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第三章

122 ずっと一緒に・・??

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( レオン )




大人しくリーフ様の後に続くと、どうやら街の中心部へ向かっているようで、ガヤガヤと煩い道をひたすら真っ直ぐ歩いていく。


行く先々で目に入る朝方同様の人の多さに更に輪を掛けたような大騒ぎっぷりを見ながら、ふと自身の心境の変化に気づいた。


先ほどあれだけうっとおしいと思っていた音楽や人の姿。

何故か隣にリーフ様がいるだけで特に負の感情が湧き上がる事がなく、寧ろーーー・・




俺は前やや前を歩くリーフ様にチラッと視線を向けた。




キョロキョロとせわしなく動き回る視線に、喜びを隠しきれない様子でソワソワと震える体、キラキラ光る "  楽しい  "  で溢れた瞳に輝く様な笑顔。


そんな楽しそうにするリーフ様を目にし口元から自然と笑みが溢れる。



歩きながらぶつかる肘や触れる手にドキドキしながら、リーフ様の歩数に合わせて歩いていると、そのまま一軒の出店に入っていった。





「 へいっ!らっしゃっ・・ってリーフ様じゃないですか!


今年はお祭りに参加されるんですね。 」




その店の男は、リーフ様に気さくに声をかけると次に後ろにいる俺の方へとチラッと視線を向けた。



"   化け物だ! "


"  邪神の類かもしれん!早く追い払え! "



頭の中には今までの "   普通 "  が過ったが、それを全く裏切る形で男は無反応な態度を見せ、なんでもない様にそのままリーフ様との会話を続けた。


 
” リーフ様の側にいるものは無害 ” そう物語る対応だ。



恐らく街の人間ならばたいていはこの対応をしてくるだろうが、街の外から来ている人間も今日は多くいるようなので気をつけねばいけない。


騒ぎになればリーフ様が嫌な思いをしてしまうから。


俺は頭にかぶるフードを軽く下に引っ張っり深く被り直した、その時ーー


リーフ様が購入した串焼きを一つ召し上がると同時に、ううっ~と何かに耐えるような反応をしながらパクパクと幸せそうにかぶり付く姿を見て、ふっと思った。



あぁ、 ” 可愛い ” なーー



一生懸命にご飯を食べる彼はとても ” 可愛い ”

油で汚れた口も ” 可愛い ” 

リーフ様は全てが ” 可愛い ”


そして ” 可愛い ” から何かをしてあげたくて仕方がない。


リーフ様は俺が何かしなくても何でもできてしまうのに、俺は何かをしたくて仕方がないのだ。



” 可愛い ” リーフ様がそれで ” ありがとう ” と言ってくれた時、俺はまた幸せになることができる。


これも不思議。


自分の労力を他者に提供する事は不利益でしか無いのに、それが幸せに感じるなんて・・本当に不思議な話だ。


そう考えるとリーフ様に何かをすることは、俺の幸せのためか。


つくづく俺は自分の欲しか優先できぬ醜い化け物なのだなと思いながら、油で汚れた彼の口をハンカチで拭い、分かっていても手を出さずにはいられない自分に苦笑した。



やや薄暗い想いを抱きながら口元を綺麗に拭き取ると、リーフ様は「 ありがとう。 」と言って残りの串焼きを差し出してきた。



リーフ様は食べることが好き。

だから俺と一緒にいると沢山の種類が食べれて嬉しいのだそうで、そのせいか俺にも沢山の食べ物を食べさせようとしてくる。



しかしそもそも俺は空腹を感じない。


あんなに俺を苦しめていた飢餓感は、ある日を境になくなってしまった。

本当は食べなくても良いが、リーフ様が喜ぶから食べる。



俺の ” 幸せ ” の為に。



そうして出店を回り続けお腹が満たされたリーフ様は、開けた場所で休憩を取ろうと言い出した。



そのため俺はいつも通り ” 椅子 ” になろうと先に座って待機したのだが、

” 子供が真似するから今日はナシ~ ” と言って隣にササっと座ってしまう。


それにショックを受けながらゴロンと転がったリーフ様をジッと見下ろした。



転がる姿も ” 可愛い ” な。


リーフ様は修行中もよくこうして転がってしまうためよく見る光景ではあるが、いつもと違う場所に転がっているとまた違う新鮮さを感じる。



そう感じた瞬間、そういえば・・と、俺は紫のもじゃもじゃがある日言っていた言葉を唐突に思い出した。



"    男は普段と違うシチュエーションでグッとくるんだよな~   "




・・今の俺は、もしかしてグッときているのだろうか?


その後に続く会話からして今の状況はそれに類似している気がしないでもない。

しかも他にもちょこちょこと当てはまる出来事があるようにも思える。



なるほど・・これはごくごく一般的な事な事らしい。



一応納得した俺は、そうか・・と口の中で呟き、そのまま可愛いリーフ様をひたすら見つめていると、その後に続く言葉も引きずられる様に思い出す。



"   まずは   "   可愛い "   からスタートだな!

それからは勝手にステップアップしていくから大丈夫だろう。 "




 ” 可愛い ” から進化していく感覚があるのか・・今の時点では想像が追いつかない

悶々としながらそれについて考えていると、リーフ様は独り言の様に先ほど食べた物や出来事について話し、最後はぷっと小さく笑った。



俺はそれを見て眩しそうに目を細める。




リーフ様が語る過去の中に俺がいる。

今この瞬間、ここにいる自分ではない自分が。



そして今この瞬間の俺もリーフ様の中で一生存在し続ける。

思い出という彼を構成する一部分として・・




それってなんて幸せな事なんだろうーー


じんわりとした幸せの気持ちが体に染み渡る。



俺はずっとリーフ様の思い出の中に居続け、彼の一部分で在りたい。






ーーーでも・・



そこでフッと嫌な妄想が顔を出し、じんわりとした "   幸せ  "   は、   "   恐怖   "   へと変わった。



嫌だと言われたら?

もう下僕はいらない、消えろと言われたら・・?




それを考えた瞬間ーーー

恐ろしいほどの恐怖が俺の全身を覆い尽くした。


不快、不安、焦り・・全ての負の感情が混ざり合い身体を包み込むと、寒さなど感じないはずのこの身体は震え、乱れることの無いはずの呼吸は乱れる。




” 恐怖 ” とはなんて耐え難い感覚なのだろう・・!


これこそが無理やり植え付けられたものではない本物の ” 恐怖 ” ーーー



真っ暗になりそうな視界の中、必死にリーフ様を見失わないようひたすら彼を見つめていると・・彼はフッと消えてしまう様な笑みを俺に見せた。


たまに目にするリーフ様のこの笑顔・・俺は目を見開き綺麗な笑みに見惚れるのと同時に、不安で不安で仕方がなかった。



なぜかと言われても理由は分からない。



戸惑う俺を無視するように突如小さな爆発音がして、何かがパラパラと空から降ってくる。


魔力で出来た花・・?


黒ずみ始めた視界の中、かろうじて確認できたそれにリーフ様は歓声を上げながら飛び起き、空から落ちてくる物を掴もうと手を伸ばした。


すると黒ずんだ視界は、彼が手を伸ばす先を照らし、キラキラ眩いほどに美しい世界へと変わる。



ーー・・反対に・・俺のいる場所はドロドロと黒ずみ溶けていった


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