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第五章

206 お風呂事情

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( リーフ )

俺はレオンと自分の分のお風呂セットを脇に抱え、そのままお風呂に向かおうとしたのだがーーー焦ったような様子のレオンが俺の腕を掴み、その動きにストップをかける。


「 リ、リーフ様!

そ・・その・・・俺も一緒に入るのですか・・? 」


「 ??当たり前じゃないか。レオン入らないの?? 」


急にもじもじし始めたレオンに、一体どうしたのだろう?と疑問に思ったが、そこで、はっ!と気づいた。


レオンってお風呂・・正確には湯船に入るの初めてなんじゃない?


この世界にあるとっても便利な生活魔法、その一つ

< 洗浄魔法 >

これはちょっとした汚れをとることのできる特殊な魔法で、少量の魔力とちょっとしたコツさえ掴めば誰でも使える魔法とは言えないほどの攻撃性皆無の便利な魔法である。


他にも ” 掃除士 ” や ” 洗濯人 ” などの資質を持っている人は、スキルで習得することもできるこの魔法。

これをレオンは毎日自分にかけてお風呂代わりにしているようだ。


森の中で温泉を見つけて、やっほーーーい!と俺が入っても、レオンは入るという概念がないように反応しない。

流石に毎日洗浄魔法だけでは寂しいな~。

そう思った元温泉大好き日本人の俺が、NEWレオンの家に取り付けた五右衛門風呂を勧めてみたが・・

どうやらピンッとこなかったみたいで、それは使わずにとりあえず洗浄魔法プラス近くの川で水浴びをするようになった。


実はこれ、レオンに限ることではなくこれがこの国の平民さんのスタンダードお風呂事情だったりする。

お風呂とは貴族だけに許された特権であり、平民さんは洗浄魔法、もしくは水浴びが基本。

そもそもがあまり大衆に肌を晒すという習慣がなく、貴族専用の宿なんかでは個人で使う為1つの部屋に1つバスタブみたいなのが設置されている。


ただし獣人やドワーフ族は天然温泉が大好き。

平民だろうが貴族だろうが普通に温泉や湯船にはいる習慣があるため、この ” 地上の楽園 ” には温泉があるのだと思われる。

つまり今回はレオンの初めての湯船。


” もしかしたら何かルールでもあるんじゃないか? ”

” ちゃんとお風呂に入れるかな? ”


そんな心配があるのかもしれない。

俺はポンっと手を打ち、その心の内を理解した。


確かに湯船に入る前はキチンと身体を洗ってからという大事なルールが存在しているので、レオンの心配は大当たり。

そこはしっかり俺が教えてあげなければ・・


「 俺が色々教えてあげるから大丈夫だよ。

レオンは俺に身を委ねればいいだけだから。

ちゃんと優しく触るからね。まかせてまかせて~。 」


「 ・・っ!!?

・・・おっ教えっ・・身を・・??触る・・・??! 」


真っ赤になってカチンと固まったレオンに、ぷぷぷーーっと吹き出しそうになった。


なんたってレオンは思春期真っ只中!

お風呂を知らず教えてもらうという行為に、そうとうな抵抗がある様子。

優しく優し~く笑いかけ、何も心配はないよ!と間接的に伝える。


誰でも初めてというものがある!

年長者に教わることは恥ずかしい事じゃないし、寧ろ長い人生の中で、それが今判明した幸運を喜ぼう。


そのままいたわる様にサッサッと肩についていたゴミを払ってあげた後、俺は固まって動かなくなってしまったレオンの手を引っ張って、そのままお風呂場へと向かった。


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