173 / 1,315
第四章
158 迷子の迷子の・・
しおりを挟む
( 傭兵達 )
「 へへっ、なんだよ。
< 守衛師 > とか全然大したことねぇじゃねえか!
あっさり中に入れたぜ。 」
傭兵達は正門を抜け広い迷路の様になっている庭園を走りながら一斉に笑い出す。
数は10、かなりのスピードで進んでいるため随分と広い庭園だが、5分もしない内に屋敷に到着するだろう。
そう傭兵達は確信を持っていた。
「 いくら中級資質ってもピンきりだからな。
希少価値が高いっつーだけで全然大したことない資質もゴロゴロあるし、< 守衛師 >もその類だったんだろう。
まぁ、そもそも消す予定のボクちゃんにそんな優秀な兵士なんて雇わねんじゃね? 」
ちがいねぇ!と言ってまたドッと笑う傭兵たち。
傭兵たちは上機嫌だ。
もうすぐ金、名誉、名声、その全てが手に入る。
逸る気持ちを抑え一人の傭兵が口を開いた。
「 このまま屋敷に侵入して金目のものは根こそぎ奪うぞ。
屋敷にいる奴らはザイール達がやるって話だが・・要は殺さなきゃいいんだよな? 」
その意味を理解した面々はニタ~と笑った。
「 おいおい、お前直前まで娼館で遊んでたんだろう? 」
「 へへっ、いいじゃねぇか。
どうせ殺すんだったらその前に使ったってよ。
女が大当たりだな。
後は優男が一人と・・まあ、華奢なら俺いけるかな~?
もうひとりの男は・・あ~、ごつすぎて無理。
あとリーフ様も手指が動かねぇ顔だよな、ションベン臭くて。 」
「 俺、男だったらパス~、とりあえずボコって楽しもうかな~ 」
足を動かしながらワイワイと楽しくおしゃべりしていたが、次第に口数は減っていき、全員の顔に焦りが出てきた。
もう既に15分は経っている。
なのに庭園の景色はなにも変わらず美しい色とりどりの花が咲き乱れ、目を楽しませるだけ。
まぁ、もっとも、花を見て美しいと想うような上品な感性を持っている者は一人もいないが・・
「 ・・おいっ、なんか変じゃねえか?
こんなに走ってるのにまだ屋敷の前に辿りつかねえぞ? 」
一人の男がそう声を上げると全員足を止め、改めて周囲を見渡した。
周りはまるで壁のように並び立つ緑に覆われた景色とそれを飾る色とりどりの花々・・まるで本物の迷路のようだ。
ゾッと背筋に嫌な感覚が走り、一度戻るぞという声を皮切りに全員元来た道を引き返し始める。
ーーーーが、やはり先ほど同様、全く代わり映えのしない景色に一人の男が怒鳴り散らした。
「 ちきしょう!!どうなってやがる!!
なんで入り口すら見つからねえんだよ!!!
それどころか景色1つ変わらねえじゃねえかっ!!! 」
傭兵達は次第にザワザワとし始め一旦その場に止まり、イライラをぶつけるように壁のように立つ緑の葉の固まりを蹴り飛ばした。
その瞬間ーーー
ーーーゴゴゴゴ!!!と音を立てて凄まじいスピードで再生していく葉っぱ達、あっという間にそれは元の状態へと戻ってしまった。
衝撃の出来事に固まる傭兵達、そしてその様子をあざ笑うかの様に響き渡る女のキャハハッ~!という無邪気な笑い声。
そこでやっと傭兵達は敵の術中に嵌っている事に気がついた。
< 迷い人の資質 > (ユニーク固有スキル)
無限迷子
自身がテリトリーと決めた場所に巨大迷路を出現させ、敵をその中に閉じ込める空間系スキル。
迷路は無限に増やす事ができ、またその構造も好きに構成できるため一度入ってしまえば出る事は非常に困難。
また任意ではなく自動発動も可。
(発現条件)
心に巣食う感情の迷路を解き、その答えに3回以上たどり着くこと。
ある一定以上の魔力、魔力操作を持つこと
一定以上のポジティブ、聡明、決断力を持つこと
リーフ邸の専属侍女、ジェーンの資質は< 迷い人 >
特に突出した能力も無いとされる下級資質であったが、ある時を境にその才能は開花し始める。
その中でももっとも強力、かつ稀有なスキル:< 無限迷子 >は、常にリーフ邸を覆っており、彼女が承認しなければ屋敷にたどり着くことはできない。
「 ーーー!!くそがっ!!
空間系のスキル持ちがいるなんて聞いてねえぞ!!
これじゃあ誰一人外に出れねえじゃねえか!! 」
再生すると分かっているが、男は苛立ちを抑えきれず剣で周りの花をぶった斬る。
全員が忌々しそうに顔を歪め、なんとか脱出を・・と策を練っていると、突然花を斬った男が前にバターンと倒れた。
まるで糸が切れたかの様な倒れ方に、全員が呆れながらこんな時に悪ふざけはやめろよと倒れた男を責めるも男は起き上がろうとしない。
もっとも近くにいた別の男が「 おいっ!! 」と咎める様に屈んでその顔を見ると、倒れた男は恐怖を感じているような形相をしていて、汗を大量に掻きながら目で必死に何かを訴えようとしている。
それを見た男が、「 ひっ!! 」と後退りしようとするとーー・・・
その男も同様にバタンと倒れ込んだ。
その様子を見た仲間達はただごとではない事を察知し慌てて武器を構えるも、一人、また一人と次々に傭兵たちは倒れていく。
ほぼ全員が倒れてしまった中、立っていたのは一人だけ
唯一立っている男は倒れてしまった仲間たちを呆然と見下ろし、「 一体どうなっていやがる・・」と呟いた。
その時ーー
「 おや?一人、毒の耐性持ちがいましたか。 」
穏やかな若い男の声がし直ぐにそちらに視線を向けると、視線の先には一人のニコニコと笑う優男の姿が・・
そいつは胸に手を当て一礼すると、呆然としている傭兵に向かって言った。
「 こんばんは。
ボクはリーフ様の専属庭師のクランと申します。
ボクの庭園へようこそ、侵入者の皆さん。 」
「 へへっ、なんだよ。
< 守衛師 > とか全然大したことねぇじゃねえか!
あっさり中に入れたぜ。 」
傭兵達は正門を抜け広い迷路の様になっている庭園を走りながら一斉に笑い出す。
数は10、かなりのスピードで進んでいるため随分と広い庭園だが、5分もしない内に屋敷に到着するだろう。
そう傭兵達は確信を持っていた。
「 いくら中級資質ってもピンきりだからな。
希少価値が高いっつーだけで全然大したことない資質もゴロゴロあるし、< 守衛師 >もその類だったんだろう。
まぁ、そもそも消す予定のボクちゃんにそんな優秀な兵士なんて雇わねんじゃね? 」
ちがいねぇ!と言ってまたドッと笑う傭兵たち。
傭兵たちは上機嫌だ。
もうすぐ金、名誉、名声、その全てが手に入る。
逸る気持ちを抑え一人の傭兵が口を開いた。
「 このまま屋敷に侵入して金目のものは根こそぎ奪うぞ。
屋敷にいる奴らはザイール達がやるって話だが・・要は殺さなきゃいいんだよな? 」
その意味を理解した面々はニタ~と笑った。
「 おいおい、お前直前まで娼館で遊んでたんだろう? 」
「 へへっ、いいじゃねぇか。
どうせ殺すんだったらその前に使ったってよ。
女が大当たりだな。
後は優男が一人と・・まあ、華奢なら俺いけるかな~?
もうひとりの男は・・あ~、ごつすぎて無理。
あとリーフ様も手指が動かねぇ顔だよな、ションベン臭くて。 」
「 俺、男だったらパス~、とりあえずボコって楽しもうかな~ 」
足を動かしながらワイワイと楽しくおしゃべりしていたが、次第に口数は減っていき、全員の顔に焦りが出てきた。
もう既に15分は経っている。
なのに庭園の景色はなにも変わらず美しい色とりどりの花が咲き乱れ、目を楽しませるだけ。
まぁ、もっとも、花を見て美しいと想うような上品な感性を持っている者は一人もいないが・・
「 ・・おいっ、なんか変じゃねえか?
こんなに走ってるのにまだ屋敷の前に辿りつかねえぞ? 」
一人の男がそう声を上げると全員足を止め、改めて周囲を見渡した。
周りはまるで壁のように並び立つ緑に覆われた景色とそれを飾る色とりどりの花々・・まるで本物の迷路のようだ。
ゾッと背筋に嫌な感覚が走り、一度戻るぞという声を皮切りに全員元来た道を引き返し始める。
ーーーーが、やはり先ほど同様、全く代わり映えのしない景色に一人の男が怒鳴り散らした。
「 ちきしょう!!どうなってやがる!!
なんで入り口すら見つからねえんだよ!!!
それどころか景色1つ変わらねえじゃねえかっ!!! 」
傭兵達は次第にザワザワとし始め一旦その場に止まり、イライラをぶつけるように壁のように立つ緑の葉の固まりを蹴り飛ばした。
その瞬間ーーー
ーーーゴゴゴゴ!!!と音を立てて凄まじいスピードで再生していく葉っぱ達、あっという間にそれは元の状態へと戻ってしまった。
衝撃の出来事に固まる傭兵達、そしてその様子をあざ笑うかの様に響き渡る女のキャハハッ~!という無邪気な笑い声。
そこでやっと傭兵達は敵の術中に嵌っている事に気がついた。
< 迷い人の資質 > (ユニーク固有スキル)
無限迷子
自身がテリトリーと決めた場所に巨大迷路を出現させ、敵をその中に閉じ込める空間系スキル。
迷路は無限に増やす事ができ、またその構造も好きに構成できるため一度入ってしまえば出る事は非常に困難。
また任意ではなく自動発動も可。
(発現条件)
心に巣食う感情の迷路を解き、その答えに3回以上たどり着くこと。
ある一定以上の魔力、魔力操作を持つこと
一定以上のポジティブ、聡明、決断力を持つこと
リーフ邸の専属侍女、ジェーンの資質は< 迷い人 >
特に突出した能力も無いとされる下級資質であったが、ある時を境にその才能は開花し始める。
その中でももっとも強力、かつ稀有なスキル:< 無限迷子 >は、常にリーフ邸を覆っており、彼女が承認しなければ屋敷にたどり着くことはできない。
「 ーーー!!くそがっ!!
空間系のスキル持ちがいるなんて聞いてねえぞ!!
これじゃあ誰一人外に出れねえじゃねえか!! 」
再生すると分かっているが、男は苛立ちを抑えきれず剣で周りの花をぶった斬る。
全員が忌々しそうに顔を歪め、なんとか脱出を・・と策を練っていると、突然花を斬った男が前にバターンと倒れた。
まるで糸が切れたかの様な倒れ方に、全員が呆れながらこんな時に悪ふざけはやめろよと倒れた男を責めるも男は起き上がろうとしない。
もっとも近くにいた別の男が「 おいっ!! 」と咎める様に屈んでその顔を見ると、倒れた男は恐怖を感じているような形相をしていて、汗を大量に掻きながら目で必死に何かを訴えようとしている。
それを見た男が、「 ひっ!! 」と後退りしようとするとーー・・・
その男も同様にバタンと倒れ込んだ。
その様子を見た仲間達はただごとではない事を察知し慌てて武器を構えるも、一人、また一人と次々に傭兵たちは倒れていく。
ほぼ全員が倒れてしまった中、立っていたのは一人だけ
唯一立っている男は倒れてしまった仲間たちを呆然と見下ろし、「 一体どうなっていやがる・・」と呟いた。
その時ーー
「 おや?一人、毒の耐性持ちがいましたか。 」
穏やかな若い男の声がし直ぐにそちらに視線を向けると、視線の先には一人のニコニコと笑う優男の姿が・・
そいつは胸に手を当て一礼すると、呆然としている傭兵に向かって言った。
「 こんばんは。
ボクはリーフ様の専属庭師のクランと申します。
ボクの庭園へようこそ、侵入者の皆さん。 」
119
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる