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第四章
153 暗殺者到来
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( ザイール )
光の入らぬ暗い森の中、俺たちは手はず通りそれぞれ配置についた。
今夜、依頼があった ” 化け物退治 ” とその ” ついで ” を始末するために。
ここから屋敷はもう目と鼻の先、これから同時に突入し相手が反撃する暇を与えることなく一方的な蹂躙を開始する。
依頼を受けた後、諜報担当の奴らに詳しい内情を調べさせたが概ね依頼者の言った通り、とてもじゃないが公爵家などと名乗れない程度の脆弱な守りに、使用人は全部で数人、これでは襲われるのを大歓迎しているようにしか見えない酷いものであった。
この家のご子息が捨て置かれている確かな証拠がてんこ盛りすぎて、思わず笑いが漏れる。
ただ、金はたんまりとあるようで、よくここの従者と侍女がそのご子息のものと思われる品物を購入している姿が見られるそうで、報告があった持ち物は全て極上品、盗んで売れば一財産築く事ができそうだ。
楽勝すぎる仕事に若干物足りなさを感じながら 唯一の気がかりだった人物を思い浮かべる。
この家の家庭教師を務めていた< ドノバン >
奴は元第二騎士団団長で、その強さから「 赤き鬼神 」と呼ばれていた男だ。
ただ、騎士団を辞めるきっかけになったのは自身の息子に負けてその座を奪われたらしいので実際の実力は分からないが・・
しかし用心にこしたことはないと、奴が屋敷を去ったのを見計らってから作戦を開始することにしたのだ。
「 こっちは配置につきましたよリーダー、そっちの守備はどうですか? 」
耳にさした通信用魔道具から上機嫌なボブの声が聞こえた。
「 こっちも問題ない。
このまま森を突っ切れば ” 化け物 ” のいる小屋を襲撃できる。
ランドの方はどうだ? 」
「 はい。 こちらも準備オーケーですよ。
他の皆さんも大丈夫のようですね。 」
ボブ、ランドから問題ないという報告を受け俺は満足気に頷いた。
正門はボブと仲間の傭兵10名、公爵子息がいるであろう本邸の部屋、その直線上の森の中にランドと残りの仲間10名、そして化け物が住んでいる小屋の直線上にある森の中に俺と残りの仲間10名が、それぞれ配置についている。
情報によると執事の資質は< 影従士 >で、小動物などを自在に操り屋敷周辺全てを見張っているそうなので、ボブが正面から堂々と侵入し、そちらに気を取られている間に俺とランドが気配を殺しそれぞれのターゲットに近づき息の根を止める。
< 影従士 >は中級資質ではあるが、主に諜報に長けているとされるため、直接戦闘になればそのプロである俺たちには絶対に勝てない。
動物やモンスターを従わせるにしても自身の力で屈服させなければならず、その使役できるモンスターは本人の強さ以下、つまりできてFランクがいいところだろう。
ご子息様の部屋の近くにいるため戦闘になれば出てくるだろうが、ランドと傭兵10人相手では1分も持たないはずだ。
一番厄介なのは唯一の戦闘系中級資質< 守衛師 >をもつ女守衛。
守りに特化し、特に自分のテリトリーと決めた家には簡単に侵入を許さないため、それを突破していくのは至難の業ーーーーしかしその反面、攻撃力は凡庸でパワー系で押せば押し切れると、高火力アタッカーであるボブが担当することになった。
結果、俺は ” 化け物 ” 担当になっちまい大いに不服だが、その分屋敷にいる女は俺が頂く事になったから良しとするか。
正直死んだ瞬間発動する呪いがあるかもしれねぇと思うと心底怖いが、その場合は瀕死の状態で放置し、屋敷を襲えば大丈夫のはず・・せいぜい死のダンスでも踊って楽しませてもらおう。
呪われているとはいえ中々容姿が整っている ” 化け物 ” が死の恐怖に慄きながらゆっくりと刻まれていく様子と、泣いて逃げ回る女の姿を想像し、興奮を抑えきれず勃起しそうになったところでボブから突撃したとの連絡が入った。
もう少しの我慢、我慢、と鼻歌を歌いながら気配を消し、一歩前に進み出ると、ゾッとするほどの気配を感じた。
そのため慌てて後ろに飛ぶとーー・・
ドンッ!!という大きな音と共に自分が今までいた場所の地面が飴細工のように溶けた。
直ぐに腰ベルトからダガーを引き抜き両手に構えると、闇夜に紛れて一人の人物がのっそりのっそりと姿を現す。
「 ほ~、結構勘がするどいじゃ~ね~か。
三下傭兵としては上々じゃね? 」
肩に背負った大剣、2mはあろうかという恵まれた体格に気の抜けた顔がミスマッチな男。
「 ・・なんでてめぇがここにいやがるんだ。
元第二騎士団団長のドノバン様よー。 」
冷や汗を掻きながらそう吐き捨てると、ドノバンは人を茶化すような腹が立つ顔でニタアァァと笑った。
光の入らぬ暗い森の中、俺たちは手はず通りそれぞれ配置についた。
今夜、依頼があった ” 化け物退治 ” とその ” ついで ” を始末するために。
ここから屋敷はもう目と鼻の先、これから同時に突入し相手が反撃する暇を与えることなく一方的な蹂躙を開始する。
依頼を受けた後、諜報担当の奴らに詳しい内情を調べさせたが概ね依頼者の言った通り、とてもじゃないが公爵家などと名乗れない程度の脆弱な守りに、使用人は全部で数人、これでは襲われるのを大歓迎しているようにしか見えない酷いものであった。
この家のご子息が捨て置かれている確かな証拠がてんこ盛りすぎて、思わず笑いが漏れる。
ただ、金はたんまりとあるようで、よくここの従者と侍女がそのご子息のものと思われる品物を購入している姿が見られるそうで、報告があった持ち物は全て極上品、盗んで売れば一財産築く事ができそうだ。
楽勝すぎる仕事に若干物足りなさを感じながら 唯一の気がかりだった人物を思い浮かべる。
この家の家庭教師を務めていた< ドノバン >
奴は元第二騎士団団長で、その強さから「 赤き鬼神 」と呼ばれていた男だ。
ただ、騎士団を辞めるきっかけになったのは自身の息子に負けてその座を奪われたらしいので実際の実力は分からないが・・
しかし用心にこしたことはないと、奴が屋敷を去ったのを見計らってから作戦を開始することにしたのだ。
「 こっちは配置につきましたよリーダー、そっちの守備はどうですか? 」
耳にさした通信用魔道具から上機嫌なボブの声が聞こえた。
「 こっちも問題ない。
このまま森を突っ切れば ” 化け物 ” のいる小屋を襲撃できる。
ランドの方はどうだ? 」
「 はい。 こちらも準備オーケーですよ。
他の皆さんも大丈夫のようですね。 」
ボブ、ランドから問題ないという報告を受け俺は満足気に頷いた。
正門はボブと仲間の傭兵10名、公爵子息がいるであろう本邸の部屋、その直線上の森の中にランドと残りの仲間10名、そして化け物が住んでいる小屋の直線上にある森の中に俺と残りの仲間10名が、それぞれ配置についている。
情報によると執事の資質は< 影従士 >で、小動物などを自在に操り屋敷周辺全てを見張っているそうなので、ボブが正面から堂々と侵入し、そちらに気を取られている間に俺とランドが気配を殺しそれぞれのターゲットに近づき息の根を止める。
< 影従士 >は中級資質ではあるが、主に諜報に長けているとされるため、直接戦闘になればそのプロである俺たちには絶対に勝てない。
動物やモンスターを従わせるにしても自身の力で屈服させなければならず、その使役できるモンスターは本人の強さ以下、つまりできてFランクがいいところだろう。
ご子息様の部屋の近くにいるため戦闘になれば出てくるだろうが、ランドと傭兵10人相手では1分も持たないはずだ。
一番厄介なのは唯一の戦闘系中級資質< 守衛師 >をもつ女守衛。
守りに特化し、特に自分のテリトリーと決めた家には簡単に侵入を許さないため、それを突破していくのは至難の業ーーーーしかしその反面、攻撃力は凡庸でパワー系で押せば押し切れると、高火力アタッカーであるボブが担当することになった。
結果、俺は ” 化け物 ” 担当になっちまい大いに不服だが、その分屋敷にいる女は俺が頂く事になったから良しとするか。
正直死んだ瞬間発動する呪いがあるかもしれねぇと思うと心底怖いが、その場合は瀕死の状態で放置し、屋敷を襲えば大丈夫のはず・・せいぜい死のダンスでも踊って楽しませてもらおう。
呪われているとはいえ中々容姿が整っている ” 化け物 ” が死の恐怖に慄きながらゆっくりと刻まれていく様子と、泣いて逃げ回る女の姿を想像し、興奮を抑えきれず勃起しそうになったところでボブから突撃したとの連絡が入った。
もう少しの我慢、我慢、と鼻歌を歌いながら気配を消し、一歩前に進み出ると、ゾッとするほどの気配を感じた。
そのため慌てて後ろに飛ぶとーー・・
ドンッ!!という大きな音と共に自分が今までいた場所の地面が飴細工のように溶けた。
直ぐに腰ベルトからダガーを引き抜き両手に構えると、闇夜に紛れて一人の人物がのっそりのっそりと姿を現す。
「 ほ~、結構勘がするどいじゃ~ね~か。
三下傭兵としては上々じゃね? 」
肩に背負った大剣、2mはあろうかという恵まれた体格に気の抜けた顔がミスマッチな男。
「 ・・なんでてめぇがここにいやがるんだ。
元第二騎士団団長のドノバン様よー。 」
冷や汗を掻きながらそう吐き捨てると、ドノバンは人を茶化すような腹が立つ顔でニタアァァと笑った。
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