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第三章

103 資質鑑定 

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( リーフ )



『 資質鑑定 』


それは12歳を迎える直前の子供たちにとって、人生を左右する一大イベント。



資質鑑定はイシュル神の日、つまり1月1日の約半月程前に教会にて行われる。



強制では無い為、ちらほらと受けない子達もいるが毎年ほぼ9割以上の子達は受けているらしい。


単純に知りたいからという理由で受ける子達が恐らくは最多。


あとは働く場所によってはーー

 ” 指定する系統の資質持ちしか雇用しないよ ” ってところも結構あるので受けざるを得ない子達もいて、その代表といえば戦闘を主とする職場などが多く挙げられる。


そういった類の職場では、戦闘スキルを取得できない資質の者は基本雇ってはくれない。


それ以外の人の命に関わらない職業は戦闘職よりかなり緩いし、資質よりも実際の実力が高い方を雇うが、同じ程度の実力ならば適した資質持ちの方をとる。



これだけ聞くと、じゃあ資質は絶対知っておいた方がイイね!

ーーとなるのだが実はそうでもなくて、知った事で人生がめちゃくちゃになってしまった子も多くいるそうだ。



例えば、商人になりたくて座学を頑張ってきた子がいたとする。


そしてその努力が見事に実り、商人としての規定知力を満たした後は "   さぁ、どのお店で雇ってもらおうかな~  "   と考えていた矢先、資質鑑定で分かったのは戦闘系資質。



モンスター蔓延るこの世界で戦闘職は花形職。



その為、戦闘職につくべきだと周りからはガーガー言われ、商家によっては戦闘系の資質は暴力事件を起こすのでは?と警戒され不採用ーー


・・などなど、そんな問題が起こる場合もあるらしい。



結局資質があったところで努力なしではその才能は役に立たないのに、その辺はイメージがついてまわってしまうという事なんだろう。



資質に関係なく暮らしている人も多くいるが、やはりこのイメージによって暮らしにくさを感じる場面は多いらしく、

やはりやりたい事と才能が違うのは本人からしたらとても大変なのだろうなとしみじみ思ってしまう。



そんな人生を左右する節目、資質鑑定!



本日、俺、リーフ・フォン・メルンブルクはそれを受ける為、毎度おなじみモルトとニールと共に資質鑑定をしてくれる教会へとやって来た。



始まる時間より少し早目に着いたのだが、既に他の貴族のクラスメイト達は全員集まっており、各自教会内の椅子に座ったり、談笑したりしている。



ちなみにこの場にレオンはいない。



資質鑑定は2日に分けて行われるわけだが、その内訳は、


「 貴族 」と「 平民 」


何故かと問われると平民との合同鑑定に貴族側が猛抗議をしたためである。



そのため教会側は、この2グループに分けてそれぞれ別日に鑑定を行わざるを得なくなってしまい、本日がその「 貴族 」のみの鑑定日というわけなのだ。



そのため平民であるレオンは別日での鑑定になっているのだが、いつも俺の後ろをカルガモが如くについてまわる彼は、一人でその鑑定を受けに行く気は1mmもないらしく無言の抗議を続けている。



そして同様の理由で本日の鑑定もごねにごねたが、なんとか説得して教会のすぐ外に待機して貰うことに成功したのだ。


しかし窓からチラチラと黒い影が顔を覗かせているのを見ると納得はしていない様子だ。



本当は俺だってこんな仲間外れみたいな真似はしたくないが、こればかりは仕方がない。



本日は諦めてもらい、平民さんの日に俺が着いていけば・・と言いたいところだが、恐らくレオンは鑑定を受けることが出来ないだろうと思っている。



一般人ならまだしも聖職者にとってレオンの存在はイシュル教の禁忌そのものーー教会に入るのだってもしかしたら拒否されるレベルかもしれない。




レオンが鑑定を望んだところでそれを受けてくれる教会があるかどうか・・正直難しいところである。



幸いにもレオン本人に受ける意志がないとのことで、実はほっと一安心しているところだ。


そもそもここでレオンの資質< 英雄 >が判明することで、運命を大きく変えてしまう恐れもあるし受けないが多分ベスト。



たがーーー





俺はチラッチラッとモグラ叩きの様に窓の端から飛び出してくる黒い影を見ながら頭を抱えた。



資質を知りたい!と言い出さない事はラッキー

しかしこれは心がねじ曲がった影響だと思うのだが、レオンは基本自身に対しての欲求が薄いというか・・いまいちピンッと来てない様子を至る場面で見せてくるため不安が募る。



例えばレオンに、

「 何かしたいことはあるかな~? 」と聞けば


「 リーフ様のしたいことがしたいです。 」



赤い花と青い花を指さして

「 どっちの花が好きかな~? 」と聞けば、


「 リーフ様にはどちらもお似合いです。 」



「 好きな食べ物は何かな~?」と聞けば


「 リーフ様の食べた物は何でも好きです。 」

と全く自主性がない答えが必ず返ってくる。



今回も「 資質鑑定うけたいかな~? 」と問えば、

きっと「 リーフ様が望むなら 」という答えが返ってくるだろう。



こんな洗脳に近い状態が長く続いて大丈夫なのだろうかと結構心配しているのだが、当の本人はどこ吹く風。


これから少しづつ心の修復を謀って行かなければと、数多くのし掛かるレオンの問題点に頭を抱えたその時ーー


ゴローンゴローンと教会内に鐘の音が鳴り響いた。



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