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第三章

105 リーフと大樹の資質?

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( リーフ )


本日の鑑定は俺で最後、どうやら爵位の低い順に鑑定は行われてたようで、マリオンの次は俺ーーという順番であったらしい。



俺は直ぐにハーイ!と返事をし神官長の前へ進み出る。



俺の資質は恐らくは〈 魔術騎士 〉

その為さして結果に興味はなかったが、実はこの " 鑑定 " 自体にに興味があったのだ。
 


"  鑑定  "  は、聖職者系資質をもつ者が稀に発現するレアスキルで、相手の資質や習得したスキル、そしてそのスキルが一体どのような能力を持つスキルなのかをザッとみることができる特殊系魔法スキルだ。



しかしその全ての情報が開示されるわけではなく、相手との実力差が大きすぎたり、阻害系スキルを相手が持っているなど、様々な理由で読み取ることが出来ない場合も数多くあるらしい。



どんなもんかな~とドキドキしながら目の前の神官長を見つめていると、他の子達にやったのと同じ様に俺に向かって手をかざし、その体が薄っすらと白い光で包まれた。



人生初となる "  鑑定  "  を受けた感覚は、なんかほっこりするかな?くらい。



この光は鑑定スキルが発動した時には絶対に出てしまうものだそうで、こっそり使おうとしても周りに絶対にバレてしまうらしい。


プライベートは勝手にのぞいちゃダメだよ~って事なのかもしれないな・・


世の中って何だかんだで上手く成り立ってるもんだとしみじみ~と思っていると、

光はやがて収まり神官長はカッ!!!と物凄い勢いで目を開けた。


それにドキーンっ!と心臓が跳ねてドキドキしている中、神官長は興奮しながら大声で叫ぶ。




「 なんとっ!!リーフ様の資質は〈 魔術騎士 〉です!!


前衛と後衛両方こなせる上級戦闘系資質!!


おめでとうございます!! 」



そう告げられた瞬間、わっ!!と歓声が上がり、教会内に絶え間ない拍手が巻き起こる。



上級資質が鑑定されたのはここレガーノでは初めてだったらしく、神官長も後ろで控える神官見習いさん達もご満悦の様子だ。



俺は鑑定してくれた神官長にお礼を告げ、モルトとニールのところに戻ろうと視線を向けると、

2人はニマ~とまるでチェシャ猫のような顔でマリオンとそのとりまき達の方を見ていて、その視線を受けたマリオン達は目を釣り上げて悔しがっている様子が見えた。




なんだかんだで仲良しなんだよね~と思いながら歩きだそうとしたところ、神官長がムムッ!と唸り声をあげ、「 お待ち下さい! 」と俺を呼び止める。



必死の呼び止めにピタリと止まってもう一度神官長の方を向くと、目を糸のように細め俺をみる神官長の顔が視界一杯に広がった。



「 ・・・あの~?? 」



恐る恐るそう尋ねると、神官長はジロジロと俺を右から左から見下ろし首をかしげる。



「 実はリーフ様には、もう一つ・・何かあります。




・・・むっ!こ・・これはまさかっ・・・!


資質が・・もう一つっ!!?? 」




動揺する神官長の声に、周囲もザワッとどよめく。


資質が2つーーー今判明している歴史上それが判明した人物は片手で数える程しかいない。


それだけイレギュラーなケースだ。




「 えぇ?!俺、2つも資質があるんですか?! 」



「 はっ・・はい・・しかし・・ほとんどの文字がかすれてまして・・。


少々お待ち下さい! 」



神官長はもう一度、今度は先ほどより強い光を発し鬼気迫る雰囲気で俺を睨みつける。




そんなちょっと怖い神官長の視線を一挙に受けながら、俺は内心どういうことだと焦りながら考えをまとめていた。






ーーおかしい。



物語のリーフの資質は< 魔術騎士 >のみだったはず。

資質が2つなどなかったはずだ。



そもそも俺が〈 魔術騎士 〉の資質を持つことは、予め立てた仮説で予想はしていた。



資質が遺伝要素が高い事からして、魂がその力を発揮しやすい肉体を選ぶと考えれば理屈は通るからだ。



しかしーーー


資質が2つと言うことは、その魂以外の要素、元々まっさらな状態のはずの魂についた不純物・・つまり・・




前世の〈 森田 大樹 〉の人生で会得した魂の一部分がそれなのではないか??



俺の "   前世の産物  "    "   お土産的な物  "  

そう考えるのが今のところは一番妥当なんじゃないかな~と思われる。


 

ーーってことは、もしかして俺・・

凄いんじゃない?!



いやっほーい!!と心の中で叫びながら飛び上がる。



これは通行人の役から主役級に確実にのし上がっちゃった感じ?



【 アルバート英雄記 】

その最強のボスともいえる悪役〈 リーフ 〉



いわば第二の主人公とも言える彼は、

スーパー容姿端麗!

スーパー頭脳明晰!

高い爵位に家族からは惜しみない愛を注がれ~

沢山の美しい女性や男性を虜にしてきたまさに圧倒的なカリスマチートボーイ!



そして俺、

容姿普通!

頭脳ガリ勉!

現在高い爵位は持てども多分成人後は廃爵、家族と絶縁の~


全然モテない圧倒的凡人ノーチートボーイ!!




これは多分、運命の「 強制力 」と「 補正力 」がめちゃくちゃ良い感じで働いてくれたに違いない。



そうだ!それに間違いない!!



俺の中の焦りは遥か彼方まで飛んでいき、代わりにワクワクとした気持ちが湧き上がる。



もしかしたら、< 勇者 >とか?

< 賢者 >とか・・

< 魔王 >とかかもしれないよ? 


そんな選ばれし者よーー的な凄いやつだったらどうしよう!



か、か、かっこいい~!


うひょひょ~い!と喜びながら、頭の中には昔一世を風靡したゲームのドットキャラがピコピコ剣を振ったり魔法を使ったりする映像が頭の中を駆け巡る。

 

そして周りの生徒たちは、まさかの上級資質に加え、2つ目の資質?とザワザワとどよめきたっている。



なかなか終わらぬ鑑定に少し頭が冷えてきた俺は、まぁ前世の俺の資質ならば実際は〈 子守人 〉とか、〈 おもちゃ遣い 〉とかそのへんが妥当なところだろう。


しかし、何にせよ頑張って生きてきた〈 大樹 〉の人生がこんな形で実感できるとは思わなかったため、嬉しく感じていた。



昔の思い出に浸りながらニコニコと上機嫌で待っていると、やっと鑑定が終わったらしく神官長の体から白い光がフッと消える。



いよいよか?!と神官長の顔を見たが、何故かオドオドとした態度で困惑した表情を浮かべていた。



「 ・・あの・・? 」



俺が控えめに声をかけると神官長はビクビクンッ!!!と大振りに肩を震わせた。



「 はっはいっ!!す、すみません!!

ちょっ、ちょっとぼーっとしてたものでっ!!

歳のせいでしょうかね?


あ・・あははは~・・」



なんだか物凄く白々しいというか・・変な態度をとる神官長にはてなマークを頭の上に飛ばしていると、

神官長はウオッホン!と一度咳き込み笑顔で話しだした。



「 リーフ様の2つ目の資質は、今までに発見されていない未知の資質でありました。


かすれて見えない文字も多いのですが、それだけは間違いございません。 」



それに周りは悲鳴に近い歓声を上げた。



未知の資質、つまり今の所持っているのは俺だけというユニーク資質。

つまり分類的には、< 英雄 >同様、特級資質に分類されるのでは・・?!



本当にそうであったら上級資質に加え、更に特級資質持ちなどアルバード王国始まって以来初めての事だ。



これは本当に< 勇者 >とか< 魔王 >とかかもしれないぞ!




 「 もしかしてそれって特級資質って事ですか?!

なんて名前の資質なんですか? 」



ワクワクしながら尋ねたが、神官長は笑顔のままスッと目線をそらす。




そして「 えー・・そもそも資質とは才能の・・ 」

「 別にそれがその者の特徴では・・ 」


などなどわけのわからない事をブツブツ呟いているので、俺は、んんん~??と言いながら、逸らされる視線を追いかけ神官長の顔の前に自身の顔をスイ~スイ~と持っていく。

 
それを何度か繰り返すと神官長は観念したのか、俺に視線を合わせ生温い笑顔を見せた。



俺の興奮も周りの人達の興奮も頂点に達しており、ドッキンドッキンと胸を弾ませながら前のめりで神官長の言葉を待つ。



そんな視線を一気に受けながら、神官長はやがて意を決した様に口を開いた。




「 リーフ様の2つ目の資質は・・




< おじさん >でした・・。




えぇっと・・おめでとうございます・・?? 」





そう告げられた瞬間ーー上がっていた歓声はピタリと止まり、場は痛いほどの静寂に包まれた。


 
そしてその後の神官長からの最後の挨拶の後、解散が告げられるまで誰一人として口を開こうとするものはいなかった。



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