天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

第四章

１６３ アントンの戦闘開始

（　アントン　）


ゆらりとゆれる白い闘気、これは生まれつき俺の体内を巡っているもので日常生活の時はしっかりとしまうようにしている。


＜闘戦士の資質＞　　（先天スキル）


白の闘志


生まれつき　”　闘気　”　という特殊な潜在オーラを持ち、身体能力に大幅な伸びしろと（　極　）UPの恩恵を得る。



それを見た傭兵たちは目に見えて狼狽え始め、俺の二つ名を知っていた男が叫んだ。


「　じょ、冗談じゃねえ！！

楽な仕事だって聞いてたのに元Sランク相手なんざ聞いてねえよ！！

とっととずらかるぞ！！　」


「　そんなこと言ったって後ろにはドノバンの野郎がいるだろうが！！

どっちみち逃げ道がねえよ！！　」



怒号飛び交うおしゃべりタイムに俺はくわ～とあくびをすると、なにやら通信魔道具をつかって作戦を立てたようで、急に全員で武器を構えてこちらを睨みつける。


おおかた、元第二騎士団団長よりは前線を退いて長い俺のほうがスキをつけるはず、全員で一斉に攻撃し、何人かは屋敷の敷地内へ侵入、そして非戦闘員の誰かを人質にしてずらかろうと、そんなところだろうか・・


しかし残念ながら非戦闘員は・・なぁ・・


俺はう～ん・・と痛む頭を揉み込むと、そのスキにと一人の傭兵の男が後ろの腰ポーチから何かを取り出し地面に叩きつけた。


するとブワッと広がる赤色の煙、これは魔道具＜　赤煙玉　＞だ。




＜　赤煙玉　＞

ビー玉位の大きさで地面に叩きつけることで作動する魔道具。

魔力、気配察知を遮断する赤色の煙が出て敵の目くらましをする。




俺はそれを見ながら一応の親切心で傭兵たちに言った。


「　悪いこと言わねえから、ここにいた方がいーー・・・　」

ぞ、と言い終わる前に全力疾走で傭兵たちは屋敷の中に侵入していった。


まぁどうせあとで運び込むつもりだったので手間が省けていいが、ここで倒されたほうが良かったと後悔することになるだろうな・・

そう思いながらひしひしと感じる嫌な予感に後ろを引かれながら俺は屋敷の中に入った。



入ってすぐにジェーンのスキル発動を察知しながら、まるでようこそとばかりに勝手に開いていく道を歩き、やがて真っ赤な花が咲き乱れるエリアにたどり着く。


すると地面に咲く赤い花たちは、まるで俺のことを好みじゃないのと毛嫌いするようにササーッといなくなり、代りに今しがたここへ現れた傭兵たちに興味津々とばかりに近づこうとしている。


そして今自分の目の前には絶句し立ち尽くす傭兵達の姿と、更にその前には手足をじわじわと溶かされていく仲間の傭兵たちの姿が、そしてそんなとんでもない光景のなかニコニコと上機嫌に笑う穏やかそうな男、クランがその場にいた。



傭兵たちがガタガタと震えながら一人、また一人と俺の方に向かって走って戻ってくると、そのうちの一人が剣を抜き、その体から魔力をブワッと開放した。


「　こっこんなところにいられるかぁーーー！！！どけーーー！！！！　」


叫びながら剣を引くとその剣身は白く光りだし、そのまま俺に向かってその剣を振った。



　＜剣士の資質＞　　（ノーマルスキル）


＜　気圧斬り　＞


風を圧縮させて相手を切り裂く攻撃系スキル

自身の攻撃、スピードの値によってその威力は上がる


（発現条件）　一定以上のスピード、攻撃力を持つ事

　　　　　　　一定回数以上剣の素振りをする事





白く横に走る衝撃波、それを俺は抜いた包丁でいとも簡単にスパンっ斬ると、そのまま逃げてくる傭兵達に向かってスキルを発動した。





　＜闘戦士の資質＞　　（ノーマルスキル）


＜　気圧斬り（　強　）　＞


風を圧縮させて相手を切り裂く攻撃系スキル

自身の攻撃、スピードの値によってその威力は上がる


（発現条件）　一定以上のスピード、攻撃力を持つ事

　　　　　　　一定回数以上剣の素振りをする事




剣を武器にする者なら大体は使えるこのスキル。

一番威力が低いため使ったのだが、それが直撃した直前にスキルを打ってきた男は一瞬で弾けとんでしまい、更にその周辺にいた残りの傭兵たちも各々吹き飛び地面に叩きつけられ気絶した。



全員が沈黙した後、弾けてしまった傭兵の男を今まで生かしていた赤い水がその場に咲いている花たちにまるでシャワーの様に一気に降り注いだ。




＜　傭兵の男　VS　アントン　＞

アントンの完全勝利