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第四章

165 ランドという男

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( ??? )



闇が支配する世界、ランドと残りの傭兵たちは気配を殺しゆっくりと、しかし確実にターゲットである公爵令息であるリーフ様の部屋に向かって森の中を進んでいた。


ランドはとてもわくわくしていた。


また『 コレクション 』 を増やすことができるからだ。


さぁ、リーフ様はこうやって飾ろうか 


ああでもない、こうでもないと考えている時間がランドにとっては人生の中で最も幸せな時間であった。






ランドは貧乏貴族の五男としてこの世に生を受ける。

家族は貧乏にも関わらずプライドだけは非常に高い人達であった。


当主の父を頂点に、その妻である母、長男、次男ーー


下にいくにつれ家庭内では虐げられ、一番下であったランドはまるでこの家の全ての不幸は彼のせいであると言わんばかりの扱いを受けて育った。


そしてそれは資質が判明してから加速することとなる。



ランドの資質は< 結界人 >であった。



< 結界人 >は結界を作ることに特化した資質であり攻撃手段は持たず、他の防御に特化した資質より劣っているいわゆる ” ハズレ ” と言われている下級資質だ。


兄たちの資質は同じ等級の下級資質であったが、< 結界人 >よりはマシと言われている資質であったため兄たちは毎日のようにランドに言った。


” あ~良かった。明らかに俺より劣っている下がいて。 ”


両親や兄たちに降り注ぐ周りの嘲笑や屈辱的な言葉の数々は、全てランドへ集結することができる。

それがこの家の家族の絆


その中にランドは含まれない。




ランドは幼き頃から小さな虫や動物達をなぶり殺すのが好きだった。

最初は木の棒で、次はナイフで、そしてスキルが使えるようになったらは結界でーーー



彼の結界は力の強い生き物では簡単に破られてしまうが、小さな動物なら破ることはできないため、じわじわとつぶして観察したり、結界の中に毒ガスを注入してみたりと様々な方法を使い、それを ” 楽しむ ” 事が彼の生きがいであった。


虐げられる怒り、憎しみは、自分より劣る存在にぶつける事で快感へと変わる。


ランドも両親や兄たち同様の方法で日々のストレスを気持ちの良いモノへと変えて自身をけっして受け入れない世界を生きていた。


” 弱いモノはこの世界のいらぬもの。だから好きに扱っていい。それがこの世の < 正しき > である。 ”


ランドはこの思想に大きく頷いた。


こんなに楽に快感が得られるなんて・・・それはなんて素晴らしい世界なのだろう!!


だからランドは力が欲しかった。




もっと、もっと人生を ” 楽しむ ” 為にーーーーーー




そんなランドは中学院の卒業後、地元の商業ギルドの雑務用職員に就職した。

昼は野暮ったい冴えない職員、夜は残虐な行為で ” 楽しむ ” 狂人


それが彼という人間ーーそんな "  個 ” が完全に確立した頃、彼の頭の中に1つのスキルが降ってきた。



スキル : < 完全監獄 >



それは未だ発現が確認されていないユニークスキルであった。


状況を考えると恐らく結界を使って数多の命を奪うことだったのではないかと考えられる。



ランドは神に感謝した。


それと同時に自身の ” 正しき ” とする世界の中でこれから自由に、楽しく生きていくことができるのだと、心は歓喜する。



ランドは喜びに笑いながら、まずは自身の実家へと向かった。


相変わらず彼を見下し快感を得ようとする両親と兄たち、それにランドは微笑んでいった。


” あなた方のしている事、それは ” 正しい ”

ーーしかし、残念ながらそれを私に向けるのは ” 正しくない ” のです。

さぁ、世界を ” 正しき ” 世界に戻しましょう? ”


そう言ってランドは両親と兄たちに向かって新たに授かった力を贈った。





<結界人の資質>  (ユニーク固有スキル)


< 完全監獄 >


内側からは決して壊れることの出来ない結界を張ることができる上級結界系防御スキル

ただし、外からの攻撃は、術者の魔力、魔力操作によりその強度が決定する。

かつ術者はこのスキルを維持する場合、持続的な魔力供給が必要


(発現条件) 

一定以上の魔力、魔力操作を持つ事

一定数以上の命を奪う事

一定以上の怒り、憎しみ、愉快、快感を持つ事

一定以上の精神汚染度をもつこと




結界に閉じ込められた両親と兄たちは最初は余裕そうであったが、何をしても壊れない結界に次第に青ざめると、まずはランドに対する罵倒を、次は脅迫、そして最後は家族の情を訴えながら懇願し始めた。



それをランドは鼻歌を歌いながら気が済むまで眺めた後、最後は汚い汁を顔中から流し、壊れたおもちゃのように謝罪を繰り返す彼らの結界をゆっくりと縮めていきーーー




ーーー最後はぐしゃりと潰してやった。




潰れた後も結界を縮めていき5cmにも満たない赤いビー玉結晶のようなものを作ると、それを陽に透かしうっとりと眺めた。


こんな小さなものに自身という強者を楽しませる義務を持った弱者の命が1つ入っている。


・・
コレは見事、その義務を果たしたのだ!



ランドは笑った。


彼の ” 正しき ” とする世界の中心でーーー




そしてランドは望んだ。

自身が正しいと証明する証、この命の塊が欲しい。





もっと、もっと・・・もっと!!ーーー







そうしてランドは謎の貴族失踪事件の被害者として扱われ、早々に捜査は打ち切られることとなった。


そうしてランドは傷心という名の嘘とともに笑いながらその街を去り傭兵ギルドの門を叩いたのだった。


それから彼は多くの弱者を ” 使い ” 、自身の才能を開花させていった。


それに伴い結界の扱いも上手くなっていき、ただ縮めるだけではなく全ての血を抜き取って色を変えてみたり、石像の様に様々なポーズを取らせたまま縮めてみたりーー


そして最近のお気に入りは全身が余すことなく観察できる『 押し花 』のような結界結晶であった。




そして現在ーーー



彼は酷くご機嫌だった。


なぜなら滅多に手に入らぬ子供と言っていい12歳の少年の『 押し花 』が手に入るからだ。


スキップでもしそうなくらいの上機嫌で森の中を進んで行くと前方に小さな光が見えた。


何だ?とランドと傭兵達が一旦止まり警戒態勢をとっていると、やがてその光の正体とその後ろをついてきていた一人の人物が姿を現す。


光の正体はキラリマッシュ、そしてその後ろの人物はこの屋敷の専属執事であるカルパスであった。



「 こんばんは。ようこそ傭兵の皆様。

私はこのお屋敷の執事を任されているカルパスと申します。


ーーあぁ、覚えていただかなくても結構ですよ。

どうせ今夜限りのお付き合いとなりますので。 」




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