貴族のためだけに存在する使い捨ての道具である。 ” は、もっと賛同できないからこそ敵対する道を選んで、今の今まで生きてきたってわけだ。


俺は空に向けていた視線を部屋の中にある小さなテーブルへと移すと、その上に置いてある手紙に再度目を通した。


その手紙にはここ最近モンスターの動きが活発になっている事、そしてつい昨日も王都の方へ高ランクモンスターの集団が向かったらしい事が細やかに書いてあった。


手紙の主は俺の妻……いや、元妻の< ジョバンヌ >だ。


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