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第五章

212 邪魔なもの

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( レオン )

俺は自身の仕事をしっかりと全うすべく、リーフ様をソッと持ち上げそのまま馬車へと乗り込んだ。

そしていつもと違う未知の乗り物に対し最大限の警戒をしたまま、落下しないようしっかりとリーフ様の胴体を抱きしめる。


暖かい・・それにいい匂い。


お馴染みとなってきたとはいえ、もたらされる感覚に俺は夢中だ。

思う存分その幸せを堪能していると、俺達が座った直後いつもリーフ様の側にいる細い方と太い方も乗り込んで来て俺たちの前に座る。


「「 お願いしまーーす! 」」


二人が前にいる御者に向かってそう言うと馬車は走り出し、グリモア目指して進んでいった。


それから少し経つと、俺の腕の中にいるリーフ様はいつものように収まりが良いところを探す動作を始めーー直ぐに寝息を立て始める。


その寝顔を見ながら湧き上がる感情は ” 可愛い ” だ。


リーフ様は世界で一番 ” 可愛い ” 

だから何時攫われてもおかしくはないから俺の心配は毎日尽きない。


そんな不安感で一杯になりながら大きく息を吐くと、開け放たれた窓から入る風にリーフ様の髪が僅かに乱される。

それを丁寧にちょいちょいと直していると、細い方と太い方はテキパキと軽食類や本などをバックから取り出した。


「 まだ当分つかないからな・・。

リーフ様が起きたら持ってきたゲームをお出ししようか。 」


「 リーフ様の好物は後で出すっす。」


チラッとリーフ様に視線を向けてグッスリ眠っていることを確認すると、二人は各々好きに過ごし始める。

そして俺は寝てしまったリーフ様を見つめたまま、穏やかでじんわりとした幸せの時間を堪能していた・・・・



ーーーが・・・



「 ーーーひっ!!な、なんてこった!!

ゴブリン・キングです!!

なんでこんなところにCランクモンスターがっ・・・!! 」


そんな無粋な声で、せっかくの幸せの時間に水が差されてしまった。

更に今度は ” 馬 ” どもがザワつき出し馬車内がガタガタと揺れる。


たかがモンスターが出たくらいでこの低落・・


やはり ” 馬 ” は駄目だと再確認し、思わず舌打ちしてしまったが、同時にピンッと閃いた。


このままいけば、あのリーフ様の関心を一瞬でも引いた邪魔な ” 馬 ” は、消え去ってくれるかもしれない。


願ってもない事だと上機嫌でまたリーフ様の ” 可愛い ” 寝顔を見つめ続けていると、太い方が窓から顔を出し、前に座っている男に向かって言った。


「 大丈夫っす~。とりあえず落ち着いて馬車を脇に止めて下さい。

そこで馬を一緒に宥めましょう。 」


その言葉に前に座っている男は焦りながらも、なんとか指示通りに馬車を道の脇に止め、馬を落ち着かせ始める。


「 じゃぁ、俺も手伝ってくるっすね。 」


そう言って太い方は外に出ていき、細い方はそれを見届けた後、ビシッと俺に向けて指を差した。


「 いいか?レオン、この馬車はリーフ様の持ち物だ。

馬も車体もそれはそれはお気に召したご様子だっただろう?

それは分かるな? 」


確かにリーフ様の目は輝いていた・・。

そのためコクリと頷くと、細い方は続けて言った。


「 つまりこの馬車が損害を受けたら、リーフ様は悲しむということだ。


レオンはそれでいいのか? 」


ーーーよくない。

それは全力で止めるべき事だ。


そう決意し、可愛い寝顔で眠るリーフ様を起こさない様に、ソッと片手で抱っこすると、そのまま馬車の外にでた。


「 ギ・・ギィィィィーー!!!! 」


外に出た瞬間、一斉にコチラを睨みつけてくるモンスター達。

更にそのまま襲いかかってきたので、一瞬で首を吹っ飛ばしてやった。


ーーードサ・・

ドサドサドサ~!!!


首を失った胴体は次々と地面に倒れていき、行く手を遮る邪魔なモノは消え去ったがーーー

なんと忌々しい事に、そいつらの鳴き声が無駄にうるさいせいでリーフ様が起きてしまったのだ。


「 もう着いたのかい?俺どれくらい寝てた?

体勢変えてくれてありがと~!

でも俺その程度で床ずれしないよ~。 」


そう言って目を擦るリーフ様はとても ” 可愛い ” 


俺は起こしてしまった非礼を詫び、そしてまだ目的地に到着していない事を伝えると、リーフ様はむにゃむにゃと視線を周囲に走らせる。

するとその先には馬車の進行方向よりやや逸れた場所にいたゴブリン・キングがいた。


リーフ様の興味を無駄に引く。

邪魔。


思わずムッ!として、、リーフ様が何かを言う前に、すぐさまその邪魔なヤツの首を撥ね馬車の方へと戻った。

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