上 下
165 / 1,370
第四章

150 レオンの衝撃

しおりを挟む
☆ そろそろストーカータグが入るかもしれません・・少し注意



( レオン )



今日はリーフ様とお出かけする日!



俺はドキドキする胸を押さえながら、まだ朝日が昇る前の今現在、リーフ様が眠る部屋の方角に視線を向けたまま絨毯の上に体を横たえている。


俺の体はこの四年間眠るということを必要としなくなり、それに対し何ら変化はみられない。


眠る事ができないわけではない様なので、寝ようと思えば寝れるが・・


それならリーフ様の気配を感じていたほうが良いかと俺の五感全てをリーフ様に "  張り付けて  "  それを存分に味わって過ごすことにした。



視覚はリーフ様の目がまだ閉じられているため暗いが、息遣いや心臓の音、サラサラ流れる血液の音に温かな体温、匂い、

その全ての感覚が  "  張り付けた  "   俺の感覚器を通して伝わってくると、じんわりとした幸せを感じることができる。



奴隷になってからは物理的な距離も近づき、俺の毎日はまた新たな幸せで満ち溢れている。




この幸せで満たされた世界に二人きりでいられたら・・




ーーそう願っても中々上手くはいかないらしい。





リーフ様はこれから中学院という学び場に通うことをご所望だ。



そこにはとても沢山の人間達がいるそうで、それはつまりまた新たにリーフ様の側に湧く邪魔な存在達が有象無象に出現する可能性があるということ。


それにより心をかき乱される日々になりそうだと思わずため息を漏らした後、それに続くリーフ様の言葉を思い出す。



” 中学院に通う間、俺たちは寮生活をすることになるから、早めに荷物整理をしておこうね。 ”




なるほど・・?


それにとりあえず納得した俺は言われたとおり直ぐに私物をまとめ始めた。





リーフ様に貰った絨毯。


ほのかに香るリーフ様の匂い付き、大事な物なので勿論持っていく。



金色のお皿。


リーフ様の横によくいる太い方に貰った。

リーフ様に何かを捧げる時に使うため、できるだけ良いものをよこせと言ったらこれをくれた。


これも必要だ、持っていく。



リーフ様に貰った砂ねずみの人形。


リーフ様に似ている。

その時点で無碍には出来ないし、何よりリーフ様からの贈り物。


現在はこの部屋で一番豪勢な場所にとベッドの上にソッと乗せ、毎日花をお供えしている。


勿論これも持っていく。


それに服を数着ーーと、荷物整理を直ぐに終えた俺を見て、リーフ様は奴隷になった記念を買いに行こうと誘ってくれたのだ。



” 嬉しい ” が心を満たす。




その時の気持ちを思い出しながら上機嫌で長い夜を過ごし、やっとお出かけする瞬間を迎えた俺は、ドキドキしながら街へと向かうリーフ様の後をついていった。


” リーフ様と一緒に歩く ”


それだけで俺は十分幸せで、欲しいものはないかという問いに対しそのまま素直に ” 一緒に歩くだけで充分幸せだ ” と答える。



すると、リーフ様は考え込む様子を見せてから ” とりあえず服屋に行こう ” と言って俺を連れてそこへと向かった。



服屋・・と向かっている先の事を考えてから、フッと丈が短くなってきた袖に視線を落とす。




俺の成長は周りの者たちに比べて早く、服の消費がとても早かった。


特にリーフ様の背を越えた頃からは全て新品を買わなくてはならず、俺は別に麻袋などで十分だと言ったが、リーフ様曰くーーー


” 下僕の服をきちんとしなければ主人が恥をかく ” 


ーーなのだそうで、自分の洋服はそっちのけでせっせと俺の服を買っては着せてくれる。



これ以上大きくなれば迷惑が・・と思ったが、大きくなる度に嬉しそうに笑うリーフ様をみると俺も嬉しくて・・



リーフ様が喜んでくれるなら、俺はこの体に生まれてよかったと心からそう思えた。



そうしてまた1つ、俺は俺のことを受け入れる事ができる。



自然と緩む口元、それにも愉快を感じながら歩いているとリーフ様は一軒の服屋に入った。



店内は様々な種類の洋服が並べられており、リーフ様は俺に ” 好きな服を選んでおいで ” とだけ伝え、簡素な服をパッパッと迷うこと無く選んでいく。


リーフ様が選ぶ服をぼんやりと見つめた後、彼が言う通りにしなければと俺は ” 好きな服 ” を見つけるべく並べられている服達に視線を走らせていった。


目に映る服たちは簡素なものが多いようだが、フリル付きの服やきめ細やかな刺繍などが施されているものもそれなりに置いてある様だ。



俺は袖にフリルがついた白いシャツを一枚持ち上げ、繁々と見つめた。



貴族という身分の者達は総じて豪華な洋服を好む傾向がある。


しかしリーフ様は貴族であるにも関わらずそういった洋服は好まず簡素な洋服ばかりを着ているので、俺はこの様な洋服を着たリーフ様を見たことがなかった。



手に持ったフリルつきのシャツをソッ・・と簡素なシャツの横に置き、今度は並んだ洋服をジッと見つめる。



シンプルな服のリーフ様は ” 可愛い ” 


でもきっと装飾された服を着ても ” 可愛い ” に違いない。




今度は更に隣のエリアにある洋服の棚へと移動し、貴族が一般的に着るような胸元と袖にフリルがついたシャツを手に取って見る。


そしてまた隣に移動しては見て・・といつもと違う感じの洋服を着たリーフ様を想像しながら店を見て回っていると、視線の先に一着の服が目に入った。



淡いエメラルド色をした生地に、フリルとリボンをこれでもかとふんだんに使ったカラーのドレス。



動くという観点から見れば何ひとつメリットがない服だ。



普段ならばそんなものは気にも止めないのだが、リーフ様が着るという前提で服を見ていた俺にとって、それは正体不明の衝撃を感じさせるものであった。



彼の瞳とおそろいの色のドレス、それをリーフ様が着る・・



無邪気に笑うリーフ様の身を飾るドレスは、きっとその美しさをより高みへと押し上げてくれる・・ような気がして、それを着たリーフ様をふっと想像しようとした・・その時ーーー



「 おやおや、随分可愛らしいドレスだね。

着れたら凄く可愛いんじゃないかな?


とりあえず買ってみるかい? 」



突然のリーフ様からの掛け声に驚き、焦りながらその妄想を瞬時に散らした後、” 男のリーフ様に対し俺はなんてものを想像しようとしたのか! ” という申し訳無さと恥ずかしさとで顔に熱が集まるのを感じた。



俺は直ぐに謝罪の言葉を口にしたが、なんとリーフ様から帰ってきたのは予想だにしない言葉であった。


” 洋服はなんでもいい ”


” 可愛いと着たくなるのはむしろ当然 ”


そう言い切ったのだ。



俺がリーフ様のドレス姿を見たいと思うことは極一般的な事、更にはリーフ様も喜んでそれを着たいと思っていると・・?



先ほど消したはずの妄想が、あっという間に頭の中のセンターに躍り出る。



ドレスを身にまとい、笑顔で俺の名を呼ぶリーフ様は・・・




ーーこの世のものとは思えぬほど美しかった。





・・・なるほど、確かにこれがおかしいものなわけがない。




ホッと安堵し、それを買おうというリーフ様に喜んで従おうと思ったがーー俺はその気持ちをぐっと堪えドレスを手放した。


リーフ様の美しさを引き出すのに、彼自身がそれを買うのは嫌だと思ったからと、自分の力で手に入れたものが彼の身を包み込む・・その事になぜかたまらない魅力を感じたからだ。


いつか自分の手で贈りたい。


そして可愛い笑顔を見せて欲しいとそんな不思議な気持ちを抱きながら、それをリーフ様に伝えると「 分かった 」と俺の気持ちを受け入れてくれた!



それに喜びを噛み締めながら、そのまま買い物を続けるリーフ様の後を喜んでついていった。


しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

処理中です...