上 下
221 / 1,370
第五章

206 お風呂事情

しおりを挟む
( リーフ )

俺はレオンと自分の分のお風呂セットを脇に抱え、そのままお風呂に向かおうとしたのだがーーー焦ったような様子のレオンが俺の腕を掴み、その動きにストップをかける。


「 リ、リーフ様!

そ・・その・・・俺も一緒に入るのですか・・? 」


「 ??当たり前じゃないか。レオン入らないの?? 」


急にもじもじし始めたレオンに、一体どうしたのだろう?と疑問に思ったが、そこで、はっ!と気づいた。


レオンってお風呂・・正確には湯船に入るの初めてなんじゃない?


この世界にあるとっても便利な生活魔法、その一つ

< 洗浄魔法 >

これはちょっとした汚れをとることのできる特殊な魔法で、少量の魔力とちょっとしたコツさえ掴めば誰でも使える魔法とは言えないほどの攻撃性皆無の便利な魔法である。


他にも ” 掃除士 ” や ” 洗濯人 ” などの資質を持っている人は、スキルで習得することもできるこの魔法。

これをレオンは毎日自分にかけてお風呂代わりにしているようだ。


森の中で温泉を見つけて、やっほーーーい!と俺が入っても、レオンは入るという概念がないように反応しない。

流石に毎日洗浄魔法だけでは寂しいな~。

そう思った元温泉大好き日本人の俺が、NEWレオンの家に取り付けた五右衛門風呂を勧めてみたが・・

どうやらピンッとこなかったみたいで、それは使わずにとりあえず洗浄魔法プラス近くの川で水浴びをするようになった。


実はこれ、レオンに限ることではなくこれがこの国の平民さんのスタンダードお風呂事情だったりする。

お風呂とは貴族だけに許された特権であり、平民さんは洗浄魔法、もしくは水浴びが基本。

そもそもがあまり大衆に肌を晒すという習慣がなく、貴族専用の宿なんかでは個人で使う為1つの部屋に1つバスタブみたいなのが設置されている。


ただし獣人やドワーフ族は天然温泉が大好き。

平民だろうが貴族だろうが普通に温泉や湯船にはいる習慣があるため、この ” 地上の楽園 ” には温泉があるのだと思われる。

つまり今回はレオンの初めての湯船。


” もしかしたら何かルールでもあるんじゃないか? ”

” ちゃんとお風呂に入れるかな? ”


そんな心配があるのかもしれない。

俺はポンっと手を打ち、その心の内を理解した。


確かに湯船に入る前はキチンと身体を洗ってからという大事なルールが存在しているので、レオンの心配は大当たり。

そこはしっかり俺が教えてあげなければ・・


「 俺が色々教えてあげるから大丈夫だよ。

レオンは俺に身を委ねればいいだけだから。

ちゃんと優しく触るからね。まかせてまかせて~。 」


「 ・・っ!!?

・・・おっ教えっ・・身を・・??触る・・・??! 」


真っ赤になってカチンと固まったレオンに、ぷぷぷーーっと吹き出しそうになった。


なんたってレオンは思春期真っ只中!

お風呂を知らず教えてもらうという行為に、そうとうな抵抗がある様子。

優しく優し~く笑いかけ、何も心配はないよ!と間接的に伝える。


誰でも初めてというものがある!

年長者に教わることは恥ずかしい事じゃないし、寧ろ長い人生の中で、それが今判明した幸運を喜ぼう。


そのままいたわる様にサッサッと肩についていたゴミを払ってあげた後、俺は固まって動かなくなってしまったレオンの手を引っ張って、そのままお風呂場へと向かった。


しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

処理中です...