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第六章

260 よくない大人

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( リーフ )

年齢は30代後半くらい。

褐色を帯びたくすんだ黄色い髪を清潔感漂うオールバックにしていて、面長に切れ目、シュッと尖った鼻筋。

それが集まった顔は整っていると思うが、鋭い眼光とピリピリ相手を刺激してくる嫌な感じのオーラと神経質そうな雰囲気によりあまり近寄りたくない感じの男性だ。

袖がヒラヒラした白いシャツに、見てすぐわかる様な高級感漂う黒みを帯びた赤色のベスト。

そして胸元やポケット部分にこれでもかとついているフリル達と沢山ついてる装飾品達などなど、他の教員達が全員白いシャツに茶色いベストというラフな格好をしているのと比べると、少々浮いている感がある。


「 んん~??? 」


中学院は身分よりも実力重視!ーーーーなアーサーの理念の元運営されているため、こういった、いわゆる ” 周りと一線引きたいな~! ” 的な感じの人物は多分近寄るのも嫌がるはずだが……


どういう事だ???


首を傾げながら、更に彼のここまでの試験官っぷりを振り返ると、他の教員が『 実力を測る 』目的で受験生達と戦っているにも関わらず、彼だけはその目的がぶれているような気がする。

とりあえず一貫した動きを見せずに、悪く言えば人によって態度や行動を変える感じ?

評価はフラン学院長達により正当にされていたため黙っていたが、どうしてそんなことをするのかは分からない。


うう~ん?と考え込んでいるとーーーーー……



「 【 ライトノア学院 】剣術担当教師


< ジュワン・ベレーン・ゲレンズ >


35歳、爵位は< 子爵 >、バリバリの身分至上主義で有名な人、以前奥様に酷い暴力を行い離縁して以来ずっと独身。


ーーーっていう完璧なハズレ物件ですよ~。


あえて長所をひねり出して言うならぁ~?

剣術に関してはこの学院でNO.1の実力を持っていて、Bランクモンスターもソロで倒せる位の凄い実力を持っている事くらいかな~? 」


きゅるるんっ!と効果音でも出そうなウルウル、キラキラ目で俺を見上げてくる人物がいつの間にか直ぐ隣にいて、その問題の教員の情報をペラペラと話す。


その人物は先ほど出会った【 エルフ族 】の少女……いや、少年の< サイモン >であった。


「 ーーー~~っ!!?? 」


気配が全くなかったことに驚き、思わず上がりそうになった悲鳴を必死に飲み込む。


「 リーフ様ぁ~か・わ・い・い~♡ 」


口元を押さえて耐える俺を見て、サイモンはキャっ!と嬉しそうに笑いながらもたれかかってこようとしたが、肩が触れるその前にレオンが俺をヒョイッと持ち上げた。


それにより寄りかかる先をなくしたサイモンは「 キャンっ 」と尻尾を踏まれたワンワンのような悲鳴をあげそのまま倒れてしまう。

ドキドキしながらそれを見下ろしていると、後ろの方から彼の双子の妹の< リリア >がボインっボインっと2つの山を揺らしながらこちらに走り寄ってきた。


「 もう……また兄が申し訳ありません。

兄さん、リーフ様のご迷惑になる事は辞めて。

不敬罪で首が跳ぶわよ? 」


「 いやいや、しないよ!そんな事。驚いただけだから大丈夫だよ。

むしろ色々教えてくれてありがとう。サイモン、大丈夫かい? 」


首が飛ぶと言う物騒な言葉を慌てて否定した後、倒れたままのサイモンに声をかける。


すると彼は横たわったまま、またきゅるる~ん♡とキラキラお目々で見上げてきた。

「 う~ん、駄目かもしれないですぅ~♡ 」

サイモンはしおらしく肩を揺らしてそう言ったが、、ため息を吐いたリリアちゃんに容赦なく首を掴まれ無理やり立たされる。


そんなぞんざいな扱いにもかかわらず、全くめげる事なくサイモンはにっこり笑うと、後ろで見ていたモルトとニールは男と分かっていながらもその可愛い笑顔に真っ赤な顔になり、ササッ~とレオンの後ろに隠れていた。


「 リーフ様のためならぁ~何でも情報を持ってきま~す!

僕の得意分野なので♡

ちなみに大好きなものは『 お金 』で、好きな言葉は『 玉の輿 』で~す! 」


はいは~い!と元気よく手を上げてそう言い切るサイモンに隣りにいるリリアちゃんはドン引きだ。


ーーー清々しいっ!

もうカッコいいと言っていいレベルで清々しい子だな、サイモンは。


その潔さに対し感心していると、リングの上から突然ーーーー


ガツンッ!!!


何かが当たる大きい音がしたため直ぐに視線をリングの上へ移す。

するとあの青色のフードの少女がリング外のだいぶ離れたところまで吹き飛んでいて、お腹辺りを押さえながら膝を付いて震えていた。


一体何が?!


急いでその子のところまで行こうとしたが、心底嫌そうな、はぁ~~~っというため息が元いたリングの上から聞こえてきたため、一旦足を止めてそこらに注目する。


「 全く・・汚らしい平民の、しかも臭くて仕方がない獣のガキがうっとおしい戦い方をしないで頂けますか?

ここは【 人族 】様の、しかも選ばれし者だけが通うことの許される崇高なる学び舎な~ん~で~す~。


言葉、通じてますかぁ~? 」


あの感じが悪い試験官、< ジュワン >が馬鹿にしたように鼻で笑いながらそう言い、更にはくるくると指を回しながら自身の頭を指した。


そのあまりの言いようと、状況から察するにあの青いフードの子はこの男に手加減なしの攻撃によって場外へ飛ばされたようだと気づき、こんにゃろ~!とおじさんの怒りはマックスに!

よっしゃっ!このジィジが鉄拳を食らわせてやる!

意気揚々とリングの上にあがろうとした、その時ーーー


「 ーーーてっめぇっ!!!メルに何すんだ、こらぁっ!!

次は俺が相手だっ!! 」


そんな怒号と共にレイドがジュワンへと飛びかかり、剣を思い切り振った。


ーーーーガキィィーンッ!!!!


大きな音をたて交わる剣と剣!

その火力もスピードもかなりのレベルにもかかわらず、ジュワンは全く動じることなくその攻撃を片手であっさり受け止めてしまう。

レイドはギリギリとジュワンを睨みつけながらそのまま連続で攻撃を繰り出すも、その全ては全く当たる気配がない。


「 全く次から次へと……汚らしい獣風情が。

家畜は家畜らしく大人しくそこらで草でも食べててく~れ~ま~す~か~? 」


そう言い終わったジュワンは、レイドとの間合いを一瞬で詰め思い切り顎を蹴り上げた。


「 ……っ!!がっはっ!! 」


顎を蹴り上げられた事でレイドが仰け反ると、ジュワンは手に持つ剣でがら空きの胴体部分を木刀で思い切り打つ。


その結果、レイドは大きく飛ばされ場外へ。


そして離れた場所のリングへと叩きつけられそのままバタンと倒れてしまった。


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