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第五章

216 それは・・いいのだろうか?

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( レオン )

自分の出番を今か今かと待ちながら、大会とやらが順調に進んでいくのをボンヤリ見ていると、とうとうリーフ様の出場する< ダンス大会 >が間もなく始まるというアナウンスが流れる。


「 よ~し!俺の出番だ!いってきま~す。 」


リーフ様はそれを聞きとだけ言って、非常に上機嫌のままステージの方へと向かっていった。

そしてそのアナウンスを聞いた周囲の人々はーー・・


「 待ちに待ったダンス大会だぜ!やっしゃ~!!俺、リンちゃん応援するぞー!! 」


「 俺は断然、ローレンちゃん!!あのおっぱい最高~!! 」


「 ばっかやろー!やっぱりここはライラちゃんだろう!期待の新人!あのむっちり太もも最高だろ! 」


突如わいのわいのと一斉に騒ぎ出し、わーーっ!と叫びながら前の方のスペースへとあっという間に移動してしまった。

その勢いに、いつの間にか組み合っていた細い方と太い方が動きを止め、激しく動いたせいだろうか?滝のような汗をダラダラと垂らし始める。


「 ・・なんだかとても嫌な予感がするのだが・・・ 」


「 奇遇っすね、俺もそんな予感がしていたところっす・・ 」


二人は立ち上がってパッパッと服の泥を払い、直ぐにステージの方へと視線を向けた。

するとその直後に< ダンス大会 >が開始し、そこら中から今までで1番の歓声が上がり始める。


煩い・・


ひときわ騒がしくなった周囲にうんざりしながらも、俺はリーフ様が登場するのを今か今かと待ちわびていたのだがーー

何故かステージにでてくる女達が全員ほぼ裸ででてくることに気づいた。


「 ・・・・・? 」


ま、まさかリーフ様もあんな裸同然の格好で??

そんな考えが頭をよぎると同時に顔に熱が集中し、それをごまかす様にソワソワと身体を小さく揺らす。


そ、そういう大会のようだし、それが普通なら仕方がない・・のか? 

ーーーーいや・・如何にルールとはいえそんな姿を公衆の面前で晒すのは、何だか・・嫌だ。


ぐるぐるぐるぐるーーー……


どうにも思考が頭の中を回ってしまい纏まらない。


そんな相反する感情に翻弄され固まっていると、その後現れたリーフ様はココにいたときと変わらぬラフな格好そのままで登場、列の一番後ろにちょこんと並んだ。


その姿に何だかほっとしたような、残念なような?


そんなよく分からない気持ちを持て余しながら、今度は他の参加者である女達が順々に踊っている姿をぼんやりと見ているとーーーー

今度はガチンッと体が固まる。


くねくねと腰を振ったりお尻を突き出したり、足を大きく上に上げて下半身を余すこと無く見せつけたり・・

自身の身体をこれでもかと見せつける動きに加え、ハァハァと乱れる息に紅潮する頬、全身を濡らす汗・・まさかこんな動きをリーフ様もするのか?


そ、それはいいのだろうか・・?


多分全員同じ様な踊りをしている事から、恐らくそれが正しいダンスのルールなのだろうとは思う。


・・だが・・いや、しかし・・


ドキドキーーー

ドキドキーーー・・


内心の動揺を振り払うかの様にブンブンと顔を横に振ったが、今目の前で大きくお尻をプリプリと振って見せている女の姿がリーフ様に切り替わると・・ブワッと体中に電流が走った。


・・これは駄目だ。


やっぱりそんな可愛いらしい姿をこんな大勢の場所で見せるなど、正しくないに決まっている!


ーーー・・でもリーフ様がやりたい事を邪魔して悲しませるのもよくない・・

それに多分また怒られる・・


修行の時、あまりに辛そうだったので、居ても立ってもいられなくなった俺が、紫のもじゃもじゃが課してきた課題をリーフ様に代わって片付けた。

それにリーフ様は怒り、こう言った。


” 辛くても良いんだよ。そういうルールなんだから。 ” と。


” ルールは守ろう ” は、リーフ様に教えられた事。


一体俺はどうすれば・・・


注意されたことをするわけにはいかず、俺はオロオロするばかり。


モヤモヤとなんだか不快な気持ち。

ほんの少しのドキドキした気持ち。


そんな気持ちを抱えながら、ソワソワと体を小刻みに動かす。


自分一人では答えが出ない・・

ならーーー


俺は、細い方と太い方へと視線を向けた。

この二人はいつも何かあればゴキブリよりも素早く動くため、何かしらの行動を見せるだろう。

そう期待して見たのだがーーー

細い方はハンカチで顔を半分隠しながらチラチラとステージの方を見ていて、太い方は小さな望遠鏡のようなものでジッとステージを見ている姿が目に入った。


「 ・・・・。 」


ーーーなるほど?


ここはとりあえず最初はリーフ様のお望みを叶えるため大人しく見守り、動きが派手になってきたらお止めするべき


俺は瞬時に答えを出す。


だからこそしっかりとその動きを観察し、何かあればすぐに動く・・!


そう決意してジッ・・とリーフ様を見つめた、ちょうどその時。

リーフ様の出番が回ってきた。


俺はすぐに惜しみない拍手をし、ちょこんとステージに立つリーフ様の姿をこの目に焼き付ける。


ドッキン・・

ドッキン・・・


高鳴る心臓を必死に抑え、瞬きも忘れてジッーとリーフ様を見つめているとーーー

やがて彼は手を上にあげ、独特な音楽と共にリズミカルなダンスをし始めた。



?????

なんだか思っていたものと違う。


そんな疑問を感じたが、直ぐに ” 可愛い ” をギュッと凝縮したようなダンスに、俺は夢中になった。


それと同時に心臓は落ち着かない感覚を伴ったドキドキではなく、ホワッとした穏やかなドキドキへと変化する。


何となく落胆するような気持ちがあったものの、圧倒的にホッとしたような気持ちの方が強く、俺は最後までリーフ様が楽しそうに踊るその姿を目に焼き付けた。


もちろん大会はリーフ様の優勝。

こんなにも可愛いのだからそれは当然の事だとトロフィーと紐の様な物?を持って走ってくるリーフ様に「 素敵でした。 」と伝えた。


「 そうだろう、そうだろう!凄かった?俺のダンス! 」


リーフ様は嬉しそうにそう聞いてきたため、俺は以前リーフ様の言っていた事を思い出す。


修行の合間にカユジ虫の群生地に入ってしまった時、危険を察知した虫達はぴょんぴょんと一斉に飛び跳ねてしまった事があった。


・・邪魔。


俺の第一感想はこれだ。


しかしとりあえずはリーフ様の出方を見ようと黙っていると、相当な数のカユジ虫がいたらしく、その姿はまるで白い流れ星の様。

更に鬱陶しさが上がったにも関わらず、リーフ様はそれを見て目を輝かせる。


” 凄いね~、なんだかダンスでも踊っているみたいだね。

カユジ虫は世界一可愛いダンス名人だ! ”


この事から、リーフ様の可愛いは恐らくカユジ虫・・

だから俺はリーフ様流の褒め言葉を素直に伝えたら「   ありがとう・・? 」と言って喜んでくれた。

リーフ様が喜んでくれた!

俺も嬉しくて、また次もこの褒め言葉を使おうと決意していると、リーフ様がポンポンと俺の背中を叩く。


「 次はレオンだってよ!頑張っておいで 」


ニコニコと笑いながらリーフ様がステージの方を指したので、俺は、はっ!と白いドレスの砂ネズミの事を思い出した。

これに勝てばあれは俺の物・・


ーーーゴッ!


心の中で激しい闘士の炎が燃え上がりスッと戦闘モードに切り替わると、全力でそれを取りに行くため、そのままステージの方へと向かった。


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