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第二章

69 俺の神様

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( レオン )


ひどく興奮してしまったせいか、眠気は一向に襲ってこず、そのまま今か今かとリーフ様との約束の時間を待つ。


しかし朝日が昇る前にとうとう我慢の限界を迎え、せめて少しでも近くでリーフ様を待とうと俺は家を飛び出した。



俺の家は北のリーフ様のお屋敷から反対方向、南の最外周に位置している。



リーフ様のお屋敷へ行くには街中を通らなければならず、最低でも一時間以上掛かる・・筈だったが、なんと5分も掛からずに直ぐに着いてしまった。



体が軽い。


それに疲れも寒さも暑さも感じず、あんなにも体を蝕んでいた飢餓感も今は微塵も感じない。

更に精神は静まり返り微動だにせず、今後外界の刺激に影響を受ける事はないだろう。

                

今まで感じたことのない不思議な感覚にも関わらずそれを不思議に感じないのはーー

           ・・・・・・
これが当たり前であると分かっているからだ。



あとはこの感覚に慣れる事、そして活かすための経験値を取得する事、たったそれだけで俺はこれからリーフ様の側にいられる。


感覚を研ぎ澄ませば規則正しいリーフ様の寝息が、彼を生かす心臓の鼓動が、全身へ広がる血液の流れる音が耳に入ってきて、

それが確認出来るだけで俺の静まり返った心の中には幸せという小さな変化が訪れる。



変化するはずのない世界を変える存在、それがリーフ様。


俺の神様だ。




朝日が昇り始める頃、リーフ様の意識が覚醒したのを感じた。


眼を開けて彼の意識がこの同じ世界に存在し始めた事に、心は形を変え今度はジワっとした幸せな気持ちが体を巡る。


幸せとはなんて気持ちがいい感覚なのだろうと、うっとりしながら、俺はそのまま心地よいその感覚に身を委ねリーフ様がここにくるまで大人しく待つ事にした。


それだけで十分幸せ。



まだ慣れない感覚の数々に手を開けたり開いたりしながらそれに馴染もうとしていると、フッと自身の呪われた様な左手に意識が移る。



昨日リーフ様が俺の外見は大したことはないものだと言っていたので、今日は顔や、左側の手足を隠す布は身につけていない。


たとえ世界中の人々が否と口を揃えて言ったとしても、リーフ様が良しとするならそれが世界の真理であり俺の絶対的な真実だ。


昨日の事を思い出しながら初めて満足気に自身の左手を見下ろしていると、俺がいる正門の方へ一人の女が近づいてきて俺の姿を見つけた途端、ギャーギャーとうるさくわめき始めた。


そして剣を抜きじりじりと距離をとって睨みつけてきたが、俺には関係のない事。

構わず引き続きリーフ様の動向を確認しているとーー




ーーー来た。


リーフ様だ



彼の存在がこちらに向かって走ってくる気配を感じ、胸はドキドキして落ち着かなくなり、視線は彼が姿を現すであろう方向に固定したまま動かすことができなくなってしまった。


少しづつ近づいてくるリーフ様

とうとう視覚で確認できるほどの距離まで迫って来た時、それだけで俺の体はビリビリと痺れてしまい、新たに与えられた感覚にクラクラした。


やがてその輝く様な姿が目の前まで来ると、居ても立っても居られなくて俺は直ぐに彼に駆け寄り目の前で跪く。


「 おはようございます。リーフ様。

あなたの下僕のレオンがご命令どおりに参りました。」



昨日別れてからずっと会いたくて会いたくてたまらなかったリーフ様が今俺の目の前にいる。


それだけで嬉しくて堪らない。


俺は一瞬でもその尊い姿を見逃すまいと自身の視覚をフル活動しリーフ様を見つめた。


すると彼はそんな俺を見つめ、

"   俺と遊ぼう "  

"  ついてこい  "  

ーーと言ってくる。



その時のリーフ様の目は、昨日同様 "   普通     "  でーー

俺はそれも堪らなく嬉しい。



喜んで着いて行こうとしたのだが、うるさい女がそれを制止してきたため一旦リーフ様の動きが止まってしまう。




"  邪魔だな "


明確な不快感を感じ、チッと舌打ちをした。


彼との時間を  "  他 "  に邪魔されたくない。

その一心で排除するか?と考えたが、直ぐにリーフ様は女を叱咤し、"  おいで  "   と手招きしてくれたので、その女の存在は俺の頭の中からフッと煙のように消え去ってしまった。



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