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第四章

170 カルパスとイザベルの呟き

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( カルパス )




シーンと静けさを取り戻した森の中、私は服についてしまった土汚れをパンパンと叩き、乱れた髪をスッとなで上げる。


そしてゾッするような気配が屋敷の方角、この直線上から未だこちらを伺っている事に気づき汗を一筋かいた。



「 ・・彼にとっては私も先ほどの男たちも同じ侵入者・・というところだろうな。

全く頼もしい護衛様だよ。 」


おそらくは探知魔法、ただしその精度も規模も感じることはできず、ただくっきりと引かれた境界線だけは理解できる・・いや理解させられているのか



敵意を持ってそれを超えれば一瞬で命を失うであろう命の境界線。



ゾクッと悪寒の様なものが走り、それを散らすように腕を組んだーーその時、ズルズルと何かを引きずるような音と共に我が娘イザベルが姿を現す。



「 父上、この下賤の者はどうされますか?

ご指示通り生かしておきましたが・・ 」



イザベルはポイッと私の方へやたらデカい傭兵の男を投げ捨てると、汚いものでも触れたかの様にパンパンと手を叩く。


「 あぁ、ご苦労であった。

その者はクレアのところに出荷しようと思う。

そろそろ実験体が足らんらしいからな。 」



クレアという名前をだすとイザベルが分かりやすく顔をしかめる。



「 クレア様ですか・・

あの『 愛の実験場 』・・思い出すだけで吐き気がします。

クレア様の回復魔法は飛び抜けていますから・・ 」




「 そう言うな。

そのお陰で医術は発展し、多くの苦しんでいる善者は救われているのだ。

善者で ” 遊んで ” きた悪の終着点としては最高の場所であると言えよう。 」



イザベルはふっと短く笑う。



「 確かにこれほどふさわしい終着点はないように思います。

では護送の手配をしておきます。リーフ様はご就寝されていますか? 」


「 あぁ、本日は訓練で疲れて深い眠りに就かれているよ。

・・・ただ、もう一人の子供はしっかりと起きているようだがね。 」


そう言って再びその子供がいるであろう方角に目をやると、イザベルは先ほどよりもあからさまに不快を隠さぬ表情を浮かべた。


「 ちぃぃぃっ!!!

あの化け物、一体いつ眠っておるのだ!

いまに見ていろ。

いつかその専属護衛の地位を奪い返してみせるからな!! 」



ゴゴゴゴー!!と燃え盛る娘の姿を呆れながら見つめた後、もう一度私は彼がいる方向へと目を向けた。


そして急速に強くなっていくその存在に、また背筋をゾッと凍らせた。




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