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第二章

97 ニールの戸惑い

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( ニール )




リーフ様は変わっている。


高位貴族は皆こうゆうものなのだろうか・・?



とにかく気がつけば彼のペースに乗せられ、泥まみれで地面に転がされている日々を思い出し、う~ん・・と頭を悩ました。




入学院式の日。

ざわざわする周囲に何事かと思えば、中心には ” 名無しの化け物 ” におぶさるリーフ様の姿が・・・


しかもなぜか ” 名無しの化け物 ” は顔も左半身も何一つ隠さずむき出しであった。


その恐ろしい姿に生徒達の中には震えて腰が抜けてしまった者も多くいて、結局教員達総出で生徒たちの介包を行い入学院式の時間は大幅に遅れることとなってしまう。


しかし、このパニックを引き起こしたのは、公爵家の子息ともなれば誰一人口出し出来るものはおらず全員がその口を閉じるしかない。



恐らくこうしたパニックを引き起こす目的であの ” 名無しの化け物 ” の外見を隠さす連れてきたのだろう。



その光景を見た誰もがそう思った。



横にいるモルトもそう思ったのか、いつもの澄まし顔を引っ込め、額に手を当てしんどそうな顔を見せていた。


気持ちは痛いくらいに分かる。

これがこれから俺達が仕えなければならないお人なのだから。


教会に向かうときはいい人そうに見えたのに、結局一度話したくらいでは人間性など計り知れなかったかと反省し、俺は覚悟を決めたーーー




ーーーのだが、予想に反し学院生活は別の意味でドキドキさせられるものとなる。





リーフ様は最初の日、


" 俺の恐怖の占領下の元、生活してもらう "


" 俺は怖いよ~? "


" 何てったって公爵様! "


" 意地悪できる気力もないくらいしばき倒す "


等など脅迫ともとれる発言を堂々と宣言したのだが、リーフ様の外見のせいだろうか・・イマイチ怖さを感じない。



しかも " 名無しの化け物 " が一ヶ月前に比べてふっくらしているし、服もかなり上等なものに変わっていることに気づき、

これでは平民や一般的な男爵家よりもよっぽど良い待遇では?と恐怖が更に薄らいでしまう。



おもちゃ・・にしては破格の待遇すぎる。


モルトも同時に同じ事を思ったらしく首を傾げていた。




そんなよくわからない中始まった学院生活だったが、結局、恐怖とは?と問いたくなるような平和で楽しい、でもとにかく忙しい・・というか、何かしらに巻き込まれる騒がしい毎日を送ることになる。



別にリーフ様がこちらを強引に誘ってくるわけではないのに、気がつけば俺とモルトは勿論のこと学院内の全員がその引き起こされる事態に飲み込まれてしまうのだ。




例えばある薬草学の授業の時。


その日は危険薬草についての講義であり、ここらへん一帯で特に危険視されている " ビリビリ草 " についての説明が慎重に行われていた。


それに少しでも触れれば、一般の人間なら一日は全く動けないほどの電流が流れる為教員も真剣そのもの。


それにつられ俺達もかなり真面目に授業に臨んでたわけだが、リーフ様だけは、


” ホントかな~? ”


” ホントに痺れるのかな~? ” 


と、訝しげにジロジロとビリビリ草を睨みつけ、最後に 


” ちょっと触ってみ~よおっと! ” 


ーーと言って、止める暇もなくそれをむぎゅっと握り潰した。




その瞬間ーー



” ほばあぁぁぁーー!!?! ” 


そんな変な叫び声をあげて椅子から崩れ落ち、すかさず化け物のレオンがその体をキャッチ。

転倒することは防げたが、当の本人はレオンの腕の中、ピクピクと痙攣しながら・・


" な、なんか正座のあとに痺れるやつだー・・・

あああ~ってなるやつだった~


・・・触らなきゃよかった。 " 



・・と、真面目な顔で感想を言う。



そしてその後も、あ~・・とか、う~・・とか唸り続けるリーフ様に、俺も他の同級生達も教員でさえも吹き出しそうになったが、相手は公爵ーー・・


絶対に笑う訳にはいかない!と必死に笑いを堪えなければならなかった。



こんな事が毎日で、リーフ様はマイペースで好奇心も強いが、別に周りに無理強いすることはなく勝手に何かしらのアクションを起こし一人で勝手に楽しむ。


それでいて、周りに被害を及ぼす様な自分勝手に行動する個人主義というわけでもなく常にこちらに寄り添い隣にいるのだがーー



気がつけば遠い場所にいるーー



自分でも何を言っているのかと思うのだが説明が凄く難しい人だと思う。



実力は高いがドジも踏む。

大胆で突拍子もないことをしでかすが、穏やかで大人の余裕の様なものも感じるし、

とにかく捉えどころごない彼のあだ名は、


 " 変わり者のリーフ様 " となった。




そしてその名はあっという間に定着してしまい、今ではこれがリーフ様の名前の一部かと言うほど街の人間は皆知ってるあだ名となった。


学院が始まって半年もする頃には、あんなに泣いて謝ってきた母はニコニコと嬉しそうに笑いながら

「リーフ様にもあげてちょうだいね~」などと言って搾りたての牛乳をタンクごと渡してくる始末。


"   変わり者のリーフ様  "  と共に、毎日珍事件に出くわしては泥だらけで倒れこむような毎日は全てが新鮮でとても楽しい。


そのため最初に考えていた気鬱は全て消え失せたがーー


そこで新たな気鬱分子の存在がくっきりと浮き彫りとなってきた。




リーフ様の傍から決して離れない "  呪いの化け物  "




ーーーーーー下僕のレオンだ





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