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第六章

287 迷子銃士の反省

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( リーフ )

なんといっても俺の前世での不名誉なあだ名の一つが《 迷子銃士 》

打った弾はことごとく外れ迷子になってしまう事からその名がつけられた。


よって魔法の初級といえば、なんちゃらボールという手のひらサイズの魔法を作りだし、掌を標的に向け、えいやっと飛ばすわけだが、これがもう当たらない、当たらない!


以前使った時なんか、当たり前のようにブーメランになって自分に帰ってきてしまい撃沈。

それを目撃していたドノバンに大爆笑されてしまった思い出がある。


そうしてひとしきり大笑いしたドノバンいわく、俺はトリッキーな動きに特化しているため、きっちり順序立てて使う魔法が使いにくいのでは?と言っていたが、結局なんの解決法も思い浮かばないまま今を迎えてしまった。


スキルで魔法を変曲して使うのは問題ないため、おそらく魔法をプログラミングする過程でエラーがおきてしまっているんだろうと思われる。


そう考えれば確かに魔法を使う時……

” 火使お~!────で、大きさはコレっくらいの~?♬……あ、なんかお弁当の歌にこんな歌詞があったような……? ” 

────などなど、確かに雑念が半端ではない自覚はある。


……うん、これが原因だ、間違いなく。


俺は、嘆かわしい!!と顔をグシャリと歪め首を静かに振った。


歳を取ることで起こる ” 何かをしようとすると思考が迷子になってしまい結局本題を忘れる現象 ” 

それが、ここでも牙を剥くのか……。


仕方がないので、ここは俺の得意技 ” 諦める ” を発動し、きちんと使う事は諦め、他のやり方で代用することを考えてみる事にした。


どうしようかな~と、ポクポクポクポク考えている内にとうとう名前が呼ばれ、やっとレオンの恐怖の脱毛サロンから脱出。

そして乱れた髪をサッサッと整えながら、指定された場所に立つと、100mほど先にある小さな ” 的 ” をジッと見つめた。


あの小さいのに当てるのか……。


距離にして100mほど。

大きさは手のひらサイズであるため、前世だったら飛蚊症のゴミクズと間違えてしまうレベル。

しかし、あの ” 的 ” は今まで自身を狙う魔法攻撃全てを受け止めてきた────いわゆる歴戦のキャッチャー……飛蚊症に例えるのは失礼に値する。


大きく頷きながら、俺は自分で例えた言葉にピタリと止まった。


キャッチャー……そうか、キャッチャーか……。


俺は、開始!という試験開始の合図と共にポンッと火の初級魔法< ファイヤー・ボール >を出し、ボボボボッと萌える丸い火球を見下ろした。


火のボールを出すのは問題ない。


なら────……!


俺は火球を頭の上へ持っていくと、片足を高く上げた。


見たことのないポーズに周りはザワッとどよめいたが、俺は精神を集中したまま上げていた足を大きく前へ踏み出しドンッ!!!と地面を踏みしめると、それにつられるようにボールを持つ手は前へ。


そしてそのまま振り切る力がマックスな地点で、ボールを離す!!


するとボールは俺の全力を受けて加速して進んでいき、100m離れた ” 的 ” に直撃!!

しかも当たっただけではなくそのまま ” 的 ” を破壊し、防御結界に当たって消え去った。


目を見開き驚く教員達と受験生達。


俺は ” 的 ” に当たったこと、そしてそれを見事破壊してやったことにガッツポーズ!


一瞬の静寂の後、割れるような大きな拍手と喝采が鳴り響いた。


「 リ、リーフ殿の点数は90点!!

なんと、物理属性まで混ぜ込んでの魔法攻撃とは……!!

身体強化の使い方といい、リーフ殿は随分と独創的な戦い方を思いつく。

これには恐れ入った。 」


興奮しながらそう言ったフラン学院長の言葉を受け、ムッフッフ~と、満足げな笑みを浮かべた。


俺は銃は苦手だが野球はそれなりに得意。

基本俺が子供の時の遊びは野球かサッカーというシンプルなものしかなかったため、それなら!と思ったら、それが大当たり!


さらに投げる事で、魔法以外の属性である< 物理属性 >をプラスすることで魔力を無効化する ” 絶魔縁体 ” の的をこの物理属性でふっ飛ばしたのだ。


ちなみにこの世界、野球はあれど前世でみたような大掛かりな野球はない。

つまりこのボールの投げ方もなく、今俺がやった見様見真似のピッチャーの投げ方は初めて見る動きだったはず。


俺は送られる拍手に、「 ありがと~! 」と手を振りながら元の場所に戻ると、こういった楽しそうなものに興味津々の獣人族のレイドとメルちゃんが興奮した様子で駆け寄ってきた。


「 あれ、めちゃくちゃカッコいいじゃねぇか!! 」


「 ……グーだった……リーフ凄い……。 」


二人はぴょんぴょんと飛びながら大はしゃぎ。


「 全試験90点以上なんてぇ~ちょーハイスペック♡ 」


サイモンは目をハートにして、キラキラとした視線を送ってくる。


そんな様々な視線にコンコンと顔を叩かれながら、レオン達の元にたどり着くと、両隣にいるモルトとニールはフフンッとドヤ顔で、マリオンとそのとりまき達に向かって視線を送って忙しそうだった。


ちなみにレオンは先ほどから少し落ち着いたのか、ニコリと笑い、またしても────

「 カユジ虫のようでした。 」

……という謎の褒め?言葉を投げかけてくるので、一応ありがとうとお礼を告げておいた。


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