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第五章

213 次から次へと・・

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( レオン )

そこで待ってましたとばかりにお茶の用意をしていた細い方が、リーフ様にお茶を差し出しながらその経緯を話すと、事情を飲み込んだリーフ様は俺にお礼を言う。

それに気分はグングンと上昇しながら ” 次は防音魔法を忘れない様にしよう ” と決意した、その時ーーーー突然甲高い女の声が大きく響いた。


それに驚きリーフ様は視線を動かす。


ムッとしながらその視線を追っていけば、そこにはピンクの髪の女がいて、首を撥ねたモンスターを指差し驚いた顔をしていた。


「 こ、こ、こ、これ!!ちょっとちょっと!ゴブリンキングじゃない!

緊急討伐依頼が出たからいち早く探しに来たのに・・

ねぇ、君達!コレ誰が倒したか知ってるかな? 」


そんな言葉から始まった話がつらつらと続き、更にどこからかこの女の仲間らしき人間たちまで集まっては何やら話しを始めてしまう。


まぁ、リーフ様は騒がしいのが好きなので、悪いものではないか・・


それによりこの場は非常に騒がしくなってしまったがそう判断し、俺はその様を大人しく見守りつつ心底役に立たない馬をジロジロと叱咤する様に睨みつけた。

そしてビクビクオドオドするしかできない馬にため息をつくと、騒がしい連中が少々興味深い事をし始めたので、俺はそれを観察するため近くに移動する。

ーーーザックザック

掘り掘り~・・

モンスターの死骸を切り裂いては、体内にあったらしいキラッと光る石のようなものを取り出す煩い連中達。

その石をジッと見つめると、なにやらモンスターの動力源の様な、微量な "   力 "   を感じた。


なるほど・・?

あんなモノが体内にあったのか・・


その取り方を確認しつつリーフ様とピンクの髪の女の話に耳を傾けると、どうやらアレは人で言う心臓部、< 瘴核 >というもので高く売れるらしい事が分かった。

それを理解した上でカシャカシャ!と頭の中で普段のリーフ様の行動を思い出す。

どうもリーフ様はたまに街にモンスターを持っていっては売っていた事から、恐らくお金が好き。

つまり今までモンスターは全て首を撥ねて消してきたが、今後はコレも捧げれば多分喜ぶはずだ。


煩い連中達の動きをしっかりコピーしながら、俺は確信してコクリっと頷いた。


リーフ様がお金が好きな事に気づいた後、俺は率先して光る石などを拾ってはリーフ様に献上している。

すると俺からの捧げ物を貰ったリーフ様はいつも輝く様な笑顔を見せてくれるので、きっと< 瘴核 >捧げればもっと喜んでくれるはずだと考えた。

完璧に瘴核とやらの取り方をマスターした俺はニヤリっと笑い、その後はまた馬を睨みつけていたのだが、リーフ様の呼ぶ声で意識はそちらへ向く。


リーフ様が呼んでくれた!嬉しい。


ホワッとする心のまますぐにそちらに向かうと、リーフ様は突然俺の顔に自分の顔をスッと近づけてきた。


ドキドキ・・

ドキドキ・・


こんな事でも心臓は跳ね上がる。

そしてそれに追い打ちをかけるようにボソボソと耳元で囁かれる声と吐息に、内容などとてもではないが耳には入らず、俺はただ必死にコクコクと頷いた。


急な接近はなんだか胸が落ち着かない、でもそれも嬉しい。


ソワソワしながらリーフ様が< 瘴核 >を騒がしい連中達に渡すのを見ていると、いつの間にか大きな黄色いヒヨコの様なモンスターが現れ、騒がしさはより一層増した。


どんどんと増える俺の世界の ” 邪魔者 ” 達・・

正直言えば全て消してしまいたい


またしても気分は急降下していき、その忌々しさに舌打ちしたがーーーーリーフ様の目が輝いているのを見れば、結局俺は傍観するしかない。

仕方なく必死に我慢して見守っているとーーー

” へっ! ”

ヒヨコもどきが無礼にもリーフ様を見下ろし鼻で笑ったのだ!!


その瞬間、俺はレイピアを抜きすぐさまそのヒヨコもどきの首を刎ねようとしたのだが、他ならぬリーフ様にそれを止められてしまった。


「 レオン!ご飯!ご飯食べよう!!俺、お腹すいた!!

一緒に食~べ~よ~!! 」


空腹を訴えるリーフ様。

奴隷の俺は、その望みを叶える事が最優先・・


ーーー仕方ない。


小さくため息を吐きながら、ギャーギャーとうるさい連中は放置し、スッとレイピアをしまい込んだ。



結局その後は、細い方と太い方が用意していたレジャーシートの上に全員で座り込み、ランチをすることになった様だ。

リーフ様御所坊のご飯の時間。

きっとご機嫌で食事をしてくれるだろうと思いきやーーー何故かいつもより食が進んでいない。

具合でも悪くなってしまったのだろうか・・?

心配になってしまったが、うるさい連中からこれから向かう街の祭りの話を聞くとリーフ様の目がまた輝いたため、大丈夫そうだと安堵の息を吐いた。


” 参加自由だって~ ”

” 景品豪華だってよ~ ”


” せっかくだし思い出作りしようよ~ ”


そう言ってリーフ様は細い方と太い方の周りをぐるぐると回り始める。


それを見た俺はというと、詳細はわからないが、とりあえずリーフ様が望むなら何でもすると、そんな気合い十分にレイピアをビュンビュンとふってしっかりアピールしておいた。


「 皆さんとても仲良しなんですね。幼馴染って事は全員同じ爵位なんですか? 」


突然騒がしい連中の一人がそう質問してきたので、細い方と太い方は ” 男爵 ” だと答え、リーフ様もそれに続いて答える。

「 俺、公爵! 」


ーーーーーバターーーンッ!!!


リーフ様が答えた直後、何故か騒がしい連中達は泡を吹いて気絶してしまい、慌てて駆け寄るリーフ様。

それを見ながら、ただでさえ邪魔な存在に出発が邪魔され、俺はスッと目を細めた。


「 えぇっ!!皆どうしたんだい??!貧血??? 」


オロオロと慌てるリーフ様をよそに俺の気分はあまり良くない。

ムスッ!としながら黙っていると、細い方、太い方、馬の手綱を握る奴はハァ・・と大きなため息をついた。


「 まぁ、仕方ないな。 」

「 仕方ないっすね~。 」


細い方と太い方はそう言いながら、冷静にそいつらを馬車に運び込むと、自らは前の運転席へ。

「 俺たちはここに座りますので、リーフ様はレオンに乗って下さい。」

二人はニコッと笑いながらそう言った後、今後のルートを馬の手綱を握るやつと確認し始めた。


これは吉報!


俺の機嫌は瞬時に回復し、喜んでリーフ様に背を向けたが、何故かあのヒヨコもどきに興味を示してしまったためまたしてもムッと嫌な気持ちが心に漂う。


” 俺の方があのヒヨコもどきより・・・ ” 

そう言おうとしたが、キラキラした目で見上げられては言葉は引っ込んでしまった・・


リーフ様の望みは全て叶える。

リーフ様のやりたいことは邪魔しない・・

諦める以外の選択肢はないとため息をついた、その瞬間ーーー俺は先ほどの無礼な態度をとったヒヨコもどきの存在を思い出した。


リーフ様はお優しいから無用な殺生に心を痛める・・しかしあのような態度ーーーー次はない。


「 では、少々お待ち下さい。 」


俺はリーフ様にそれだけ伝え、あの不届きなヒヨコもどきに近づいた。


そいつは「 ク・・クピィ・・ 」と降参の意を唱えたが、問答無用でその首を鷲掴む。


「 リーフ様は美しい、リーフ様は女神を遥かに凌駕する慈愛のお心の持ち主・・リーフ様はーーーー 」


その魅力を存分に伝え、最後にーーー・・


「 それを害する者はどうなるべきか・・・分かるな? 」


しっかりとこの世界の守るべきルールを伝えると、そのヒヨコもどきはキラキラ目を輝かせ、直ぐにリーフ様に背を晒す。

それで良いと小さく頷くと、リーフ様はそのヒヨコもどきに嬉しそうにお礼を言い、跨がったので俺もそれに続いた。


そして ” 椅子 ” になる時同様、しっかりと囲うように腕を回せば、まるでこの世界にいるのは俺たち二人だけという高揚した気分を俺に抱かせてくれた。


ずっと俺の腕の中にいてくれたら・・


そんな妄想は、俺の心をポカポカと暖かいものでいっぱいにしてくれるのと同時にーーーーーー




黒い黒いドロドロした気味の悪いものを静かに心の中に広げていった。

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