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第六章

256 俺がNO.1

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( リーフ )

その瞬間ーーーー……


「 き……きゃあぁぁぁぁーーーーー!!!! 」


上がるわ上がるわ四方八方から悲鳴の数々が。

受験生たちはおろか、フランさんをはじめとする教員達ですらお顔の色は深海の底色で、腰を抜かしてしまった人たちは、その場にヘナヘナ~とへたり込む。


パニックになっている皆を見渡すと、なんとヒロインソフィアちゃんが顔面蒼白で倒れそうになっているのをアゼリアちゃんが、同じく青ざめた顔色のまま支えている様だ。


ソフィアちゃんは物語の中で周りの人達同様、レオンハルトの呪いに対し大きな恐怖を抱いていた。

だからレオンハルトと本格的にイチャイチャし始めたのは呪いが解けてからだったのだが……今の彼女がどういった態度をとってくるのかは未知数なので、こればっかりは天にその命運をかけるしかない。


それにしてもーーーー……


右を見ても、左を見ても、まるで蜘蛛の子の様に逃げだそうとしている受験生達……

その姿を余裕の悪役スマイルで見ていたが、実は内心ドキドキしながらその様子を見守っていた。


おやおや~?

何だか思っていた反応の1000倍以上は大騒ぎになってしまったぞ?


流石は中学院、呪いに対する恐怖をキチンと理解している優秀な子たちが多いご様子。

小学院の時と同じ反応を予想していたのでこれは中々の誤算。


ーーーーしか~し!


俺はキラッ!と目を輝かせ、偉そうに腕を組んだまま騒ぎが収まるのを待つ。


人生は何事も奇想天外、事実は小説よりも奇っ怪なり~!

何事も経験、経験!


そう心の中で呟いて頷いていると、ハンカチで口元を抑えたフラン学院長が俺に向かって話しかけてきた。


「 ……リーフ殿、これは一体どういうおつもりか。

そんな……そのような恐ろしい存在をこの学院に連れてきて…… 」


フラン学院長がそこで、うっ……と嘔吐くと、まるでそれが合図であったかの様に、受験生達は口々にこちらに向かって言葉を吐きだす。


「 なんなんだよ……あの化け物は…… 」

「 呪いの化け物…… 」

「 あの呪い、空気で感染するんじゃ…… 」

「 に、逃げないとっ!!! 」


そう言って受験生たちはそのまま出口の方へと逃げようと駆け出そうとしたその時ーーー


「 こんなものが怖いなど、この腰抜けどもめっ!!!

ここにいる者たちの実力などカユジ虫以下っ!!

この俺の敵ではな~い!!! 」


俺の発言に全員の動きがピタリと止まった。

それを確認しながら俺は、ヤレヤレ~とわざとらしいため息をつき、動きを止めこちらに注目する受験生達に言い放つ。


「 数多くの優秀な人材を排出してきた【 ライトノア学院 】……どんな凄いものかと来てみればこの程度!

とんだ弱虫集団だ、君たちは! 」


悪役に相応しき笑みを浮かべながら、俺はコツコツと前に2~3歩進み出た後、右手を天に向けビシーーっ!!と指し示す。


「 俺が不動のNO.1!!

君たちが真に恐れるはこの俺っ!リーフ・フォン・メルンブルクのみ!!!


俺はこの中の誰よりも強~い!


君たちごときこの俺が戦うまでもなく、この忠実なる奴隷のレオン相手ですら指一本触れることなど出来ないだろう!! 」


ここで天を指し示していた手を引っ込め親指でビシッと自身の胸を指し示せば、受験生たちの目の色が変わる。


なんてったってNo.1中学院に通おうと決意したくらいだ。


ここにいるのは総じて実力が高く負けず嫌いな子たちばかり。


訳のわからん平凡砂ネズミ男にここまで言われてしまえば後には引けず、逃げることなど出来ないはず。

そして予想通り足を完全に止めた彼らを見て、俺は完全にトドメをさすため、腕を組み直しもう一度わざとらしく息を吐く。


「 さぁ~てとっ!!

俺は全員が恐れて逃げ出そうとしているレオンにこ~んな事もできちゃうぞ~?


レオ~ン!!さぁさぁっ!!いつも通り、俺の ” 馬 ” になるんだ! 」


俺の酷い暴言に対し、社畜の完全体であるレオンは幸せそうな笑みを浮かべた後「 はい。 」と返事をし俺に背を向け跪く。


ハイハ~イ、じゃあちょっとお邪魔しますね~。


俺はポスンッとその背に乗っかりしがみつくと、それを見計らったようにレオンはスッと立ち上がった。


「 わっ~はっはっ!!どうだ!弱虫カユジ虫達め!!

俺はいつもこうやってレオンを虐めている!


他にも ” 椅子 ” とか ” 的 ” とか!

ご飯も俺の食べ残ししかあげてな~い! 」


大きく笑いながらそんな悪逆非道の数々を上げていったが、青ざめ固まってしまった受験生達と教員達の反応はイマイチ。


これではパンチが足りなかったか……流石はナンバーワン中学院!


ゴクリと唾を飲み込むと、俺は更に続けて言った。


「 え~と……あとは毎日 ” 介護 ” とか ” ベビーシッター ” とかもしているし……。

ーーーあ、休みはないよ。

365日、なんか毎日いるね。気がつけばトイレにもいる。夜立ってる。

朝は朝日が昇った時には既に窓の外に待機しているしーーー


……あれ?レオンちゃんと寝てる??もしかして窓の外で寝てるのかい??? 」


虐め内容を追加していく内にちょっとした疑問が湧き上がり尋ねてみると、レオンは、ん~??と少し考え込んだ後、フルフルと首を横に振る。


どうやらお外では寝ていないらしい。


それにホッとしながら、あとは~とレオンにしてきた事を更に追加して言おうとしたが、左右のリング外からババッ!!とモルトとニールが飛び出してきて俺とレオンの横にそれぞれ着地。

そして何処からか持ってきたらしい< 拡音機 >を取り出し、受験生たちに向けて話し始めた。


< 拡音機 >

音を大きく伝える事のできる円錐型の筒状の魔道具。

大きさはだいたい20~30cm程で、自身の魔力を流して使うタイプと魔力電池をセットして使うタイプの2つがある。


「 安心してくださ~い!この呪いは移りませ~ん!!

わが街で被害を受けた者は一人もいませんので完全に安全な事が証明されてま~す。 」


「 俺達も4年間欠かさず一緒にいましたが全然平気っす~!

リーフ様が今、それを体を張って証明してくれていま~っす! 」


そうして2人揃って両手をササッと俺とレオンの方へ向け、その姿をその場の全員に見せつけた。


ーーーーあ、そっち?


一瞬キョトンとしてしまったが、モルトとニールの活躍により俺は、はっ!とする。


確かに呪われるかもとヒヤヒヤしている中、レオンを虐めてるアピールをしても意識はそっちにいってしまう。

言うなれば、命綱なしのバンジージャンプ!

それは確かに楽しめない!

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