上 下
161 / 1,315
第四章

146 問題な〜し

しおりを挟む

( リーフ )





レオンに必要なのは、とにかく経験。


今後は強さ的なモノより精神的なモノを優先するため、いろんなモノも見せていこう。


ぶらぶら歩いている内に好き嫌いがなんとなく分かってくるかもしれないし・・


上機嫌に「 はい。 」と答えたレオンは深くフードを被り、大人しく俺についてくる。



黒のフード付きマントはかなり大きめなので分かりにくいが、そこからはみ出ている右手や右足を見ると袖や裾が中途半端な長さになっているのが見える。



どうやらまた成長したようだ。

ついこの間服を新調したばかりだというのに・・




俺もザ・平均的に成長しているのだが、レオンの成長はそれを遥かに追い抜いていく。


多分このままいくと2m近くまでいきそうだ。




この世界では、基本的に前衛職の資質を持っている者の方が体格が良い。


それに対し俺のように前衛も後衛もOKな全衛型の場合は体格も様々。

特に得意な方に体格が寄るわけでもなさそうなので、成長は本来の遺伝子に沿ったものになると思われる。


そう考えれば、レオンの体格と顔の造形は生まれ持ったものなのか・・


まぁ、顔に関して言えば、レオンのお母さんは貴族を相手にできる程の美しさを持っているらしいので、それに似たのかもしれない。



どちらにせよ羨ましい限りだ。




そんなレオンの天は二物を与えた的な奇跡のスタイルの横で、少しでも悪役補正的なもので背が伸びますように!と俺はつま先をググッと伸ばした。



物語のリーフ成分・・悪役補正・・とブツブツつぶやきながら、俺はレオンを連れて安い!シンプル!が売りの洋服屋さんに入る。


そしてレオンに "  自分で好きなお洋服を選んでおいで  "   とだけ伝え、自分の着る洋服も見に早速店内を物色し始めた。



一般的に貴族の着る服はヒラヒラフリルのついたド派手なものが多く、ドレスは勿論だが男性の服にもところどころフリルがついているーーが、俺は一度も着たことがない。



そりゃあ、かっこいい男性がそういった服を着れば凄く似合うなぁと思うし?

神々しさすら感じてしまうというのもよ~くわかる!




・・・ーーでもね? 



俺はほら・・あれだからさっ!




なんといっても俺の顔はご当地キャラにいてもおかしくはない砂ネズミであるため、そんなご立派な服を着てしまえば、洋服が本体になってしまうのは確実ーーー!



裸の俺がポツンと立っている横で、脱ぎ捨てたゴテゴテ服に向かい「 リーフ様! 」と崇めているレオンが思い浮かんでゾッとした。



あり得る未来だ・・


そう思いながらゴクリと唾を飲み込む。



よって俺はできるだけシンプルな目立たない服を着る。


いわば俺とシンプル服は類友。

そして人生をともにする相棒、この関係性は生涯変えるつもりはない。



うんうんと頷きながら、俺はシンプルな白いシャツをポイポイと選んで持つと、レオンの元へ向かった。




キョロキョロと店内を探し、俺がいたエリアよりさらに店の奥の方にポツンと立っているレオンの背中を見つける。


俺はその背に向かって直ぐに声をかけようとしたがーーー


レオンが手に持つ服を見てピタリと動きを止める。




淡いエメラルド色をした生地に、フリルとリボンをこれでもかとふんだんに使ったとても可愛らしいカラーのドレス。




そうそう、ドレスだ。




レオンはそれを手に持ちじっと食い入るように眺めている。



俺の脳裏にはベッドに鎮座した砂ネズミとお花が置かれたおままごとセットが浮かび上がった。



大抵の子供という生き物は、性差によって好むモノに違いが見られる。


男の子は車や電車、女の子は人形やおままごと、そして可愛いものに敏感なのは女の子。


しかし全員がそういうわけではなく、女の子でも車や電車が好きという子もいるし、男の子でも可愛いもの大好き、人形、おままごと大好き!の子も勿論いる。



レオンはどうやらそのタイプの男の子であったようだ。



多分今持っているドレスも着てみたいな~という気持ちであんなに食い入るように見ているにちがいない。


残念ながらちょっと・・いや、だいぶレオンには小さそうだが、そういう好きと言う気持ちが芽生えたのはとても良いことだ!




車でも人形でも好きなものは好き、その気持ちが大事。




レオンには是非その性質を生かして楽しむという感覚を覚えて頂きたい。


俺はニッコニコしながらレオンに近づいた。




「 おやおや、随分可愛らしいドレスだね。

着れたら凄く可愛いんじゃないかな?


とりあえず買ってみるかい? 」



俺の声にレオンはビクッと肩を震わせて、顔を赤らめた。



多分ーー



” 俺は男の子なのにドレスが着たいとバレてしまった ” 

と内心焦っているのだろう。




なんのなんの、服など恥部が隠れればなんだって一緒。



裸至上主義の友達の「 人類の普段着は裸になるべき 」という主張からすれば、そんなものオムライス定食に添えられたパセリ程度の主張にすぎない。



「 き・・着た姿が見たいなど・・お、俺はそんな不純なこと・・

・・いえ、申し訳ありません。


ーーー俺は・・・ 」




「 レオン、洋服など何を着たっていいんだ。

こんなに可愛いと着たくなるのはむしろ当然の事なんだよ。 」


ボソボソと必死に言い訳しようとするレオンをしっかりと諭す。



好きなものに否定の言葉はいらない。

存分に着ると良いと言い切ると、レオンの顔は更にかぁぁ~と赤くなった。



「 そ、そうなのですか・・

男にドレスを・・さらにドキドキするのは変な事ではないのですね。


これは普通・・そうですか・・ 」



赤い顔のままホッ安堵の息を吐くレオンに、俺はうんうんと大きく頷いてから、

「 じゃぁ、それを持ってお会計をしようか。 」

と言ったが、レオンは名残惜しそうにそのドレスを戻した。



あれ?と思い買わないのか尋ねる前に、レオンは俺の方を振り向きしっかりと目線を合わせてくる。


「 いえ、今は買いません。

いつか自分で稼いだお金で買います。


サイズも合ってませんから・・ 」




確かにドレスのサイズは俺でも小さいような子供サイズ・・

勿論レオンなど首辺りまでしか入らず、良くてちょっとド派手なマフラー、悪くてデカいえりまきトカゲになってしまうことだろう。



えりまきトカゲの結構なインパクトに笑いが込み上げたが必死で抑え込み、

「 分かった。 」と言って頷いた俺は、レオンのサイズに合うシンプルな洋服も一緒に購入後、違うお店を覗きに向かった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...