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第六章
292 英雄とヒロイン
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( リーフ )
そんな四人を、アゼリアちゃんがまるでゴミを見るかのような目でジ~っと睨みつけている間に、ソフィアちゃんが俺とレオンに向かい軽く頭を下げる。
「 本日はありがとうございました。 」
「 いえいえ、こちらこそ~。 」
俺もぺこりと頭を下げながらそれに答えると、続けてこの後の予定について聞いてみた。
すると二人はこれからこの街の教会に行き、このグリモアで起きている異変について直接話を聞きに行くとのこと。
試験が終わって直ぐとは……流石は王女様、かつ正統派ヒロイン!
ご立派すぎるぞ!
思わずキラキラとした尊敬の眼差しを向けると、突然ソフィアちゃんはスッと青ざめ、何度か言いづらそうに口を開け閉めしながら俺の後方へとチラチラ視線を向けた。
レオンに何か言いたいことでもあるのかな?
そう思って質問しようとしたその時────ソフィアちゃんは意を決した様子で、レオンに対し口を開いた。
「 ……レ……レオン様……。
ほ、本日は、< 回避珠 >の偽造を暴いてくださり……誠にありがとうございました……。 」
お礼を言った後、ソフィアちゃんは直ぐにビクビクと震えながら視線をそらしてしまったが、俺はその行動にとても感動した。
怖くても頑張ってお礼を言えるソフィアちゃんはとってもいい子!
口元を押さえ、感動にプルプル震える。
物語の中でイシュル神の禁忌の色 ” 黒 ” と、その神さえ解けぬ ” 呪い ” に対する恐怖は非常に根深く、平等と博愛で有名であった王ですらレオンハルトに恐怖し、その存在を遠ざけた。
さらにその後はレオンハルトに関する全ての事は第二王子のアーサーに託し、一切関わろうとしなかった事からも、その恐怖がそうとう根深い事が伺えるわけだが……それは彼が根っからのイシュル教信者であったからと本の中では語られている。
そしてそれに関して言えば、ソフィアちゃんも同じ。
そもそもソフィアちゃんと王様はとてもよく似た価値観を持っていて、ましてや彼女はそんなイシュル教のトップ。
恐らくレオンハルトの禁忌の色と呪いに対しての恐怖は王様以上のはずだ。
そんな恐怖を抑えながら、レオンと向き合おうとしてくれるその行動が俺はとっても嬉しい。
突然震え出した俺を見てオロオロするレオンに、大丈夫大丈夫~と、目を三日月にして笑っておいた。
そんなこんなで俺の中で、ソフィアちゃんの株は急上昇!
そしてそれと同時に────────
俺の中の違和感はどんどんと大きくなっていく。
しかもソフィアちゃんと出会ったことで気付かされたが、今思えばレガーノの街の人達の態度にも違和感を感じるようになった。
レガーノの人達はイシュル教をとても大事にしていて、教会のイベントもかなり積極的に参加している。
だからこそ物語の中と現在、両方の街の人達が、神の愛し子と分かる神託前のレオンを受け入れられないというのは、理解できる。
それだけ自分の今まで生きてきた人生の全てと言っても良いイシュル神、それに反する存在を決して受け入れられないというのは、ある程度仕方がないことだからだ。
しかし……
だからこそ、神託後に見せる物語上の街の人達の態度がおかしい気がするのだ。
その大事なイシュル神の愛し子であると直接神から伝えられたにも関わらず、全員が己の罪に怯えて受け入れられない……?
それって本当にそうだったのだろうか?
う~ん……と、俺はレガーノの人々と自分を置き換えて考えてみた。
英雄を探しに来た騎士が到着するまで、レガーノの人達はただ怯えながら過ごした様だが、いくら己の罪に怯えていたとはいえ、神の愛し子とわかった時点ですぐさまレオンハルトを保護しようとする人達がいないのはどうにも違和感を感じる。
少なくとも今までの目を背けていた罪より、現在も捨て置く方がよっぽど問題だと、俺ならそう考えるし、同じ考えを持つ人も絶対にいるはず。
それに現在では、レオンが結構な外見美形になったからではあるが、若い娘さんを中心に気にしないという人達だっているくらいだし、愛し子と判明していない現在でも ” 黒 ” や ” 呪い ” に関しての思いも様々な様に思える。
多分現在のレガーノの人達にとって一番怖かったのは ” 呪いが伝染るか伝染らないか ”
それが払拭された今は、一部の人達を除いてレオンに対し罪悪感的なものを感じている人達も結構いる様で、ちょこちょこリーフ邸におすそ分けと称して届けられるもの達は、レオンへの遠回しな罪滅ぼしだろうと、カルパスも言っていた。
ここまで考えると、やはり物語の中のレガーノの人達の行動はおかしいと感じてしまう。
謝る事も保護する事も出来なかった理由は、一体何だったんだろう?
それが出来ずに自滅するくらい、そのレオンハルトを受け入れられない強い理由があったはず……。
もしかして ” 神さえも解けない ” 呪いが怖かった?
……しかし、戦闘職でない一般人とって伝染らなければそこまで敷居が高いものではない様だし……。
ここでグルグルと脳みそのキャパシティは越え始め、プスプスと頭が焦げ付き始めたが、一度考え始めたら、更なる違和感に気づく。
それは、この国の王様、< ニコラ王 >に対してだ。
これはあくまで聞いている範囲内の限りでの話にはなってしまうが……。
物語の中の彼は、悪く言えば気弱な……とにかく波を荒立てない選択ばかりをとっていた人物のように描かれていたが、現在の彼は、結構挑戦的な政策を打ち出す場面も多く見られる人物である。
分権化されたこの国が現在平和なのは、そんな彼が積極的に動いているから。
平和を愛し、そのためなら反派閥にも真っ向から戦う。
そんな姿が全くもって物語に出てきた王様と合わない。
なんだかこのズレが、見逃してはいけない事のような気がして……俺的には非常に気になるがここで鳥頭はキャパオーバー。
ボボン!と爆発した頭を労る様に摩った。
結局、今の時点で答えが出ない事は考えても仕方ない。
引き続き注意はしつつ、オレはオレの役割をこなしていくほかないだろう。
そんな四人を、アゼリアちゃんがまるでゴミを見るかのような目でジ~っと睨みつけている間に、ソフィアちゃんが俺とレオンに向かい軽く頭を下げる。
「 本日はありがとうございました。 」
「 いえいえ、こちらこそ~。 」
俺もぺこりと頭を下げながらそれに答えると、続けてこの後の予定について聞いてみた。
すると二人はこれからこの街の教会に行き、このグリモアで起きている異変について直接話を聞きに行くとのこと。
試験が終わって直ぐとは……流石は王女様、かつ正統派ヒロイン!
ご立派すぎるぞ!
思わずキラキラとした尊敬の眼差しを向けると、突然ソフィアちゃんはスッと青ざめ、何度か言いづらそうに口を開け閉めしながら俺の後方へとチラチラ視線を向けた。
レオンに何か言いたいことでもあるのかな?
そう思って質問しようとしたその時────ソフィアちゃんは意を決した様子で、レオンに対し口を開いた。
「 ……レ……レオン様……。
ほ、本日は、< 回避珠 >の偽造を暴いてくださり……誠にありがとうございました……。 」
お礼を言った後、ソフィアちゃんは直ぐにビクビクと震えながら視線をそらしてしまったが、俺はその行動にとても感動した。
怖くても頑張ってお礼を言えるソフィアちゃんはとってもいい子!
口元を押さえ、感動にプルプル震える。
物語の中でイシュル神の禁忌の色 ” 黒 ” と、その神さえ解けぬ ” 呪い ” に対する恐怖は非常に根深く、平等と博愛で有名であった王ですらレオンハルトに恐怖し、その存在を遠ざけた。
さらにその後はレオンハルトに関する全ての事は第二王子のアーサーに託し、一切関わろうとしなかった事からも、その恐怖がそうとう根深い事が伺えるわけだが……それは彼が根っからのイシュル教信者であったからと本の中では語られている。
そしてそれに関して言えば、ソフィアちゃんも同じ。
そもそもソフィアちゃんと王様はとてもよく似た価値観を持っていて、ましてや彼女はそんなイシュル教のトップ。
恐らくレオンハルトの禁忌の色と呪いに対しての恐怖は王様以上のはずだ。
そんな恐怖を抑えながら、レオンと向き合おうとしてくれるその行動が俺はとっても嬉しい。
突然震え出した俺を見てオロオロするレオンに、大丈夫大丈夫~と、目を三日月にして笑っておいた。
そんなこんなで俺の中で、ソフィアちゃんの株は急上昇!
そしてそれと同時に────────
俺の中の違和感はどんどんと大きくなっていく。
しかもソフィアちゃんと出会ったことで気付かされたが、今思えばレガーノの街の人達の態度にも違和感を感じるようになった。
レガーノの人達はイシュル教をとても大事にしていて、教会のイベントもかなり積極的に参加している。
だからこそ物語の中と現在、両方の街の人達が、神の愛し子と分かる神託前のレオンを受け入れられないというのは、理解できる。
それだけ自分の今まで生きてきた人生の全てと言っても良いイシュル神、それに反する存在を決して受け入れられないというのは、ある程度仕方がないことだからだ。
しかし……
だからこそ、神託後に見せる物語上の街の人達の態度がおかしい気がするのだ。
その大事なイシュル神の愛し子であると直接神から伝えられたにも関わらず、全員が己の罪に怯えて受け入れられない……?
それって本当にそうだったのだろうか?
う~ん……と、俺はレガーノの人々と自分を置き換えて考えてみた。
英雄を探しに来た騎士が到着するまで、レガーノの人達はただ怯えながら過ごした様だが、いくら己の罪に怯えていたとはいえ、神の愛し子とわかった時点ですぐさまレオンハルトを保護しようとする人達がいないのはどうにも違和感を感じる。
少なくとも今までの目を背けていた罪より、現在も捨て置く方がよっぽど問題だと、俺ならそう考えるし、同じ考えを持つ人も絶対にいるはず。
それに現在では、レオンが結構な外見美形になったからではあるが、若い娘さんを中心に気にしないという人達だっているくらいだし、愛し子と判明していない現在でも ” 黒 ” や ” 呪い ” に関しての思いも様々な様に思える。
多分現在のレガーノの人達にとって一番怖かったのは ” 呪いが伝染るか伝染らないか ”
それが払拭された今は、一部の人達を除いてレオンに対し罪悪感的なものを感じている人達も結構いる様で、ちょこちょこリーフ邸におすそ分けと称して届けられるもの達は、レオンへの遠回しな罪滅ぼしだろうと、カルパスも言っていた。
ここまで考えると、やはり物語の中のレガーノの人達の行動はおかしいと感じてしまう。
謝る事も保護する事も出来なかった理由は、一体何だったんだろう?
それが出来ずに自滅するくらい、そのレオンハルトを受け入れられない強い理由があったはず……。
もしかして ” 神さえも解けない ” 呪いが怖かった?
……しかし、戦闘職でない一般人とって伝染らなければそこまで敷居が高いものではない様だし……。
ここでグルグルと脳みそのキャパシティは越え始め、プスプスと頭が焦げ付き始めたが、一度考え始めたら、更なる違和感に気づく。
それは、この国の王様、< ニコラ王 >に対してだ。
これはあくまで聞いている範囲内の限りでの話にはなってしまうが……。
物語の中の彼は、悪く言えば気弱な……とにかく波を荒立てない選択ばかりをとっていた人物のように描かれていたが、現在の彼は、結構挑戦的な政策を打ち出す場面も多く見られる人物である。
分権化されたこの国が現在平和なのは、そんな彼が積極的に動いているから。
平和を愛し、そのためなら反派閥にも真っ向から戦う。
そんな姿が全くもって物語に出てきた王様と合わない。
なんだかこのズレが、見逃してはいけない事のような気がして……俺的には非常に気になるがここで鳥頭はキャパオーバー。
ボボン!と爆発した頭を労る様に摩った。
結局、今の時点で答えが出ない事は考えても仕方ない。
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