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第五章
178 初めての馬車
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( リーフ )
カラカラ~~
パッパカパッパカーーーー
馬車の車輪の音と馬の蹄の音が一定のリズムで俺の耳に子守唄のように滑り込んでくる。
本来馬車というものはガタガタと揺れ、初めて乗る際は酔ったりすることもあるそうだが、現在、俺、モルト、ニール、そしてレオンの4人が乗っている馬車はそんな攻撃的な揺れは一切感じない。
俺は外の景色に向けていた視線を自身の前方へ移した。
前方にはモルトとニールが座っていて本を読んだり外の景色を楽しんだりと、最初のお祭りムードはとっくに過ぎ去り随分前からまったりタイムに突入している。
明日はとうとう中学院 < ライトノア学院 >の入学院試験
俺たちはその学院がある< グリモア >という巨大都市へ、こうして馬車に乗って向かっているのだが、なんと俺たちの住む< レガーノ >からその< グリモア >までは普通の馬車なら2日以上、専用の強化馬車を使っても半日は掛かるほどの距離があるため、前日の早朝・・つまり今日の朝早くから俺たちはずっとこの強化馬車に乗っているのだ。
〈 強化馬車 〉
馬車専用スキルを持った御者さんが運転する特別な馬車。
その実力により幅があるが、概ね半分以上の時間を短縮することが可能。
この後は< グリモア >の近くにある街〈 ウォッカ 〉に一泊してから明日の試験を受ける予定で、今の所順調な旅路であるのだが実はこの馬車、出発時間から既に一時間程遅れている。
俺はチラリと後方で、本日もしっかりと ” 椅子 ” の役目を果たしているレオンの方を見た。
レオンは清々しい程いつもどおり、違いといえば試験を受ける用に仕立てたいつもより短めの黒いNEWマントを羽織っている事と左手に真っ黒な手袋をはめているくらいだ。
カルパス曰く実技の試験の際、あまり長いマントだと不正疑惑を掛けられる可能性もあるのだとか・・・
そのためレオンのマントは上半身くらいまでの丈にし、動くことを重視したセンター分け、お高そうなブローチにてそれを留めている。
勿論顔をスッポリと覆ってくれるフード付き!それを被ればお顔は見えない!
これなら試験はばっちりだ。
カルパスいつもありがとう
俺と目が合うとニコリと控えめに笑うレオンに俺もニコリと笑顔を返すと、出発前に起こった出来事を思い出す。
俺とレオン、そして同じ中学院を受けるモルト、ニールの4名は、カルパスがレンタルしてくれた貴族用のーーしかも高位貴族しか借りるとこに出来ない超高級強化馬車を家の前で今か今かと待っていた。
馬車など乗ったことはおろか見るのも初めてな俺のテンションはマックス、モルトとニールは高位貴族しか乗れない高級馬車というものにテンションもりもり、俺たち三人は朝日も昇らぬうちから、イエ~イ!と興奮そのままに叫びあっていた。
そんな俺たちを、お見送りのカルパス達従業員一同微笑ましい笑みを浮かべ見ていたが、その中でレオンは清々しいほど普通だった。
どうやら馬車というものにピンときていない様子。
まあ確かに聞くだけでは想像力がもやしのレオンにその凄さが伝わらないのも無理はない。
しかし、実際目の前に現れれば、さすがのレオンも感動するのではないか?といたずらを仕掛ける子供のようにニマニマ~と悪い顔で笑っていたその時、車輪と蹄の規則正しい音を立て、とうとう待ちに待った馬車が来た。
まず見えたのは引き締まった立派な体格を持つ、恐らく人間であったら崇められるレベルの美形であろう美しい白い馬が二頭、そしてそんな二頭が引っ張ってくるのはキラッキラの白を基調としたコレでもかという精巧な細工を施した大きな馬車。
その時点で、おぉーーーー!!!!と俺、モルト、ニールの3名は共に歓声を上げて喜びを表現した。
とにかく凄いの一言しか出ないような見事な馬車に俺達三人は、カルパスありがとう!とお礼を言い、御者さんに挨拶をした後、馬車の周りをぐるぐると回転寿司の様に回りながらその外観を思う存分眺めていた。
更に扉を開き中を覗くと、足が伸ばせる位の十分な広さと共に何だこれ!!と叫びたくなるほどフッカフカの座席が。
そして対面している座席の中央には細長い仕切りにも見えるテーブルが設置されていた。
これは前世でいうとまさにリムジンってやつだ!!
孤児院の所有するワゴン車しか乗ったことのないこの俺がお金持ちの象徴リムジンに乗れる日がくるとは・・・
うひょ~と飛び上がって喜んでいると、カルパスとイザベルはパパッと荷物を運び入れてくれて、アントンは道中食べられるようにと沢山のお弁当を、そしてクランはリラックス効果のある匂い袋を馬車に取り付けてくれていた。
そしてジェーンは俺達が道中飲めるお茶を沢山渡してくれたので、俺はジーンと感動しながら「 皆、ありがと~!! 」とお礼を告げていると、レオンがジロジロと馬を見ている事に気づいた。
モルトとニールが皆にお礼をしているのを横目に俺はそんなレオンを見つめながらピンときた。
レオンは馬を見るのも初めてなのではないか?
話を聞くだけではいまいちだったイメージが、現物を前にすることで何かしらの衝撃をその心に与えられているのだろう。
気分は恐らく初めて動物園に連れて行ってもらった子供と同じ!
思わず微笑ましい気持ちでそんなレオンを見ていたのだが、なぜか彼は酷く不機嫌な様子で俺の方へと戻ってくる。
そんな不機嫌なレオンに気づいた俺をはじめとするモルトやニール、カルパス達も何事かと注目する中、レオンはムスッとしながら馬を指差し「 俺の方が早いです。 」と言った。
俺以外の面々は押し黙ったが、俺はレオンが面白い冗談を言ったのかと思ったのでプーーッと吹き出し、
「 そうだね!レオンのほうが早いね~ 」
などと答えながら、レオンも冗談を言えるほど感性が成長したんだな~なんてほんわかしていると、レオンはパァーと上機嫌で嬉しそうに頷いた。
「 はい、お任せ下さい。
あんなヤツよりも俺がもっと早くリーフ様を目的地にお送りします。 」
そう言うと、レオンはスタスタと馬の方へと近づき馬から馬車を切り離そうとしたので、俺は直ぐにそんなレオンの背にポポーン!と飛び乗ると、羽交い締めにして必死にその行動を止める。
「 なっ、なにやってるんだい!レオン、もう冗談はいいから!ーーね? 」
「 冗談??何がですか?? 」
ーーあ、これ本気だ
レオンの嘘偽りの一切ない曇りなき眼を見て俺は悟る
レオンはこの馬車を馬の代りに引っ張っていくつもりだ!!
俺の脳内で馬の代わりに馬車を引くレオンがパッと思い浮かび思わず吹き出しそうになったが、必死に我慢する。
なんたってレオンは真剣・・そんな真面目で一途な思いを笑い転げるなど言語道断!そんな非道な事は断じて出来ない。
カラカラ~~
パッパカパッパカーーーー
馬車の車輪の音と馬の蹄の音が一定のリズムで俺の耳に子守唄のように滑り込んでくる。
本来馬車というものはガタガタと揺れ、初めて乗る際は酔ったりすることもあるそうだが、現在、俺、モルト、ニール、そしてレオンの4人が乗っている馬車はそんな攻撃的な揺れは一切感じない。
俺は外の景色に向けていた視線を自身の前方へ移した。
前方にはモルトとニールが座っていて本を読んだり外の景色を楽しんだりと、最初のお祭りムードはとっくに過ぎ去り随分前からまったりタイムに突入している。
明日はとうとう中学院 < ライトノア学院 >の入学院試験
俺たちはその学院がある< グリモア >という巨大都市へ、こうして馬車に乗って向かっているのだが、なんと俺たちの住む< レガーノ >からその< グリモア >までは普通の馬車なら2日以上、専用の強化馬車を使っても半日は掛かるほどの距離があるため、前日の早朝・・つまり今日の朝早くから俺たちはずっとこの強化馬車に乗っているのだ。
〈 強化馬車 〉
馬車専用スキルを持った御者さんが運転する特別な馬車。
その実力により幅があるが、概ね半分以上の時間を短縮することが可能。
この後は< グリモア >の近くにある街〈 ウォッカ 〉に一泊してから明日の試験を受ける予定で、今の所順調な旅路であるのだが実はこの馬車、出発時間から既に一時間程遅れている。
俺はチラリと後方で、本日もしっかりと ” 椅子 ” の役目を果たしているレオンの方を見た。
レオンは清々しい程いつもどおり、違いといえば試験を受ける用に仕立てたいつもより短めの黒いNEWマントを羽織っている事と左手に真っ黒な手袋をはめているくらいだ。
カルパス曰く実技の試験の際、あまり長いマントだと不正疑惑を掛けられる可能性もあるのだとか・・・
そのためレオンのマントは上半身くらいまでの丈にし、動くことを重視したセンター分け、お高そうなブローチにてそれを留めている。
勿論顔をスッポリと覆ってくれるフード付き!それを被ればお顔は見えない!
これなら試験はばっちりだ。
カルパスいつもありがとう
俺と目が合うとニコリと控えめに笑うレオンに俺もニコリと笑顔を返すと、出発前に起こった出来事を思い出す。
俺とレオン、そして同じ中学院を受けるモルト、ニールの4名は、カルパスがレンタルしてくれた貴族用のーーしかも高位貴族しか借りるとこに出来ない超高級強化馬車を家の前で今か今かと待っていた。
馬車など乗ったことはおろか見るのも初めてな俺のテンションはマックス、モルトとニールは高位貴族しか乗れない高級馬車というものにテンションもりもり、俺たち三人は朝日も昇らぬうちから、イエ~イ!と興奮そのままに叫びあっていた。
そんな俺たちを、お見送りのカルパス達従業員一同微笑ましい笑みを浮かべ見ていたが、その中でレオンは清々しいほど普通だった。
どうやら馬車というものにピンときていない様子。
まあ確かに聞くだけでは想像力がもやしのレオンにその凄さが伝わらないのも無理はない。
しかし、実際目の前に現れれば、さすがのレオンも感動するのではないか?といたずらを仕掛ける子供のようにニマニマ~と悪い顔で笑っていたその時、車輪と蹄の規則正しい音を立て、とうとう待ちに待った馬車が来た。
まず見えたのは引き締まった立派な体格を持つ、恐らく人間であったら崇められるレベルの美形であろう美しい白い馬が二頭、そしてそんな二頭が引っ張ってくるのはキラッキラの白を基調としたコレでもかという精巧な細工を施した大きな馬車。
その時点で、おぉーーーー!!!!と俺、モルト、ニールの3名は共に歓声を上げて喜びを表現した。
とにかく凄いの一言しか出ないような見事な馬車に俺達三人は、カルパスありがとう!とお礼を言い、御者さんに挨拶をした後、馬車の周りをぐるぐると回転寿司の様に回りながらその外観を思う存分眺めていた。
更に扉を開き中を覗くと、足が伸ばせる位の十分な広さと共に何だこれ!!と叫びたくなるほどフッカフカの座席が。
そして対面している座席の中央には細長い仕切りにも見えるテーブルが設置されていた。
これは前世でいうとまさにリムジンってやつだ!!
孤児院の所有するワゴン車しか乗ったことのないこの俺がお金持ちの象徴リムジンに乗れる日がくるとは・・・
うひょ~と飛び上がって喜んでいると、カルパスとイザベルはパパッと荷物を運び入れてくれて、アントンは道中食べられるようにと沢山のお弁当を、そしてクランはリラックス効果のある匂い袋を馬車に取り付けてくれていた。
そしてジェーンは俺達が道中飲めるお茶を沢山渡してくれたので、俺はジーンと感動しながら「 皆、ありがと~!! 」とお礼を告げていると、レオンがジロジロと馬を見ている事に気づいた。
モルトとニールが皆にお礼をしているのを横目に俺はそんなレオンを見つめながらピンときた。
レオンは馬を見るのも初めてなのではないか?
話を聞くだけではいまいちだったイメージが、現物を前にすることで何かしらの衝撃をその心に与えられているのだろう。
気分は恐らく初めて動物園に連れて行ってもらった子供と同じ!
思わず微笑ましい気持ちでそんなレオンを見ていたのだが、なぜか彼は酷く不機嫌な様子で俺の方へと戻ってくる。
そんな不機嫌なレオンに気づいた俺をはじめとするモルトやニール、カルパス達も何事かと注目する中、レオンはムスッとしながら馬を指差し「 俺の方が早いです。 」と言った。
俺以外の面々は押し黙ったが、俺はレオンが面白い冗談を言ったのかと思ったのでプーーッと吹き出し、
「 そうだね!レオンのほうが早いね~ 」
などと答えながら、レオンも冗談を言えるほど感性が成長したんだな~なんてほんわかしていると、レオンはパァーと上機嫌で嬉しそうに頷いた。
「 はい、お任せ下さい。
あんなヤツよりも俺がもっと早くリーフ様を目的地にお送りします。 」
そう言うと、レオンはスタスタと馬の方へと近づき馬から馬車を切り離そうとしたので、俺は直ぐにそんなレオンの背にポポーン!と飛び乗ると、羽交い締めにして必死にその行動を止める。
「 なっ、なにやってるんだい!レオン、もう冗談はいいから!ーーね? 」
「 冗談??何がですか?? 」
ーーあ、これ本気だ
レオンの嘘偽りの一切ない曇りなき眼を見て俺は悟る
レオンはこの馬車を馬の代りに引っ張っていくつもりだ!!
俺の脳内で馬の代わりに馬車を引くレオンがパッと思い浮かび思わず吹き出しそうになったが、必死に我慢する。
なんたってレオンは真剣・・そんな真面目で一途な思いを笑い転げるなど言語道断!そんな非道な事は断じて出来ない。
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