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第五章

209 繊細少年

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( リーフ )

あ、朝ごはんって言ったから傷ついたんだ・・


レオンの悲しげな顔を見ながら、ワナワナと体を震わせる。


そりゃ~そうだよ。

納豆ご飯とかゆで卵とか身体に書かれてごらんよ、酷い!って絶対思う!


「 レ、レオ・・ 」


心の中でオロオロと慌てながら、言い訳と謝罪をしようと口を開きかけたその時・・・

レオンは、はっと我に返り困った様に笑う。


「 すみません、直ぐに洗いますね。」


そう言って俺をクルリと回転させ、背中を酷く丁寧な手つきで体を洗い始めてくれた。

それにビクビクしながら大人しく身を委ねていると、レオンが突如話し始める。


「 リーフ様はまるでお日様の様ですね。

暖かくて・・とても・・幸せな気持ちになります。 」


「 ーーへっ?・・そ、そうかい?ありがとう・・ 」


てっきり "    朝ごはんは酷いです・・  "   的な恨み節を言われると身構えていたのだが、どうやら俺の基礎体温のお話だった様だ。

俺は小さい頃から基礎体温が高く、普段は加齢臭お化けだの言って逃げてく子供達にも冬は大人気。

あれよあれよと皆が俺を求めてやってくる。

夏は嫌われ者、冬だけ人気者、それが俺。

少しだけ平凡から逸脱している個性にニヤリと笑うと、レオンは突然手を止めボソリと呟く。


「 ・・本当は分かっているんです。

俺みたいなのがリーフ様に触れたら・・・汚してしまうって・・・ 」


レオンの悲痛な心の叫びに俺は、あちゃぁぁ~と頭を抱えた。

やっぱり洗浄魔法と水浴びだけでは汚れがとれていないんじゃないかって気になっていたか・・

自身の嫌な予感が的中してしまったことに嘆く。

そして耐えるようなレオンの声に、今まで悩んでいたが聞けなかったという大きな苦しみが伝わってきた。


魔法うんぬんが存在していなかった元日本人の俺としては、洗浄魔法とやらの性能にいまいちピンときてない。

そのため、"   石鹸で洗ったり湯船に入らないで体臭大丈夫かな?  "   と気になってはいた。

レオンは現在全く匂いがないが、人には恐ろしい加齢臭なるものがあるため歳をとればとるほどそれが自身に牙を向く。

だから、せっかく五右衛門風呂も作ったんだし、今日湯船に入る魅力を存分にアピールして、今後は多少強引に勧めてもいいんじゃないかな?と考えた。


「 あのねレオン、俺そんなんで汚れないよ。

レオンは綺麗だしいい匂いだから大丈夫さ。

そんな事より早くお風呂入ってみようよ!

” 酒の匂い風呂 ” は最後にとっておいて端から一緒に回ろう! 」


楽しみ~!

ニコニコする俺に、レオンは本当に嬉しそうな顔をしてーーーー「 はい。 」と返事を返した。


気になっていた自分の体臭について、大丈夫だと太鼓判を押されたレオンは相当嬉しかった模様。

レオンが嬉しそうで俺も嬉しくて、笑顔のまま満足げに頷いた。


そういう些細でもデリケートな問題は人に相談しにくいから、ここでレオンの心の悩みを解決できて良かった。


お風呂の湯気と共に良い雰囲気が漂う中、動きを再開したレオンによる俺の背中洗い終わり
待ちに待ったーーー ” さぁ、いざゆかん!湯船へ ” !

また肩にパパーンとタオルをかけ、湯船に向かおうとしたのだが、何故かレオンが自身のタオルを俺の腰にソッと巻いてくる。


何何~?


首を傾げながら振り向けば、肩にかけてたタオルも奪われ今度は胸元も隠される。


ーーーービキニ……??


胸元のタオルが邪魔でずらそうとしても、怖いくらい真剣な目でノーとゴネるレオン。

仕方ないと俺は諦めることにして、そのまま順々に湯船を周っていった。


そして楽しみにしていた ” お酒の匂い風呂 ” にたどり着いた時ーーーー何と、その横で倒れているモルトとニールを発見。

慌てて駆け寄る俺にレオンは「 横にどかしますか? 」と冷静そのものの態度を崩さない。

「 モルト!ニール! 」

大声で叫びながら二人の様子を直ぐに確認すると・・・

むにゃむにゃと蠢く口

そしてトロ~ンとした目つきに真っ赤なほっぺ。



間違いない、これはーーーーーー






酔ってるね。



テキーラを一気飲みしたかのような濃厚すぎるその場の匂いに、流石の俺も鼻を摘む。

このままではまずい!

そう判断した俺は、直ぐに二人を脱衣所まで運び、風魔法でヒューヒューと顔を冷やしてあげていると、突然天井から、シュタッとまたあのメイド服を着たムキムキレディーが落ちてきて俺は固まった。

そして固まっている俺に彼女達はニカッと笑い、まるで赤ちゃんに服を着せるようにモルトとニールに服を着せると、そのままお姫様抱っこして脱衣所を出ていく。


「 ・・・・。 」


それを大人しく見守った俺は、レオンと共に着替えを終わらせると、なんとなくソロリソロリと気配を殺しながら部屋まで戻った。
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