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第五章

197 事件勃発

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( リーフ )


まもなく決勝戦開始。


わぁわぁと大騒ぎする観客達によりボルテージは既にMAX状態。

これでは台の前に対峙した二人は、さぞやバチバチと血気盛んなにらみ合いをしているかと思いきやーーーー

レオンはチラッチラッと俺の方に視線を送り続け、目の前で睨みつけるゼブさんが全く目に入ってない様子であった。


分かってます、分かってます。

レオンの考えてる事は全てお見通しだから、安心して待っていてくれ。


全てを理解していた俺は、ゴソゴソとバックの中を探しお目当てのものを探し当てると、それをためらう事なくババっと広げた。


「 レオーン!!頑張れーーーー!!!!! 」


レオンの望むお目当てのものーーーレオン用に先程描いたお手製応援旗をブンブンと振りながら俺は力の限り叫んだ。

それによりレオンはここまで伝わるくらいの上機嫌に!

しかし周りにいる観客達は反対に、俺のブンブンと振られている応援旗を見て微妙な表情を見せてくる。


それは隣にいるモルトとニールも同様であった。


「 ・・あの・・リーフ様・・?

その旗に無数に書かれている交差針はなんですか? 」


モルトがおずおずと俺に質問してくる。

交差針とは、前世で言う十字架と同じ様な形をしていて、こちらの世界ではお墓には必ずと言っていいほど建てられる建造物、かつ人の生と死の象徴であるとされているものである。


「 え?違う違う、これ、レイピアだよ。

ほら、レオンって細身のレイピアで戦うでしょ?

だから俺、それを書いたんだ!

一個だとなんか寂しいから沢山書いてみた! 」


『 レオン頑張れ 』


そうデカデカと黒い文字で書かれた文字は、もうご愛嬌と言ってもいいほど染料がダラダラと下に垂れているが、レオンと言う文字を囲うように沢山のレイピアを書いて飾り付けた。

渾身の出来だと思っているが、言われてみればレイピアの形と交差針の形は若干似ているため、ちょっとお墓感が出てしまったかもしれない。

一瞬そう思ったが、なんといっても当の本人であるレオンが喜んでいる。


ならば何も問題などない!



俺が堂々たる動きで旗をブンブン振り続けると、レオンはその度にほわほわっと幸せオーラ全開で喜んでくれた。


「 お・・・おぉっとぉぉぉぉ?!!

これはなんとも ” 熱烈な ” 応援だぜ~~ーー!!


よ~しっ!じゃあ、野郎ども!!準備はいいかぁぁーーー!!?


レディ~~ーーーー・・・ 」


司会者さんの掛け声にレオンとゼブさんは台座の上に手をセット。

ゼブさんは凄く余裕そうでニヤニヤとニヤついた顔を崩さない。


これは相当自信があると見て間違いない!!  


ドキドキしながら俺は旗を振るスピードを早め、ビュビュビュン!と振り回しているとーーーー・・



「「「「「 マッスルーーーー!!!! 」」」」」



観客達による開始の合図が一斉に上がり、その掛け声と同時にレオンが動いた。


一瞬・・。

まさに瞬きなどする暇もないくらいの刹那の出来事。


気がつけばまたしてもババーーン!!!という大きな音をたてて台座が爆発し、ゼブさんの手もそれに巻き込まれる形で台座に叩きつけられた。


ーーーーボキボキっ!!!!!


確実に骨が砕ける嫌な音がその破壊音と共に場に響き渡り、誰も彼もが固まる。


「 ぎっ!!!ぎゃあぁぁぁーーーーー!!!! 」


ぐにゃぐにゃになってしまった手を押さえながら大絶叫するゼブさん。


青ざめる観客達。

ひゅっと息を止めるレオンの所有者の俺。

はぁ・・と息を吐きながら冷静にバックから薬草をだそうとするモルトとニール。


そんな中、流石は大会の司会者さん。

直ぐに回復薬を持ってゼブさんに駆け寄った。



< 回復薬 >

回復効果がある薬草から抽出した安価な薬。

軽い怪我なら治す事もでき、さらに痛み止めとしての効果もある。

調合する術者により品質レベルに差があり。



「 おいおい、大丈夫かよ~ーー?

おーい、救護班!!至急こいつを運んでくーーーー・・・ 」


司会者さんが言葉を言い終わる前に、ゼブさんは彼を殴りステージの端まで吹き飛ばす。

そして反対の無事な手で回復薬を奪い取り、それをごくごくと飲み干すと、レオンをギロリと睨みつけた。


「 くそがっ!!もうやめだ、やめだ!!!

"  力のベルト "  だけは確実に手に入れようとこんなクソ大会に出たが、大番狂せだっ!!チックショーがっ!!


ーーーおいっ!!てめぇ、どんなイカサマしやがったんだ?!

なんで俺の猛毒が効かねぇんだよ!!

それにこの力・・なんかの魔法を付与した装備でも持ってんのか?! 」


ゼブさんがサッと手のひらをレオンの方に向けると、その手には無数の小さな針がニョキニョキと飛び出してきた。



<毒人の資質> (ノーマルスキル)


< 針地獄 >

手から無数の痛覚を刺激しない針を出現させ、体内で調合した毒物を相手に注入することができる。


(発現条件) 

一定以上の精神汚染度を持つ事

一定回数以上毒の調合に成功していること

一定以上のきようさ、悪意を持つこと




レオンは最初思い当たる節がない様で首をかしげたが、ゼブさんの「 握手した時だっ!!! 」と怒鳴られてやっと思い出したようだ。


ゼブさんはぶつぶつと文句を言いながらレオンを物凄く怖い顔で睨みつけた後、突如ピュイ~!!と口笛を吹く。



「 野郎ども!!もう大人しくすんのは辞めだ!!

お宝は根こそぎ頂く、好きに暴れろ!!!

ついでにこのイカサマ野郎の装備も全部剥いでやる!! 」


そう言い終わったゼブさんが腰から長剣を抜くと、それが合図であったかの様に観客側にいる何十人かが同時に各々の武器を抜いた。


その瞬間、そこら中で悲鳴が上がる。


俺は直ぐに一番近くで武器を抜いた男の前にトンっと飛ぶと、あっ?と目を見張るその男の足を払い、体勢を崩したその体を蹴り飛ばしてやった。


するとその直線上にいた二人の、同じく武器を持った男達もそれに巻き込まれ、一緒になって吹っ飛び気絶した様だ。


「 モルト~!ニール~! 」


俺が掛け声とともに二人の方へ視線を向けると、既にモルトは花の蔦で気絶した男達を縛り上げ、ニールは土魔法で壁を作りながら逃げる人たちのフォローに回っていて、俺に向かってビシッと親指を立てる。


流石は俺達、幼馴染~ズ!


俺もピッと親指を立て、直ぐにステージ上に視線をやると十数人程の武器を持った男達がレオンを囲い込んでいるのが見えたが、そんな状況にも関わらずレオンはジッとただひたすら俺を見つめていた。
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