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第四章

151 結婚式

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( レオン )



その後、色々なお店を周ったが、リーフ様は結局なにも買うことなく・・

パンを2つだけ買って教会近くの広場に腰を下ろすと、お腹が空いていたのか渡したパンを直ぐに食べ始めた。


そしてどうやらその味が相当お気に召したらしい。

目を閉じジーンとその余韻に浸りながら食べていて、その合間合間に俺にもそのパンを食べさせ嬉しそうに笑っている。




あぁ幸せだな




リーフ様と一緒にいるとずっと感じる事ができるこの気持ち。


隣にいるだけで、目が合うだけで俺はこんな幸せな気持ちを沢山味わう事ができる。


しかし、その反面・・リーフ様が側にいない時は会いたくて会いたくて苦しくて、だから側に置いて沢山命令してくれれば嬉しいのに、リーフ様は、俺を使おうとしてくれない。


それがもどかしいし、とても悲しい。


・・でも、何だかそれも嬉しい。



可愛くて可愛くて仕方がないリーフ様

ずっとずっと一緒にいたい。

そして幸せでいてほしいと、そう願う。


ふわふわとした幸せに浸りながら、満足そうにダラリと座るリーフ様を見ていたその時ーー




ーーリンゴ~ン、リンゴ~ン




小うるさい鐘の音が教会の方から聞こえ、リーフ様がそちらに視線を向ける。


それを追って俺も教会の方へ視線を向けると、なにやら教会の中からゾロゾロと人が出てきたのを確認した。


確かあれは結婚式という儀式の一種だ。


血の繋がりのない男と女のみが執り行える儀式で、お互い当然のように隣にいる事が許される、まさに最強とも言える強さを持つ絆を繋ぐもの。


そのお互いを繋ぐ絆の材料が、"   愛 "  


先の人生全てを共にしたいと願う ” 愛 ” とは一体どの様なものなのだろうか。



俺は男性体である為、その ” 愛 ” とやらを女性体をもつ誰かに抱くことになるのだが・・?



「 ・・・・。 」



全く想像がつかないそれに首を傾げながら、俺は紫のもじゃもじゃが言っていた事を思い出す。


"  愛はと~っても幸せで気持ちがいいものなんだぜぇ~。 "


そう言って顎に両手を当ててうっとりした表情を浮かべていたが、それはリーフ様と一緒にいる以上の幸せなのだろうか?



【 森羅万象 】はその答えをくれない。



なんとなく隣にいるリーフ様に視線を向けると、彼はぼんやりと遠くを見るような目で結婚する男女を見つめていた。


リーフ様は結婚に興味があるのだろうか?


そう考えた瞬間、ザワッとした不快感が湧き上がり同時に疑問が浮かぶ。



俺は男、リーフ様も男、ならば結婚というものは俺たちには関係ないものだ。


それにすでに俺の首には、リーフ様との切っても切れぬ絆があるのだから特に不快に感じる必要などないのではないか?


理論的に考えればそう。



ーーしかしそれには更なる疑問が残る。



紫のもじゃもじゃはリーフ様に女と接することをよく勧めていたが、俺はそれを見る度に今と同様、酷く不快な気持ちになった。


奴隷になる前は、” 俺が手にすることのできないリーフ様との絆を他の人間に渡したくはない ” と、その一心であったが、既に俺はそれを手に入れている。


なら彼が他の絆を誰と繋ごうとしても、それに対し俺が不快になるのは理屈に合わない。


自分が既に持っているものを他人が持っていても、別に自分の手にあるものが消滅するわけではないのだから。




しかしーーー


"  奴隷  "  という理想的な絆を手に入れたのに、俺はリーフ様に女を近づけようとする紫のもじゃもじゃに不快を感じたーーーこれは理屈に合わない感情だ。



ジワッ・・・


何か未知の・・自分の想像を超える何か恐ろしいものがすぐそこまで迫って来ているような妙な感覚を感じ、それをごまかすようにリーフ様に尋ねた。



「 リーフ様、” 愛 ” とは一体どんなものですか? 」



実体というものを持たない愛というものは、その性質がゆえに様々なトラブルを引き起こす。


そんな不確かなものでこの先の時間を共に過ごそうと決めるのは、かなりギャンブル性の高い選択だと思うが、

世の大半の人間がその選択をしようとするということはその ” 愛 ” には、大きなメリットがあるということだ。


全く違う個体同士を結びつける、その正体はなんなのか?

俺は不思議で仕方がない。



リーフ様は俺のそんな不躾な質問にも、特に嫌な顔もせず淡々と答えてくれた。




「 ずばり一緒にいて幸せだなって感じることだよ。 」

( リーフ様と一緒にいるだけで幸せ )




「 愛があれば、隣にいるだけで、目が合うだけで幸せな気持ちになるんだ。 」

( 隣にいるだけで、目が合うだけで俺は幸せな気持ちを味わえる )




「 あとは姿が見えないと会いたくてたまらなくなるし、その人のためなら何でもしてあげたくなる。 」


( 会いたくて会いたくて苦しくて、だから側に置いて沢山命令してくれれば嬉しいのに、リーフ様は、俺を使おうとしてくれない。


それがもどかしいし、とても悲しい。


・・でも、何だかそれも嬉しい。 )





「 その人が何をしても可愛くてたまらない気持ちになって、ずっと一緒にいたくなるし、幸せになって欲しいと誰よりも願うようになるよ。 」

( 可愛くて可愛くて仕方がないリーフ様

ずっとずっと一緒にいたい。

そして幸せでいてほしいと、そう願う。)






「 ・・えっ・・? 」



リーフ様のあとに続く自分の言葉に呆然とする。


それは日頃何度も何度も彼に対し感じていた気持ちそのものであった。




ーーそれが愛?なら俺のこの感情は・・・




ブワッと顔に熱が集まるのを感じた。





結婚は男と女しかできない。

そしてそれをつなぐのは ” 愛 ”

でも俺はその ” 愛 ” をリーフ様に対して持っている。


俺の頭が凄まじい速さで回転し答えにたどり付きそうになった、その時ーーリーフ様が先ほども見せたどこか遠くを見つめる目で言った。




「でも、残念ながら自分と一緒にいても幸せになれないことが世の中にはあるんだよ。

その時はその人の幸せを願って離れてあげるのも ” 愛 ” ってやつだと思うよ。

自分が側にいなくても好きな人が幸せなら嬉しいものさ。 」


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