天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

第二章

７９ 実技の重要性とレオンの新たな仕事

（　リーフ　）


これから歩まなければならぬ茨の道を想像しながら、先程からずっーーと俺の方を睨みつけてくるレオンの方をチラリと見る。



今の時点でレオンは剣を握ったことがない。



〈　特別免除学生　〉を取るために戦闘術は必須。

そのためこれから当然午後の実技も頑張ってもらうつもりだが、俺と共に打ち合いをすることで英雄のスキル〈　守護王　〉も効率よく取得出来るはずなので、ここはやる気を出してもらいたいところ！


ガタガタっ！！！


俺は椅子から勢いよく立ち上がり睨みつけてくるレオンを見下ろすと、ふっふっふ～と不敵に笑った。


「　レオン！午後からそれはそれは楽し～い実技の時間なんだが、君には新たなお仕事を与えてやろう！


ずばり！俺の　”　的　”　になるんだ！　」



レオンはゴクリと喉を鳴らした後、真剣な眼差しで頷いた。

俺はおどろおどろしさを演出するためレオンの眼前に両手を近づけワサワサワサ～と指をバラバラに動かした。



「　しかもただの　”　的　”　じゃあないよ～？

ピカイチの実力を持った最強の　”　的　”　だ！

すぐ当たっちゃうとつまらないからね。


俺は強い　”　的　”　しかいらないよ！　」



「　！！！　」



レオンはビビっている。

すっごい衝撃受けましたって顔してる！


切磋琢磨して頑張ろうね～的な事を言いたかったのだが、多分　”　的　”　という表現があまり良くなかったと思われる。



物語のリーフの様にコチラが撃つだけではレオンは痛いだけだわ、俺の実力もレオンの実力もつかないわで、何一つ利得がない。



そこで対等に打ち合える仲間、ライバル的な存在を目指したいが、それを言ってはせっかく演じている悪役がガラガラに崩れてしまうため取り敢えず　”　的　”　という言い方をしてみたのだが・・



険しい雰囲気を醸し出すレオンに、"　標的　”　にすればもう少しマイルドだったかもと後悔しながらも、午後の実技の授業場所へと向かった。




実技の授業は主に先程レオンを追い回した裏手の広場と、後はぐるりと街を囲うように存在している森で行われる予定だそうだ。


そもそもがこのレガーノという街、森に半分突入する形で建てられており裏の広場にある扉を開ければそこは森の中。

そしてそこから少し先に歩いたところに街を囲う簡単な防壁とモンスター避けの結界が施されている。



この森はかなり大きくモンスターも沢山生息しているが、よほど奥の方まで行かない限りは人の姿を見れば逃げ出すレベルのモンスターしか出現しない為、昼間なら子供だけで行っても問題はない。


俺とレオンの様な初心者にぴったりの訓練場と言えるだろう。



俺はキョロキョロと先程来たばかりの裏の広場を改めて見回し、ふむふむと満足そうに呟く。


これから此処で厳しい修行に明け暮れるわけだ。

きっとそれは辛く苦しく休む事など1分たりとも無く常に足を動かし続ける日々に違いない！と俺は覚悟を決めてキリリッと表情を引き締めた。




ーーーーレオンにおぶさりながら。




俺、足動いてな～い！



あぁ～・・とうめき声を上げながら自身の不甲斐なさに頭を抱える。



流石にハードな実技の授業前に "   馬   " をやらせるつもりは無かったので、授業場所へは普通に歩こうとしたのだが・・


あのギンギラギンの椅子から一歩踏み出た瞬間、まるでそよ風に乗った葉っぱの如く滑らかな動きでレオンが俺の前に背中を向けて跪いた。



驚き動きを止めた俺に、さぁ乗ってくださいと言わんばかりの顔を向けてくるレオン。


その圧と悪役としての使命感的なものに押され、わ～はっはっ！と調子に乗って高笑いした後、じゃあお邪魔しますね～とレオンにおぶさる俺。




ーーー多分ね～レオンは移動の際はコレをやらないと駄目なんだと思ったんだろうね。


別に毎回歩く度にやらせるつもりは無く、ちょっと、いける！と思った時だけの予定だったのにコレでは辞め時が全く分からない。


いつ辞めさせれば良いんだろう？


困ったな～と悩んでいる最中も、レオンは先程同様安定感抜群の足取りでスタスタと裏の広場へと向かい、あっさりと到着してしまった。



俺を背負ってきたレオンの様子をチラリと伺ったが、やはり先程同様結構な距離歩いたにも関わらずレオンは平然としたご様子。


汗一つ息一つ乱れてない。


やはり英雄ステータスか・・と頷きながら、まだ先生は来ていないようなのでレオンを連れて丁度良い木陰に二人並んで座った。