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第四章
146 問題な〜し
しおりを挟む( リーフ )
レオンに必要なのは、とにかく経験。
今後は強さ的なモノより精神的なモノを優先するため、いろんなモノも見せていこう。
ぶらぶら歩いている内に好き嫌いがなんとなく分かってくるかもしれないし・・
上機嫌に「 はい。 」と答えたレオンは深くフードを被り、大人しく俺についてくる。
黒のフード付きマントはかなり大きめなので分かりにくいが、そこからはみ出ている右手や右足を見ると袖や裾が中途半端な長さになっているのが見える。
どうやらまた成長したようだ。
ついこの間服を新調したばかりだというのに・・
俺もザ・平均的に成長しているのだが、レオンの成長はそれを遥かに追い抜いていく。
多分このままいくと2m近くまでいきそうだ。
この世界では、基本的に前衛職の資質を持っている者の方が体格が良い。
それに対し俺のように前衛も後衛もOKな全衛型の場合は体格も様々。
特に得意な方に体格が寄るわけでもなさそうなので、成長は本来の遺伝子に沿ったものになると思われる。
そう考えれば、レオンの体格と顔の造形は生まれ持ったものなのか・・
まぁ、顔に関して言えば、レオンのお母さんは貴族を相手にできる程の美しさを持っているらしいので、それに似たのかもしれない。
どちらにせよ羨ましい限りだ。
そんなレオンの天は二物を与えた的な奇跡のスタイルの横で、少しでも悪役補正的なもので背が伸びますように!と俺はつま先をググッと伸ばした。
物語のリーフ成分・・悪役補正・・とブツブツつぶやきながら、俺はレオンを連れて安い!シンプル!が売りの洋服屋さんに入る。
そしてレオンに " 自分で好きなお洋服を選んでおいで " とだけ伝え、自分の着る洋服も見に早速店内を物色し始めた。
一般的に貴族の着る服はヒラヒラフリルのついたド派手なものが多く、ドレスは勿論だが男性の服にもところどころフリルがついているーーが、俺は一度も着たことがない。
そりゃあ、かっこいい男性がそういった服を着れば凄く似合うなぁと思うし?
神々しさすら感じてしまうというのもよ~くわかる!
・・・ーーでもね?
俺はほら・・あれだからさっ!
なんといっても俺の顔はご当地キャラにいてもおかしくはない砂ネズミであるため、そんなご立派な服を着てしまえば、洋服が本体になってしまうのは確実ーーー!
裸の俺がポツンと立っている横で、脱ぎ捨てたゴテゴテ服に向かい「 リーフ様! 」と崇めているレオンが思い浮かんでゾッとした。
あり得る未来だ・・
そう思いながらゴクリと唾を飲み込む。
よって俺はできるだけシンプルな目立たない服を着る。
いわば俺とシンプル服は類友。
そして人生をともにする相棒、この関係性は生涯変えるつもりはない。
うんうんと頷きながら、俺はシンプルな白いシャツをポイポイと選んで持つと、レオンの元へ向かった。
キョロキョロと店内を探し、俺がいたエリアよりさらに店の奥の方にポツンと立っているレオンの背中を見つける。
俺はその背に向かって直ぐに声をかけようとしたがーーー
レオンが手に持つ服を見てピタリと動きを止める。
淡いエメラルド色をした生地に、フリルとリボンをこれでもかとふんだんに使ったとても可愛らしいカラーのドレス。
そうそう、ドレスだ。
レオンはそれを手に持ちじっと食い入るように眺めている。
俺の脳裏にはベッドに鎮座した砂ネズミとお花が置かれたおままごとセットが浮かび上がった。
大抵の子供という生き物は、性差によって好むモノに違いが見られる。
男の子は車や電車、女の子は人形やおままごと、そして可愛いものに敏感なのは女の子。
しかし全員がそういうわけではなく、女の子でも車や電車が好きという子もいるし、男の子でも可愛いもの大好き、人形、おままごと大好き!の子も勿論いる。
レオンはどうやらそのタイプの男の子であったようだ。
多分今持っているドレスも着てみたいな~という気持ちであんなに食い入るように見ているにちがいない。
残念ながらちょっと・・いや、だいぶレオンには小さそうだが、そういう好きと言う気持ちが芽生えたのはとても良いことだ!
車でも人形でも好きなものは好き、その気持ちが大事。
レオンには是非その性質を生かして楽しむという感覚を覚えて頂きたい。
俺はニッコニコしながらレオンに近づいた。
「 おやおや、随分可愛らしいドレスだね。
着れたら凄く可愛いんじゃないかな?
とりあえず買ってみるかい? 」
俺の声にレオンはビクッと肩を震わせて、顔を赤らめた。
多分ーー
” 俺は男の子なのにドレスが着たいとバレてしまった ”
と内心焦っているのだろう。
なんのなんの、服など恥部が隠れればなんだって一緒。
裸至上主義の友達の「 人類の普段着は裸になるべき 」という主張からすれば、そんなものオムライス定食に添えられたパセリ程度の主張にすぎない。
「 き・・着た姿が見たいなど・・お、俺はそんな不純なこと・・
・・いえ、申し訳ありません。
ーーー俺は・・・ 」
「 レオン、洋服など何を着たっていいんだ。
こんなに可愛いと着たくなるのはむしろ当然の事なんだよ。 」
ボソボソと必死に言い訳しようとするレオンをしっかりと諭す。
好きなものに否定の言葉はいらない。
存分に着ると良いと言い切ると、レオンの顔は更にかぁぁ~と赤くなった。
「 そ、そうなのですか・・
男にドレスを・・さらにドキドキするのは変な事ではないのですね。
これは普通・・そうですか・・ 」
赤い顔のままホッ安堵の息を吐くレオンに、俺はうんうんと大きく頷いてから、
「 じゃぁ、それを持ってお会計をしようか。 」
と言ったが、レオンは名残惜しそうにそのドレスを戻した。
あれ?と思い買わないのか尋ねる前に、レオンは俺の方を振り向きしっかりと目線を合わせてくる。
「 いえ、今は買いません。
いつか自分で稼いだお金で買います。
サイズも合ってませんから・・ 」
確かにドレスのサイズは俺でも小さいような子供サイズ・・
勿論レオンなど首辺りまでしか入らず、良くてちょっとド派手なマフラー、悪くてデカいえりまきトカゲになってしまうことだろう。
えりまきトカゲの結構なインパクトに笑いが込み上げたが必死で抑え込み、
「 分かった。 」と言って頷いた俺は、レオンのサイズに合うシンプルな洋服も一緒に購入後、違うお店を覗きに向かった。
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