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第五章

198 事件解決

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( リーフ )


あ、主人の指示待ちスタイルだ。コレ。



頭に浮かんだのは "   待て   "   を命じられたワンワン。

レオンは判断に迷った時、とにかく動かずひたすらジッと俺を見る。

それを理解した俺はシュッ!シュッ!とエアーパンチをしながら叫んだ。


「 レオーン!やっちゃって、やっちゃってぇぇ~! 」


俺の叫びを聞いたレオンはコクリと頷き、スイッと自分を囲んでいる男達に視線を移す。


レオンの前にいる男達は「 へっへっへっ~ 」と悪役の代名詞の様な笑いを漏らしながら舌なめずりをし、更にその中の一人の男が何かしらの拘束系スキルを使おうとした・・・


ーーーーが・・??



パチリと瞬きした直後、レオンは俺の目の前にいた。


おお???!!


レオンの胸元が俺の鼻スレスレにあるため、視界は真っ暗。

俺はヒョイっと顔をずらし先程までレオンがいたステージの方へと視線を向けると、そこには完全に沈黙した男たちが全員倒れていた。


全く見えなかったが、レオンはその拳で気絶させてここまできた様だ。


応援旗はレイピアじゃなくて拳にしても良かったかもしれない。

今から書き足すか・・


そんな事を考えながら襲いかかってきた男の攻撃をヒョイッと避け、首筋を叩いて気絶させると、今度は少し離れた所からコチラを弓で狙っている男に気がついた。


どうやらこの状況に未だピンときてないボンヤリレオンを狙っている様子。

多分レオンなら避けるとは思うが・・一応遠距離攻撃は厄介なので先に潰すか。


そう考えて足を踏み出そうとした、その時ーーー



「 クピャァァァァーーー!!!! 」



何処かで聞いた覚えがあるような、そんな鳴き声と共に一匹のポッポ鳥が横から飛び出してきて、弓を持ってた男をキックでふっ飛ばした。


あっ・・と叫ぶ間もなく弧を描くように飛んでいく弓を持っていた男。

そしてその男が先程までいた場所には一匹のポッポ鳥がいて、どーよ?と言わんばかりのドヤ顔でコチラを見てくる。


な、なんでここにあの凶暴なポッポ鳥さんが???


頭の上に飛び出したハテナマークの周りをピヨピヨと小さなポッポ鳥が回っている間に「 クピャッ! 」という鳴き声を上げたそのポッポ鳥さんは、武器を持つ男達が密集しているところへと電光石火のように飛んで行った。


そしてーーー


ポンポンポーーーンッ!!!


まるでボール蹴りのようにほかの男達を片っ端から蹴り飛ばして倒していく。


空を飛んでいく男達をレオンと一緒に眺めながら、あれれれ???と俺は首を傾げた。


ポッポ鳥って戦えないんじゃなかったっけ??

確か大人しくてスピードに特化したのも敵から逃げる為だって言ってた様な・・・


んんん~??と腕を組みながら考えていると、あっという間に男達を全員倒したポッポ鳥が、テテテテ~と俺とレオンの元にやって来た。


そしてくるくると俺達の周りを回ってはーー

「 ク~ピョョョョ~♬ 」とまるで歌うように鳴く。


しかし残党が逃げようとしているのを目ざとく見つけるとキッ!!と凶悪な顔で睨めつけ、そのままシュタタターンと追いかけて行った。


「 ・・・・。 」


謎の行動に更に首を傾げている間も、このポッポ鳥君は敵を倒し続け、その後襲ってこようとした男達の8割程を倒してしまった。


結局、正直良くわからない内に騒ぎは収まる事になり、俺はポカンとしたままレオンと共にその場に立ち尽くす。


悪い男達のリーダーっぽかったゼブさんはレオンが早々に倒してくれたし、これで解決??


我関せずでボンヤリしているレオンと、ステージ上でピクリとも動かず倒れている男達を順番に見て、やっと事態が飲み込めた俺はニッコリ。

すると、レオンも同じ様にとっても嬉しそうに笑う。



そのまま二人で何となくニコニコ見つめ合っていると、その直後ーーー

「「 リーフ様~~! 」」

モルトとニールの声が聞こえて、意識はそちらに向く。


黙々と気絶した男達を縛りあげたモルトと避難誘導をしていたニール。


無事に事件解決となった事を喜び三人でハイタッチをしたのだが、二人は荒ぶるポッポ鳥に気づき笑顔のままピタリと止まる。

しかし何故か二人は一斉にレオンを見て首を振り「「 まっ、いっか。 」」と言ってあっさりポッポ鳥から意識を外した。


「 今のところ大きな怪我人はいないそうです。 」


「 あの悪そうな奴ら、ここだけじゃなくて街の方にも現れたらしいっす。 」


「 えぇ!!それは大変だ! 」


街には非戦闘員の人達が沢山いるはず!

慌ててボンヤリしているレオンを連れて街の方へと行こうとしたが・・・モルトとニールはムンズッ!と俺の服の裾を掴み、フルフルと首を振った。


「 街の方はパトロールを任されていた冒険者達と・・その~・・ 」


「 酒瓶を装備した街の人達が全部倒したから大丈夫みたいっす・・。 」


ちょっと言いにくそうにそう言うモルトとニール。


いや、冒険者は分かるけど、街の人達って・・


頭の中には酔って戦う拳法が浮かび、目元を覆って頭を振る。

ウォッカの街の人達が逞しすぎる!


モルト、ニールと共にゴクリと唾を飲み込んだその時、後ろから俺達を呼ぶ声が聞こえたため、今度はそちらに視線を向けた。

走ってきたのは先程別れたばかりの冒険者 ” 春の三毛猫 ” のジンさん達だ。



「 皆さん、無事で良かったです!

実は指名手配中の盗賊達がかなりの数潜伏していたみたいで・・

どうやらボスの毒使いの男が、認識阻害を起こさせる特殊な毒を撒いていたようですね。

しかしまさか堂々と大会に出場していたとは・・


・・えっーと・・それで、これは一体何があったんですか?? 」


ポッポ鳥君に吹っ飛ばされて気絶している男達や、モルトの出した花の蔦でぐるぐる巻きにされている男達を見回し、四人はキョトンとした表情を見せる。


俺たちは顔を見合わせ、どう説明しようかと考えてたところ、突如上から・・


ーーーードスーーーン!!



あの凶暴なポッポ鳥君が降ってきた。



そして "  自分がやりました!  "   と堂々たる態度でズイズイと前へ進み出て、鼻息をブフーーっと吹く。


「 ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーー!!! 」


その姿が見えた瞬間、ジンさんが悲鳴をあげてシュリさんの後ろへサササッーと隠れた。


「 そっ・・そいつ、元々他のポッポ鳥より凶暴だったんですけど、ここに戻ってきてからはそりゃ~もうっ!

暴れるわ、つついてくるわ、隙きあらば蹴り飛ばそうとしてくるわで、散々だったんです!

そのせいでポッポ鳥レンタルショップで買い取りさせられて・・

お陰で俺の貯金がパーになってしまいました! 」



ワーワー!と泣き喚くジンさんを、シュリさんは嫌そうに無言で押し出す。


レイラさんとヘリオさんは、う~んと考え込みながらポッポ鳥を見上げ、その直後、ヘリオさんがキラッと目を輝かせて話し始めた。


「 やっぱりこのポッポ、稀に見る謎多き個体【 ユニーク個体 】なんじゃないかな! 


わー!僕、初めてみたよ~。


ポッポ鳥の臆病で敵から逃げる為に進化したスピードを攻撃に使うなんて、そもそもの種族原理に反しているからね。 」



わーわー!と喜びを現すヘリオさんにレイラさんが、【 ユニーク個体 】って?と質問するとヘリオさんは喜んでそれに答えた。



【 ユニーク個体 】

それはモンスターの中で稀に存在する明らかな違いを持つ個体のことを言う。

例えば飛び抜けて知能が高かったり、やたら強かったり、種族によってはまるで人型種のスキルの様に特殊な能力を持ってたりと、多種多様な能力をもっているらしい。



へぇ~なんてヘリオさんの話を聞きながら、今も周りを威嚇する様に睨むポッポ鳥君を見た。


確かにこの凶暴なポッポは明らかに他のポッポと違うもんね~!


納得して頷くと、今度はレオンに向けてめちゃくちゃ首を上下に振っている。


そんなヘッドバンギングの様な物凄い動きにもレオンは動じない、というか完全無視だ!


レイラさんがそんなポッポ鳥の奇怪な動きと完全無視するレオンを見て一筋の汗をかいた後、俺たちの側に落ちてる優勝トロフィーを見つけて目を輝かせた。



「 わっ!皆さん大会優勝したんですか!

凄ーい!!初出場で優勝なんてなかなか出来ませんよ!

優勝賞品は欲しいものが手に入りましたか? 」



凄い凄い!と素直に褒めてくるレイラさんに、普段女性との接触がほぼ無いモルトとニールはキリッとした表情で喜びと照れを隠す。

そして優勝賞品をレイラさん達に見せびらかせ、おおーーー!という歓声を頂き、何とも嬉しそうだ。


「 お酒の名産地ということから、それが大好きな【 獣人族 】と【 ドワーフ族 】。

それに隠れ酒豪の【 エルフ族 】が何かと都合をつけて寄付してくれるので、ここの景品はこの国では中々手に入らない物が多いんです。


今年のお祭りは、去年他種族が起こした派手な騒ぎのせいで他種族出禁となってしまいましたが、来年からはまた沢山来ると思いますよ~。 」


レイラさんの説明を聞いて "   なるほど!だからモルトとニールの目の色が変わったのか~ "   と納得した。

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