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第二章

91 大人達の想い

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( ドノバン )



「 へいへ~い、そうゆう事にしといてやるよ。


相変わらず岩盤イモリ並みの硬ぇ頭だな。


良いじゃねぇか。

リーフは楽しそう、レオンは快適な生活ができる。

カルパスは優秀な護衛ゲットでぇ~俺は面白い弟子ができてワクワク。


ほ~ら、誰も損してねぇ~んだから。 」




〈 岩盤イモリ 〉


体長10センチほどのイモリ型Gランクモンスター。

とても温厚で大人しく、人が通ると石ころに擬態してやり過ごす。

ただかなりの硬さを持つため討伐するにはかなりの実力が必要。




俺がヘラヘラ笑いながらそう言うと、カルパスはギロリと恐ろしい目で俺を睨む。


昔からこの目で睨まれ説教されてきた身のため、今だに苦手意識は消えない。




「 相変わらず綿毛てんとうの様な軽い頭だな。

これだから騎士という生き物は・・」




〈 綿毛てんとう 〉


体長10センチ程の虫型Gランクモンスター。

フワフワとした綿毛の様な体で風に乗って人生を過ごす。

あらゆる攻撃を吸収する為、討伐にはかなりの攻撃力が必要。




くどくどと文句を言い出すカルパスの話をいつも通り右から左に流しながらこっそりとため息をついた。



こいつは説教くさいし、周りくどい、分かりにくい。

真面目過ぎて融通は効かないし正直ものすごく面倒な奴だが、心根は優しい奴だって事は知っている。



特にイザベルやリーフに対しての接し方を見てれば分かるが、こいつは子供を放って置く事が出来ない。



レオンのガリガリに痩せ細った体を見て、思う所がかなりあったのだろう。


流石の俺だってグサっとくるものがあった。



しかし、先天的な恐怖は消す事が出来ずに随分と参っていると、そんなところだろう。



感情はとても複雑で、人生の中手にしてきた価値観はその身に染み付き分離することは難しい。


カルパスは今まさに恐怖と正義感、罪悪感の中戦っている。



そんなもの自分に都合の良いように言い訳して割り切ってしまえば良いのに、こいつはそれが出来ない。


大多数の奴らがそんな風に逃げるというのに、相変わらず難儀な男だと心の中で呆れてしまったが、俺もこうして知ってしまえば手を差し伸ばさずにはいられない。



実の親に殺される予定の捨て去られた子供。


そして、禁忌の色と呪われた半身を持って生まれてきただけの哀れな子供。



それを知って見捨てることなどカルパス同様、俺も出来ない。

だから俺は俺の正義を持ってそれを全力で助けるつもりだ。




しかしーーー俺の中にも抗えぬ恐怖は存在している。



呪いによって引き起こされる惨劇を俺は忘れることができない。

強力な力、魔力があろうとも自身の内側から壊され成すすべもなく殺されていった仲間たち。



それは俺の中に大きな恐怖として根付き、どうしても警戒を解くことが出来ないのだ。


そしてレオンの独特の雰囲気・・長年染み付いた騎士としての警戒も同様に解くことができない。


俺もリーフの様に自然体で接するには、自身の経験や価値観がどうしても邪魔をする。




「 はぁ・・、大人になるっつーのは嫌なもんだよなぁ~

頭がガチガチになっちまって仕方ねぇ。


まぁ、悩んだって変わんねぇなら進むだけだ。


俺たちは俺たちに出来る範囲の事をするしかねぇよ。

あいつらには俺の技術の全てを伝授してやる。


俺としても、未来ある若者がむざむざ潰されるのは胸糞わるいからな。 」



片手をプラプラさせながら「 任せろ任せろ~ 」といつも通り軽い調子で言った。



俺に出来ることといえばあいつらを強くしてやることだけ。

しかし強ささえあれば、将来どこへでも行けるし、生きていく事はできる。



その力を俺が与えるーーーーと言ってもレオンは既にそのくらいの力はありそうだが・・


そこでふとあることを思い出した俺はカルパスに聞いてみた。



「 あ~、そうそう、もう一つ気になったんだが・・あいつ。


なんかすごい目でリーフを見ているよな?



敬愛?好意??ーーう~ん・・どれもしっくり来ないな・・執着・・いや、ちがうか・・?


正直ごちゃごちゃしていて分からんが、俺だったらあんな眼で見られたらゾッとするがな。


リーフがあんまりにも普通にしてるから忘れていたぜ。 」




「 あぁ、私もそれには気づいたが・・まぁ、リーフ様を害するものでないならとりあえず良いだろう。

むしろ頼もしい限りだ。 」



「 えぇ~・・そうかぁ?俺はちょっとやべぇもんだと思うけどな、アレ。

だが確かに今はかまってられないしな、優先順位は低いか・・う~ん・・



ーーーまっ、いっか!


めんどくせぇ事は後回し後回し~、後で考えるか! 」



行き当たりばったりタイプの俺は、その事を頭の隅に追いやりカラっと笑う。



するといつものようにカルパスが小言を言おうと口を開こうとしたのを察知し、俺は大げさに驚いたジェスチャーを見せる。



「 おおっと!やべぇやべぇ!!

今日はこれから俺にしか出来ない超重要任務が入ってるんだった~。

それはそれは難し~い任務が!



ーーじゃあな!カルパス!お前はもうちょっと肩の力抜けよな~。


では、さらばっ!! 」



身体強化を瞬時に使い、俺はスタコラサッサとカルパスの元から逃げ出した。


そのため、残されたカルパスがついた大きなため息は、俺の耳に届くことはなかった。




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