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第六章

228 おめでとう、子供達よ

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( リーフ )

三人の様子をザッと見回して、一番柔軟性があってかつすぐ落ち着いてくれる可能性が高いニールからまずは事情を聞こうと怖がらない様ゆっくりと近づいた。


「 ニール、突然どうしたんだい?

黒い虫なら俺が退治してあげるよ。 」


そうしてヒュンッヒュンッと黒虫を叩くジェスチャーを披露すると、布団の塊のようになっているニールはビクビクッと震えたあと、そろりと布団から顔を出す。

その顔は涙と鼻水でベチョベチョだ。


「 リ、リ、リーフ様ぁ~・・お、俺・・俺っ・・・!! 」


めしょめしょしながら下半身を押さえている姿を見て、俺は全てを悟った。


あーー・・・なるほどニールもか~。


どうやらニールもレオン同様、昨日のダンス大会に刺激され、出発進行、発射オーライをしてしまったらしい。


ーーーと、いうことはモルトもか・・


そこでモルトの方に視線をずらせば、スンスンとすすり泣く声が・・

ニールは俺に状況を確認させた後、また布団の中に隠れて「 うわぁぁぁーーー!!! 」と叫び声を上げる。


ニールの絶叫、モルトの呪詛のような呟き、そしてレオンのゴンゴンという頭を打ち付ける音をBGMに、俺たち幼馴染~ズはグリモア試験日当日の朝を迎えたのだった。


◆◆◆

朝の朝食は豪勢な牛肉フルコース。

牛肉を余すこと無く使った数々の絶品料理に目を輝かせながら、俺は両手をパンっと合わせる。

「 いただきま~す! 」

元気よく挨拶した後は、まずは牛肉をシンプルに焼いた肉切れをポイッと口に入れ噛みしめる。

程よい焼き加減。

表面はカリッと、そして中からは肉の旨みを凝縮した肉汁が飛び出す!


「 ーー~~っ!!んんん~!! 」


そんな肉の旨みに加え、レモンの酸味と塩胡椒、ピリッとした唐辛子の様な刺激が混ざりあって口の中がお祭り騒ぎに。

しかしそこで朝の悲痛な牛の鳴き声を思い出してしまい、気持ちはズドンっ!と沈んだが、一つの命を使った大事なご飯。

しっかり味わおう。

そう心に決めてその旨さを堪能し始めた。


そのまま夢中になってもぐもぐしながら、チラリと3人を見回すと、こんな美味しい料理を前に全員まるでお葬式の様な雰囲気でズズー~ンと暗く沈んでいるのが目に入り、レオンに至っては動揺が凄すぎてガタガタ震えながらスプーンの柄の部分でスープを掬おうとしている。

全然掬えてな~い!

俺はあんまりな状況に、息をふー・・と吐いてからレオンに近づいた。

するとあからさまにビクっーー!!!と身体を震わせたレオンの手からスプーンを取り上げ、そのままスープを飲ませてあげる。


「 三人ともちょっと動揺しすぎだよ。

今回の事はとても喜ばしい事なんだから素直に喜ぼう!

なんたって大人になったってことなんだからさ。 」


離乳食を召し上がる赤ちゃんのように大人しく俺の手からスープを飲むレオン。

「 喜ぶ・・ 」「 大人・・ 」とブツブツつぶやくモルトとニール。


そんな三人の様子を注意深くチェックしながら、俺は自分のメインディッシュの牛のステーキを一切れずつモルトとニールのお皿に置き、レオンにはその口にポイッと放り込んでやった。


「 無事大人になった君たちへの俺からのお祝いだよ。

おめでとう!そしてようこそ~、大人の世界へ! 」


パチパチと大きく拍手喝采する俺と皿に置かれた牛のステーキを交互に見るモルトとニール。

そしてモッモッと一心不乱に口の中のステーキを食べるレオン・・

まだその雰囲気は固いが少しだけ気分は上がってきた様に見える。


ここはもうひと推しか・・

そう確信し、キラっ!と目を輝かせた。


実際モルトとニールは、レオンのEDの恩人といってもよい素晴らしい働きをしてくれた。

つまり今の状況は、赤信号、皆で渡れば怖くない!( よい子は青になってから渡ろうね! )効果状態なのだ。


レオン一人で粗相してしまっていたら、俺だけでなくモルト、ニールもその恥ずかしさから絞め殺されてたかもしれない。

そして二度とレオンのお象様は立ち上がることはありませんでしたーーー的なバッドエンドになってた可能性も・・


それを考えると、ゾゾゾ~と背筋が震えてしまい、一瞬で立ってしまった鳥肌をシャカシャカとさすった。

そんな恐ろしい状況下で、モルト、ニールが加わってくれたお陰で恥ずかしさは分散され、心はなんとかその衝撃に耐えられたというわけだ。

俺は心からの感謝を込めてモルトとニールの皿に、更にデザートの甘タレチーズボールもひょいひょいと追加で入れておく。

しかしそれでもまだまだびみょ~な雰囲気の彼らに、俺はゴホンっ!とわざとらしく咳をした後、勢いよく立ち上がり大声で叫んだ。


「 男は皆スケベだーーーー!!!! 」


突然の俺の叫び声に、三人はびっくりした顔で俺を見上げるが、まだまだ俺の宣言は続く。


「 そしてそしてーーー!!

俺はむっちんむっちんのおっぱいが大好きだーーー!!! 」


特に収まりきれないはみ出た感が強いむっちりボディー!

コレは絶対に譲れない!!


前世で片思いしていたみち子さんの最強パーフェクトむっちりおっぱいを思い出し、言葉につい熱が入ってしまった。


ふんふんっ!!と鼻息荒く叫ぶ俺に、ザワザワと動揺し始めたモルトとニール。

俺はそんな二人に向かい、さぁ、今度は君たちの番だよと手を挑発するようにクイクイ動かすと、覚悟を決めたらしいニールが、ババッ!!と勢いよく立ち上がり、大声で叫んだ。


「 オッ俺はむっちりしたお尻が大好きっすーーーー!!!

プリンプリンのお尻の女の子と結婚したいでーーーす!!! 」


ほほぅ?ニールはお尻派か・・

俺がコクリと頷けばニールもコクリと頷き、そのまま二人で沈黙を続けるモルトへと視線を移すと、モルトはあからさまにバッ!!と視線を反らした。


「 きっ、貴族たるもの自身の本音を晒すべからずっ・・・・ 」


モルトはブツブツ呟き滝のような汗を流したが、俺とニールはクスリと笑い、向かい合って手を繋ぐ。

そしてフォークダンスを踊るようにモルトへと近づき、俺とニールの間に空いている空間にスポリとモルトを囲い込むと歌う様に囁いた。


「 モルト、俺たちは貴族である前に一人のスケベな男だよ~?

むっちん万歳。 」


「 モルト、たまにはムッツリを開放してあげても・・良いんじゃないっすかね?

尻プリン万歳。 」


すると観念したのか俺とニールに囲まれたモルトは、突如ボロボロと泣き出して、グワッと右手を空に掲げ大きく叫ぶ。


「 お、俺は腰回りと太ももがむっちりした子が好きでーーーす!!!

昨日の大会の29番リンリンちゃんがどストライクでしたーーー!!! 」


俺とニールは、うう~ん?と一瞬考えて、同時に、あ~!と思い出す。

弾けるような太ももにドシッとした腰回りが印象的だった子が確かにいた。

腰使いがすごかった子だ。


おぉ~!!


ニールと共に拍手を贈ると、モルトも巻き込み三人でくるくる回った後、大人しく席につく。


すると二人は先ほどまでの暗い雰囲気は吹き飛んでいったようで、ニコニコしながら朝ごはんを食べ始めたので、良き良きと大きく頷きながらーーーー

さて、レオンはどうしようか・・と考えた。


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