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第五章

180 初めまして

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( リーフ )



「 グギャッ!!! 」




カエルの断末魔のような鳴き声とプンッと鼻につく悪臭に俺はぼんやりと目を覚ます。

そしてそろそろ~と目を開けると目の前にはレオンの顔が。


さっきまでは救助される溺れた人スタイルだったのに何故現在俺は、対面式で抱きしめられているのか・・



何々?床ずれの心配かい?



そんなにやわじゃな~いと欠伸しながら寝ぼけ眼を擦った。



「 もう着いたのかい?俺どれくらい寝てた?

体勢変えてくれてありがとー。

でも俺その程度で床ずれしないよ~ 」



「 起こしてしまって申し訳ありません。

眠りについてから三時間と三十八分二十六秒です。

到着はまだ掛かると思われます。 」




そっかそっか~とレオンの落ち着いた声を聞きながら自身の置かれている状況を確認しピタリと止まる。



まず俺、レオンに片手で抱っこされてる。


収穫した麦袋を担ぐ農民さんと同じスタイル。



そして視線は足元へ。


ひたすら広がる赤い大地、そして赤い地面に所々転がるゴブリンの首と首のないゴブリンの身体ーー・・



「 ・・・・ 」



思わず押し黙ると、攻撃的な気配を感じソロ~と後ろを振り向けばゴブリンの大ボス、ゴブリン・キングが相当お怒り状態でこちらを睨みつけていた。




〈 ゴブリン 〉


体長50cm~1m程の人型Eランクモンスター。

知能はやや高く群れなどの集団で行動し、武器を駆使して人間を襲ってくる。

一匹では大した事ない強さではあるが、集団で来た場合討伐難易度は跳ね上がる。

またゴブリン・キングと共に現れた場合は更に上がるため注意が必要。




〈 ゴブリン・キング 〉

体長3mを超える人型Cランクモンスター。

ゴブリンを率いて時に堂々と人間の集落を襲う事もあり、非常に攻撃性の高い獰猛な性格をしている。

大剣や巨大斧を使い圧倒的パワーで物理攻撃をしてくる上、高い体力、防御力、更には物理攻撃耐性( 大 )と魔法攻撃耐性( 小 )を持っているため集団での討伐が推奨される。






お?おおおぉぉ????



寝てる間に迎えていた修羅場に、ちょっと頭が追いつかないと思うより早く、今度は突如ゴブリン・キングが消えた。



いや、正確に言うとゴブリン・キングが消えたんじゃない。



レオンが( 多分 )動いて、一瞬でそのモンスターの首を刎ねると、そのまま馬車の方へとフッと戻っただけ。


俺の動体視力じゃ追えなかった。


だからゴブリン・キングが消えた様にしか見えなかったのだ。



「 ???? 」



一体何が起きたのか?


やっと正気に戻って錯乱し始めた俺の目に、のんびり馬車の外でお茶をしていた様子のモルトとニール、そして御者さんがうつるとモルトがこちらに近づいて来て手に持つバラ茶をスッと差し出してくれた。



それを担がれた麦袋のまま受け取ってお礼を言った後、ふぅふぅしてから飲む。



あっ、おいし~い!



口の中に広がる薔薇の濃厚な香りに思わず目をぎゅむっと閉じる。



モルトの家のバラ茶は今年も売り上げ右肩上がりだそうで、よく我がリーフ邸にもお裾分けにとよく持って来てくれるのだ。


そんな素晴らしいお味のバラ茶に舌鼓をうっていると、モルトがここまでの出来事を説明し始めた。


なんでも俺が寝てから三時間半くらいが過ぎた頃、馬車の進行方向におよそ30匹以上はいるであろうゴブリンの群れが現れたそうだ。



基本、街にはモンスター除けの結界や侵入を防ぐ防壁がある為おいそれと街への侵入は出来ないようになっているが、街から街への移動の際に通る道には当然そんなものはない。


運悪くモンスターと鉢合わせしてしまえば戦うか逃げるかの二つの選択肢しか生き残る方法はない為、移動の際は必ず護衛を雇うのが一般的らしいのだが、今回の移動にそんな者はいない。


てっきり馬車になんか凄いモンスター除けがついてるのかと思ったのだがどうも違った様だ。


で、結局俺を担いだレオンがパパッとお外に出て首を刈りに行ったとーー・・そういう事らしい。



いやいや、起こして欲しておくれよ。



悪役が背負われる麦袋とか、ちょっとホントにカッコ悪すぎる。



あぁ~・・と目元をグニグニと揉み込みながら、とりあえずモンスターを倒してくれたレオンにお礼を言って下ろしてもらうと、彼はニコリと笑いながら次回は防音魔法をかけますねと言った。


とりあえずこの大量のゴブリン達の死骸を燃やすか土に埋めないと他のモンスター達が血の匂いでよって来てしまうかな、と俺が魔法を使って焼こうとしたその時ーーー




「 あぁーーー!!!!!! 」




耳がキーンとする様な女性の大きな声が聞こえた。



声のした方向を振り返ると、ピンピンと外に跳ねた長いピンク色の髪に、黄色いバンダナを巻いたヤンチャそうなお嬢さんが立っていた。


見た目からしてまだ10代後半くらいだろうか?

幼さを色濃く残した顔をしている。


格好は斥候などのスピード重視型のラフな戦闘服のようで、恐らくは何かしらの戦闘職についていると思われるその少女は、あんぐりと大きく口を開け、レオンにより首を刎ねられたゴブリン・キングの死骸を指さしている。



「 こ、こ、こ、これ!!ちょっとちょっと!ゴブリンキングじゃない!

緊急討伐依頼が出たからいち早く探しに来たのに・・

ねぇ、君達!コレ誰が倒したか知ってるかな? 」



「 えっ?誰って・・ 」




俺、モルト、ニール、そして御者さんが一斉にレオンを指差すと、ピンクの髪のお嬢さんはいつの間にか深くフードを被っているレオンをジーッと見た後ぷっと吹き出した。




「 あはははー!流石に君達くらいの子供に倒せるモンスターじゃないよ。

こっちのお兄さんも、そりゃ~体格は悪くないけどまだ子供みたいだし!

ソロで倒せるほどCランクは甘くないの。

もしかして何処かの高ランクパーティーが討伐したのかしら?

でも< 瘴核 >も取って行ってないみたいだし・・ 」




< 瘴核(しょうかく) >


モンスターの心臓部に当たる部位。

非常に高いエネルギーを秘めている為様々な用途に使える。

一般的に小さな宝石の様な外見をしていて、強い個体ほど大きくエネルギー量も大きい




えっ?Cランクってそんなに強いの?


正直レガーノには滅多にそんなモンスターは出ない為、正直いかほどのものかよくわからなかったりする。


とりあえずレオンは凄いな~としみじみ思っていると、遠くの方から「 お~い! 」という、今度は男性の声が聞こえたためそちらを振り返ると、三人の人物が駆け寄ってくるのが分かった。

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